年間100本以上の映画やドラマを鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
地球外生命体のシンビオートがフリージャーナリスト エディ・ブロックに寄生、ヴェノムとなる。ヴィランのはずのヴェノムがヒロイックな行動を見せる本作は、ヴェノム誕生の2018年のトム・ハーディー主演作の続編であり、マーベル系が力を入れ始めているマルチバースコンセプトの一環となる作品だ。

ヴィランのヒーロー的側面を描いた作品

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マーベル系の作品は、現在ではディズニーとソニー・ピクチャーズが完全に抑えているが、ディズニー系列によるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の世界観にソニー側も協力し、参加するようになっており、二つの異なるレーベルの作品ながら、マーベルはマーベルという感覚を観客は味わえる。Netflixに配給されていたマーベル作品→例えば「デアデビル」 などもディズニー系列に統合され始めており、ディズニー+の「ホークアイ」では「デアデビル」の宿敵とされたキングピンがNetflix作品と同じ役者で登場した。そして、実は「デアデビル」の中の人である盲目の弁護士マードックもまた、その名のまま当人が「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」にカメオ出演しており、「デアデビル」ファンの僕にとってはかなり嬉しかった。

ちなみにヴェノムはマーベル作品中 スパイダーマンの最大の宿敵として登場したヴィラン(悪役)なのだが、最近では 複数のヒーローを同一軸の世界観で描くMCU型コンセプトに加え、女性ヒーローのアクション映画(「ワンダーウーマン」「チャーリーズ・エンジェル」など)、さらにヴィランをダークヒーローとして主人公に据える手法が流行している。ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』もそうだし、ハーレイ・クインを世に出すことになった『スーサイド・スクワッド』、『ブラックアダム』『モービウス』などがそうだ。そしてもちろん本ヴェノムシリーズもその代表例であるといえるだろう。

複数の異なるキャラクターの映画をクロスオーバーさせ、それら全ての作品を同一の世界観として扱う手法。代表例としてはマーベルとディズニーが大成功させたアベンジャーズシリーズ(マーベル・シネマティック・ユニバース)があるが、ワーナー・ブラザースxレジェンダリー・エンターテインメント(東宝と提携)が取り組んでいるのが、日本の怪獣映画をリバイバルしていく「モンスター・バース」。

MCU路線への参画も??

さて、本作『ヴェノム レット・ゼアビー・カーネージ』では、エディとヴェノムの騒々しい共同生活と、エディの血を偶然口にしたことでシンビオートに寄生され殺人怪物カーネージとなった男との 激しい闘いが描かれている。エディの元を一度は去るヴェノムの様子は、まるで痴話喧嘩の挙句に同棲を解消するカップルの片割れのようだし、元サヤに戻る様子もまさにそれだ。カーネージにも身も心も捧げる相手(喉に怪異な力を有する女)が存在し、ある意味 犬も食わない?恋愛映画、それもコメディ色の強い様相を持つ作りになっている。

スーパーヴィランをヒーローとして扱うコンセプトは前述のようにハリウッドの一大トレンドになっており、ヴェノムはその代表のようになっているが、人を殺すだけでなく食糧とするモンスターを主役に据えると、どうしても おどけた作りにせざるを得ないのだろうが、初作と比べるとそうしたコメディタッチが強くなり過ぎている気もしないでもない。

ヴェノムの所属するアメコミレーベルであるマーベルでは、アベンジャーズの正当性を証明するためか、全作品の関連付けを試みているようで、その論拠にマルチバース構想を置き始めている。ヴェノムに第三作が用意されるかどうかは知らないが、やるとすればスパイダーマンらとのセッションが始まる可能性が高くなっているようだ。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。