こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。現在国立科学博物館にて開催中の「恐竜博2023」では、トゲトゲ以外にも軟組織が綺麗に残っている『スキピオニクス』という化石が見られるのですが、それがとんでもなくやばいんです! 紹介します。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

展示はレプリカから本物へ

恐竜博2023のメイン「ズール」などの鎧竜のトゲトゲも素晴らしすぎるのですが、イベントでは他にもまだまだとんでもない化石があるんです。

そのうちの1つ「スキピオニクス」。イタリア カンパニア州の元祖ミイラ化石の恐竜です。

恐竜博2023が開催された3月14日〜、生田晴香は2度イベントに行ったわけですが実はまだスキピオニクスの実物化石が見れていないんです。展示はされてましたが…皆さんは見ましたか?

あるのに見れてないとはどういうことかと言いますと、スキピオニクス自体の展示はされているのですが最初にあったのはレプリカで、実物化石にすり替わっているのが3月24日からなんです。

ルパンや怪盗キッド様が本物から偽物へこっそり入れ替えた── というわけではなくむしろ逆で、レプリカから本物へレベルアップしているんです。

レプリカも本物かのようにそのまんまで素晴らしいのですが、わざわざイタリアから初公開の本物がきているのですから生で見ておかないとせっかくのチャンスがもったいないですよね。

実はなぜスキピオニクスの実物が最初から展示されなかったのかといいますと監修の真鍋先生曰く、英語ならスムーズにいったと思うが、イタリア語での交渉がなかなかスムーズに進まなかったそう。何とか交渉に成功してオープン日には間に合わなかったけど、ぜひとも皆さんに見てもらいたいという想いから、3月24日には間に合わせてくれたそうです。

おかげさまで次に行くときには見れるんです。楽しみですね! ちなみに巡回展で次の大阪でも展示されますが、そちらは実物化石はなくレプリカに戻るそうなので皆さんは国立科学博物館で開催中のうちに必ず行きましょう。

では一体スキピオニクスの何がそんなにすごいのか?!

スキピオニクスとは

レプリカ

スキピオニクス・サムニティクス(Scipionyx samniticus)

学名の意味ですが、「スキピオ」は地質学者 Scipione と古代ローマの名将 Scipio にちなんでいて、「ニクス」はカギツメです。イタリアで最初に命名された記念すべき恐竜です。

分類は竜盤類 獣脚類 テヌタラ コエルロサウルス類 コンプソグナトゥス科で、白亜紀前期イタリアに生息していた肉食恐竜。

1981年、イタリアの化石コレクター ジョバンニ・トデスコ氏がイタリア北部ベネヴェント州ナポリの北方に分布するピエトラローヤ石炭岩層にて発見しました。

見ての通り全身ぺしゃんこのまるまる骨があるどころか体の中身まで残っているとんでもない標本です。

海岸近くで死んだ死骸が荒らされることなく静かに埋没し、なんらかの理由でリンの含有量が高かったため軟組織まで残りました。

大発見だー! すぐに博物館へ…というわけではなく、発見して1993年まではそのまま自宅で保管し専門家の目には触れずにいましたが、重要な化石標本だということが判明し、イタリアの法律により公的機関での保管が義務付けられました。

1994年にはミラノ自然史博物館が研究することになりネイチャー誌で学名が発表されました。

論文

https://www.researchgate.net/publication/40662636_Exceptional_soft-tissue_preservation_in_a_theropod_dinosaur_from_Italy

スキピオニクスは今回のこのホロタイプ標本1体しか発見されていません。

そしてなんと、この子はまだ歯の生え変わりが始まっていないと考えられる赤ちゃんです。孵化してから3週間未満の幼体で、全長約50cm、体重は約200gの子だと推定されています。

体の中身

気管・肝臓・胃・腸・血管などの軟組織まで残っています。十二指腸の内壁のひだ構造まで綺麗に残っているのは肉眼だと見るのが難しいので画像が載っている図録を購入することをオススメします。

胃にはトカゲ類の骨、食道には魚類の骨、腸の数箇所からはトカゲ類のウロコや魚類の骨などが確認されています。ペリットといって、消化できなかった骨などは吐き戻しをしていた可能性がありますがまだわかっていません。

直腸の隣にうん⚪︎の塊まで残っていて、生きてたら近々排出されるうん⚪︎だろうなと思うとにやにやが止まりませんね、はい。

それに、普通では化石に残らない角質の爪までもあるのはまさに奇跡。

恐竜博2023ではスキピオニクスだけではなく他にもやばすぎる恐竜盛りだくさん! 永遠に楽しめるので最高です。また何度か行くと思うので、会場で見かけたらお気軽にお声がけください。

『恐竜博2023』開催概要
会期 2023年3月14(火)~6月18日(日)
会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
開館時間 9:00~17:00(入場は16:30まで)
※毎週土曜日と、4月30(日)~5月7(日)は19:00まで延長(入場は18:30まで)
※常設展示は17:00閉館(入場は16:30まで)
休館日 月曜日
※ただし、3月27日(月)・4月3日(月)・5月1日(月)・6月12日(月)は開館チケット詳細・購入
https://dino2023.exhibit.jp/ticket/#tickt01Link
公式サイト
https://dino2023.exhibit.jp

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

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