バイク乗りの憧れ、仮面ライダーを名匠 庵野秀明監督が再定義した、生誕50周年企画作品『シン・仮面ライダー』が、Amazonプライムで独占配信開始!

首を傾げざるを得ない点

まず一番気に入らないのが、仮面ライダー最大の武器である、ライダーキックの描き方だ。
蹴りを喰らわせて相手が吹っ飛ぶのなら分かるが、庵野監督は蹴りを喰らわせたまま、敵を壁や地面に押さえ続けるような演出をしている。
そしてそれはコウモリ男の蹴りを受けて吹っ飛んだ緑川ルリ子をライダーが受け止めて助けるシーンでも、オーグの攻撃を受けた人間(ルリ子)がほとんど効いていない。庵野監督は喧嘩したことや格闘技の経験がないのかな?と思わせられる不思議な点だ。(本作はR15指定になっているのだが、その要因になった、ライダーショッカー戦闘員を殴り殺すシーンでも同じような演出が多かった)

仮面ライダーを凌ぐ力を持つラスボス、チョウオーグ=緑川イチローの戦闘態(仮面ライダー0号と自称)が、舞踊家の動きを格闘に取り入れようと努力はするが、それも全く生かされておらず、むしろ逆効果に思えたのだ。(逆に言えば子供になら伝わるのかもしれない)
ヒーロー映画で格闘シーンが一番ひどいとされてしまうことはやはり大きな問題となるだろう。

また、長澤まさみ演じるサソリ女を(その毒を得るために?)武装チームによる駆除を立花たち(謎の秘密機関)がライダーの力を借りずに行うのも、そもそも秘密組織であるショッカーの幹部であるオーグたちのアジトの所在を立花たちが常に把握していることや、そのアジトに易々とライダーたちが侵入できる様子もおかしな点だが、やはりオーグたるものの攻撃の強力さや無慈悲さの描き方が中途半端なことは、やはり残念極まりないとしかいいようがない。

総合点 : 映画館で観るよりTV画面で観た方が良いと思う→そうすれば何度でも観られる作品!

本作はわずか3ヶ月ほどで映画館での上映が中止されたらしいから、興行的にはあまり成功とは言えなかったのかもしれない。ただ最近の映画作品は、映画館での上映だけでなく、グッズの販売や映像のストリーミング配信など、ビジネスモデルが多彩だから、トータルの売上はわからない。

だから僕もトータルとして結論づけよう。
本作は、少なくともバイク乗りならば絶対的に観るべきだが、大人にオススメしたい作品だ。
少なくとも僕はあと2回は見るだろうし、繰り返しみたい部分は多々ある。

現代の、仮面ライダーというある意味安直ではあるが、絶対バイクとヘルメットが不可欠な存在の意味もわからず、イケメン俳優が主人公だからと思ってなんの疑問も感じない人々はおいて、本作は 暴力と恐怖と不安に満ちた初代ライダーのムードを歓迎しながらも30分尺のヒーロー番組のいい加減さの再来に怯える 大人には、冒頭のような安心感を与えてくれるのだ。

戦闘シーンはそのCGをふくめてかなりチャチだが、テレビ画面で観ることでなんとか我慢できれば、全体としてはまあまあ上手く作ってある。(昔の映画や漫画でも、昔だからと思って楽しむことはできるはずだ)

あとは、庵野監督が観ている人に伝えたかったであろうメッセージを素直に受け取ればいい。
緑川ルリ子は最初こそ独りでショッカーに打撃を与えようとするが、少しずつ本郷猛をあてにしだすし、その本郷=仮面ライダーも、一文字隼人=2号ライダーへの信頼を覚えはじめる。

そしてその本郷や、ルリ子への仲間意識を抱きはじめる一文字隼人は、2人への想いを胸に仮面ライダー2号として、例え独りでもショッカーと戦い続ける意志を持つようになる。
つまり庵野監督は 他者を思いやり、守るには強い力と、それを正しく使うための自分や 仲間への信頼が必要だというメッセージを本作に込めたと思うのだ。

少なくとも、たとえ敗れても、たとえ1人になってもあきらめずに闘い続ける意志や、同志への信頼を抱きつつもそれを守ろうと考えること、もしくは、敵であってもただ殺したり蹂躙したりすればいいわけではないという意識を持つという、とても難しい選択肢を持つ必要を説いているのだと思う。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。