カルティエ　コレクション・プリヴェ トーチュ LM「機械仕掛けのジュエリー」【今週の逸本 Vol.22】

“宝飾ブランドの時計”と思うなかれ。

時計に造詣が深くなればなるほど、「宝飾ブランドの時計なんて…」となりがち。それは、デザインや宝飾などによる見た目の「美」を優先したものが多く、腕時計としての「機能美」を感じづらいからであろう。

そんななか、腕時計の機構に対しても本気で、かつ時計ファンからも一目置かれる宝飾ブランドがある。それがトップジュエラーとして君臨するカルティエだ。実は※世界で初めて腕時計を生み出した、ということも一目置かれる要因の一つであるかもしれない。
※諸説あります。

ただし、カルティエの時計すべてが時計ファンに刺さった……というわけではない。やはりジュエラーとしてのブランディングや気質もあり、その多くはハイセンスでエレガンスなモデル。いくら時計に本気とはいえ男性の多い時計ファン（とくに機械式時計ファン）にはなかなかハマらなかった。

そんな中、これはどうだと言わんばかりに1998年に発表した「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ」シリーズで状況は一変する。

クォーツではなく機械式、信頼のおける上質なムーブメントの採用、それを楽しむことのできるシースルーバックなど、時計ファン、とくに男性を意識したデザインにより時計専門ブランドと並ぶほどの人気を獲得したのだ。

コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ

今回はそんなコレクション・プリヴェからトーチュ LMをセレクト。さっそく余談で恐縮だが、LMというのはサイズ表記のことで、カルティエは時計のサイズをSM・MM・LM・XLと4つに分けて展開している。SMは女性用・MMは万人向け、LMが男性用、XLが大ぶりな男性用といったところだ。

デザインはシンプルで同ブランドの名作を踏襲

話を時計に戻そう。
今回の時計を改めて見てみると、そのシンプルさに驚くだろう。「宝飾ブランドの時計」としてはやはりダイヤルに宝石を散りばめたラグジュアリーなものを想像してしまうもの。

コレクション・プリヴェは、同ブランドのサントスやタンクを彷彿とさせる流行に流されない普遍的なデザインを踏襲。そのため、いつ見ても色あせない魅力がある。

ダイヤルには特別の証

今回紹介しているトーチュLMのムーブメントはPIAGE（ピアジェ）の437C。非常に精度の高いことで知られる高級ムーブメントだ。その他のモデルもムーブメントにはこだわっており、そのおかげかコレクション・プリヴェシリーズの価格は、カルティエの時計のなかでもグッとお値段があがる傾向にある。

また、そのプレミアム性を高める要因となっているのは、ダイヤルに刻印されたPARISの文字。他モデルは「CARTIER」のみだが、コレクション・プリヴェのみ「CARTIER PARIS」と表記される。

シリーズは1998年から2008年まで製造され、多数のモデルを展開。現在でも根強いファンが多く、コレクション・プリヴェのみを収集するコレクターも存在するほど。もし市場で見かけることがあれば、早めに手に入れたほうがいいだろう。

MOON PHASE 〜STAFF VOICE〜

コレクション プリヴェシリーズのなかでも、今回ご紹介しているトーチュ LMは2針で非常にシンプル。ケースはプラチナ、バックルは18金という豪華仕様ですが、派手な装いではなくさりげない上品さを感じます。

プラチナという素材から重量を懸念する人もいますが、こちらは非常にバランスがいいのか着用していても重たさを感じにくいですね。

装着しているベルトは当店で付け替えたものですが、ケースに対してレザーの質感や色もとても合っていると思います。その見た目はもちろん、カルティエというブランド力がよりドレッシーさを演出してくれるでしょう。

ファンの多いシリーズだけあって、一度手に入れたら離さない人が多く、こうしてお店に入ってきてもすぐに無くなってしまいます。おそらく本記事があがる頃にはもうないかもしれません……もし気になる方は早めにお店まで！