なぜGoogleやAppleといった大企業のオフィスがあれほど洗練されているのか。それは、人材を活かし、快適に仕事のできる空間を作ること、そして、いろいろな人種や考え方の人がフェイストゥフェイスでコミュニケーションの取れる場所を構築することを考えているからに他ならない。では日本の企業ではどうか? 今回は現代社会でのオフィスのあり方と、いま注目のオフィス家具を紹介する。

いまこそ選びたい。注目のオフィス家具
個性・洗練・多機能……上質な家具で変わるオフィス空間

ここからは、家具を選ぶうえで注目したいブランド家具をご紹介。どのブランドも、将来のワークスタイルとはこうあるべき、と提案しているところばかり。もしアナタがこれからオフィス家具を選定する立場であれば、ぜひ参考にしてみてほしい。

Knoll(ノル)

世界の名作椅子と言われるもの、モダンデザインの牽引をした建築家がデザインした椅子を多くコレクション。新しい時代を切り開いてきたブランドと言える。これまで日本での流通は少なく、2016年にインターオフィスがその経路を確立した。
椅子は古来より権威の象徴としての意味も強く、役職者のみ座る椅子や、来賓用の椅子など、さまざまなシーンにおいて重要な意味を持つファニチャーである。ビジネスシーンにおいても同意で、商談室や応接室の椅子にこだわる企業も多い。ここではとくにオススメしたい3つをセレクトしていただいた。

Barcelona Chair 884,000円(税抜)
1929年に行われたバルセロナ博覧会のドイツ館にて、玉座として建築家ミース・ファン・デル・ローエがデザインしたもの。モダンファニチャーとして歴史的にも重要な作品である

Wassily Lounge Chair 329,000円(税抜)
バウハウス(ドイツの美術学校)の学生であり、のちに教官となった建築家マルセル・ブロイヤーが手がけた世界初のパイプ椅子。自転車のパイプから着想したという

Tulip Chair 231,000円(税抜)
建築家エーロ・サーリネンがデザインした世界初となった一本足の椅子(特許取得)。チューリップの花形状からその名がつけられた。オーガニックデザインの世界観に多大な影響を与えた作品だ

USM(ユーエスエム)

インターオフィスが創業時より取り扱っているスイスのブランド。世界でもっとも洗練されたモジュール式のシステムファニチャー「ハラーシステム」を50年手がけており、写真のように棚、テーブル、パーテーション、デスクなど、パーツを交換・追加することで自在に形を変えることができる。流行に左右されない普遍的なデザインは、優れたモダンクラシックデザインとして高く評価されており、多様化するビジネスシーンに呼応するかのように変化していける家具として、多くの企業に選ばれている。

MUUTO(ムート)

2006年に創立されたスカンジナビアの新興ブランド。気候風土や木を大切にする北欧文化は日本と通ずるものが多く、日本人のスタイルにもマッチ。“ムート”はフィンランドの言葉で「新たな視点」の意味で、新しい北欧の流れ「ニューノルディックスタイル」を取り入れ、これまでにないスカンジナビアデザインを提案。伝統的な北欧デザインに先進的な素材や技術、大胆な発想力を取り入れており、その幅広いコレクションは国際的な評価も高い。

家具や照明、雑貨など多彩な展開をみせるムート

Cover Lounge Chair 212,000円(税抜)
アームレストから背もたれにかけての美しいカーブが魅力的なウッドチェア。オフィスのみならず学校などの施設にも最適

Airy Coffee Table 53,000円(税抜)
女性デザイナーのセシリエ・マンツによる作品。テーブルを支える細いフレームにより、まるで天板が浮いているかのように見えることから「エアリー」の名がつけられた

The Dots Coat Hooks 3,000〜5,000円(税抜)
ムートのシグネチャーアイテムとして人気のコート掛け。メタルやウッド素材があり、サイズやカラーも豊富。オフィスに遊び心と彩りを与えたいときにオススメなファニチャーである

Vitra(ヴィトラ)

1950年にスイスで誕生して以来、常に新しいワークスタイルを模索・提案し続けているブランド。オフィス家具の研究、人間工学の研究といった使い手を考え抜いた製品作りをしており、現代のアートやファッション性に引けを取らない創造性、先見性、品質で世界的に評価を受けている。

一見してダイニング家具のような印象を受けるが、どれもオフィス家具として考え抜かれている

i+(アイプラス)

働き方のスタイルやスペースなど日本と海外では大きく違うため、海外ブランドでは対応しきれない家具も出てくる。たとえばホワイトボードやコート掛け、電話台やパーテーションなど寸法的に合わないものも。せっかく洗練された家具で揃えたところに、一般的な家具を入れるのは空間的におかしくなってしまう。そこで、クオリティに見合うものを用意するために、国内メーカーのイトーキとインターオフィスが協業して設立したオフィスファニチャー・ブランドが「i+(アイプラス)」だ。

明日もここで働きたいと思えるか?

いま自分が働くオフィスを見渡したとき、「心地がいい」「明日もここに来て働きたい」という気持ちは湧いてくるだろうか? ヨーロッパでは、コンサルティング会社や設計事務所が、オフィスの構築により生産性が向上すると具体的な数値を示しているとか。そういった意味ではまだまだ日本のオフィス環境は遅れているのかもしれない。

しかし、家具の持つパワーを存分に生かした企業や施設も増えてきており、多くの優秀な人材が、オフィス空間に惹かれて会社を志望するなどの例も多い。働き方改革が叫ばれる昨今、労働時間や人員だけにとらわれるのではなく、オフィス環境から見つめ直すことが、現代社会を生き抜くうえで必要なことなのだろう。