元6階級王者のオスカー・デラホーヤ率いるゴールデンボーイ・プロモーションズとの契約を解除してフリー(として英国のスポーツ動画専用配信サービス DAZNと直接契約)になったボクシング界きってのスーパースター、サウル・カネロ・アルバレスが、自身が持つWBC世界スーパー・ミドル級タイトルを賭けて、対立団体であるWBA世界スーパー・ミドル級王者のカラム・スミスと激突した。

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長身のWBA王者に対してP4P常連のカネロ・アルバレス

173cmのカネロ(スペイン語でシナモンを意味する。赤毛のアルバレスについたニックネーム)に対して、191cmのスミス。2人の身長差は(および、リーチ差も同様に)実に18cm!
雄大な体格を誇るカネロにしても、この身長差は厄介だと思われるが、実績から見るに、カネロが不利と思われるデータはこのくらい。P4P(パウンド・フォー・パウンド。仮に階級差がないとしたら誰が1番強いかを考えたランキング)の上位の常連であるアルバレスならば、これまで無敗の長身スミスをも容易く攻略するだろうという見方が大勢を占めていた。

サウル・カネロ・アルバレス選手名カミル・スミス
WBCスーパー・ミドル王者タイトルWBAスーパー・ミドル王者
173cm身長191cm
179cmリーチ197cm
1990年7月18日生年月日1990年4月23日
56戦53勝36KO 1敗2分戦績27戦27勝19KO 無敗
選手データ

スピードを維持しながら、より重いクラスでも通じるパワーを維持してきたアルバレス

世界に暗い影を落とし続ける新型コロナウイルス感染症の流行(パンデミック)によって、長らく試合を組んでもらうことができなかったカネロ・アルバレス。1年1ヶ月ぶりの試合は、スーパー・ミドル級(160 - 168ポンド =72.575 - 76.204kg) のメジャー2団体(WBAとWBC)の王座統一戦となった。

スーパー・ミドルと言えば全17階級中4番目に重い階級であり、日本人からすれば完全に重量級の部類に入る。173cm(175cmとも言われるが、173cmのほうが実際に近いだろう)のアルバレスは、スーパー・ミドルの平均身長である180-183cmに大きく見劣りするが、胸板の厚さや腕の太さなど、体幹の強さで、このクラスでも力負けをすることがない。(191cmのスミスは逆に規格外とも言えるが、その分“厚み”には欠けるということになる)

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カネロは、スーパー・ウェルター級(147 - 154ポンド =66.678 - 69.853kg)からキャリアをスタートしたが、スピードを落とすことなく、巧みに(ミドル級、そしてスーパー・ミドル級に)階級を上げてきた。何度も繰り返しているように身長的にはウェルター級でもそれほど大きい部類には入らないが、どのクラスでも通じるパワーを発揮してきた。結果的に階級を上げれば上げたなりに、スピードを犠牲にすることなく、どの階級でも通じるだけのパワーを獲得してきた。
もともとカネロは防御もうまく、高いテクニックを誇っているが、重いクラスにステップアップしてもパワー不足に陥ることないので、足で逃げるような試合巧者ぶりに転身することなく、常に真っ向勝負、相手にプレッシャーをかけ続けるアグレッシブな試合ぶりを見せてきた。(唯一の敗戦は メイウェザーの老練さに翻弄されての判定負けだが、この試合で受けた屈辱はカネロをさらに高度なファイターに進化させ、彼がディフェンス中心のメイウェザーの狡猾さを真似るようなことにはならなかった)
これがカネロを世界的なスターに押し上げた要因であると思う。ゴロフキンにも言えることだが、試合に勝つことを念頭に置いた 安全運転的な戦い方より、相手をぶっ倒してやる!という剥き出しの闘志を見せてくれるボクサーに、大抵の観客は惹かれるものだ。ケレン味なく、常に前に前にと出るカネロは、かつてのタイソンにも似て、時代を超えてアドレナリンを暴発させてくれる“熱さ”を与えてくれるのだ。

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