2021年のボクシングシーンを牽引するスーパースター、WBAスーパー・WBC・WBO世界スーパーミドル級王者サウル・カネロ・アルバレスサウル・アルバレス(Saúl Álvarez Barragán、メキシコ 1990年7月18日生、59戦56勝38KO 1敗 2分)が、スーパーミドル級の4団体統一マッチに挑んだ。
対するは、IBF世界スーパーミドル級チャンプのケイレブ・ハンター・プラント(Caleb Hunter Plant、USA、1992年7月8日生。21戦全勝12KO)。KO率はそれほど高くないものの、無敗のチャンピオンだ。

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WBC(World Boxing Council )は、今回の試合の勝者に、メキシコの有名遺跡の名を冠したスペシャル記念ベルト“テオティワカン・ベルト”を贈ると発表した。

ディフェンスがうまくて攻撃的なカネロ

カネロが人気を集める理由は、試合を見ればすぐわかる。スーパースターになってなお、真っ向勝負を挑み、相手を倒そうとするケレン味のないファイトスタイルを続けているからだ。

彼は上背こそ高くないが(173cmほど)、体格に恵まれ、階級を上げても力負けすることが少ない。それでいてスピードがあり、パンチもあるから、相手をノックアウトするだけの攻撃力を維持し続ける。

さらに、比較的距離を詰めてプレッシャーをかけていく戦い方をしながらも、彼は実にディフェンス(防御)がうまい。硬く両腕を固めたブロッキングも素晴らしいが、例えば顔面への強打を首をひねって受け流す、いわゆる“スリッピングアウェイ”など、避ける技術も超一級だ。タイソンのようにカラダを常に動かしながらターゲットを絞らせないようにするタイプとも異なり、受けるにせよ避けるにせよ、来たパンチを見切って対応するカンの良さと眼の良さを併せ持っている。

カネロ・アルバレスをスーパースターに押し上げたのは、その強烈な打撃力と雄大な体格(と端正な容姿)であることは間違いないが、そのパワーを有効にしているのは、このディフェンスへの絶大な自信であるだろうと思う。
これまで唯一カネロに勝っているメイウェザーの天才的ディフェンスは、ひたすら試合に勝つために用いられたが、(その試合以降ディフェンスの有効性を思い知った)カネロは、試合に勝つということは当たり前ながら、相手を倒すために活用する達人になった、と言えるだろう。

優れたディフェンスをフルに使いながら、距離を詰め、強打を当てる。それがカネロのスタイルであり、パウンド・フォー・パウンド(P4P)の頂点に君臨する秘訣なのである。

恵まれた上背を持つ、テクニシャンのケイレブ・プラント

一方の対戦相手、ケイレブ・プラントは185cmほどの長身であり、スーパーミドル級というクラスにフィットした選手と言える。(ある意味、この階級ではカネロは常識外れなほど小さい)

パワーがないわけではないが、どちらかというとテクニシャン。力まかせに攻めるというよりは、堅実にカウンターを狙う慎重なボクサーファイターだ。

そもそもスーパーミドル級にしては短躯なカネロは、距離を詰めて接近戦に活路を見出そうとするだろうが、身長・リーチに勝るプラントは、ロープを背にしたりコーナーに詰められるようなことは避け、距離をとった戦い方を志向するだろう。(プレッシャーをかけるのがこの上なく上手なカネロをかわせるかどうかはわからないが)

下馬表ではカネロ有利だし、メイウェザーにつけられた“汚点”が彼を一層強くしたのだと思うが、プラントもまた 逆に無敗の王者だからこその凄みを発揮し、カネロのパワーを完封する可能性がないわけではない。

結局のところ、勝負はやってみなければわからない、そういう試合になるとしか言いようがない実力者ではあるのだ、プラントは。

試合速報

試合が始まると、最初に攻勢に出たのはプラント。ジャブを主体にカネロを突き放そうとする。
ガードを固めながらジリジリ間合を詰めるカネロ・アルバレスに対して、デトロイトスタイルのような構えで左ジャブを放ち続けるプラント。ある意味、予想通りの展開だが、案外プラントがコーナーに詰められるシーンが多い。それだけカネロの圧がすごい、とも言えるし、脚で逃げることによって逆にスタミナを奪われることをプラントが嫌ったため、とも言えるだろう。

実際、後者の見方の方が正しいかもしれない。というのも接近戦に持ち込まれても、プラントは上手にアッパーをカネロに当てて、下がらせることに成功しているからだ。ただ、コーナーに詰められるのは見栄えは悪い。このあたりが採点割れを生むことになるかもしれない。

ただ、いずれにしても、プラントはよく戦っている。基本的にはカネロの距離で戦いつつ、そして爆発するかのような彼の強打をうまく捌きつつ(急所の少ない左脇腹を打たせてでも、右脇腹を徹底的に守りながら)細かいパンチを当て返す。

しかし、終わりは突然やってきた。終盤11ラウンド、ラッシュを続けるカネロの圧力に耐えかねて、プラントが倒れ込み、初のダウンを取られる。かろうじて立ち上がったものの、絶好の機会とみたカネロのキラーインスティンクト(殺しの本能)が爆発し、猛然と襲い掛かられたところで再度のダウン、ほぼ同時にレフェリーが試合を止めた。

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こうして11ラウンドTKOでカネロが4団体統一に成功。彼のパワーに戦慄を覚える試合となった。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。