P4Pのトップであってもおかしくないほどの実力者でありながら、スーパーファイトの相手に恵まれない不遇の王者テレンス・クロフォード。本来であれば(引退宣言がなされてしまったが)マニー・パッキャオやエロール・スペンス・Jr.らとの対決が望まれるものの、なかなか実現しないまま、彼ももう34歳(1987年9月28日生まれ)。大金を稼ぐチャンスを狙うか、無敗のレコードを守って晩節を汚すことなくキャリアを終えるかを意識せざるをえない時期に差し掛かってきている。
その彼が迎え撃つことになったのは、WBC・IBFの元世界ウェルター級チャンプ ショーン・ポーター。スーパーファイトの相手というにはやや格が落ちるが、取りこぼすリスクのある危険なボクサーだ。

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超テクニシャンのクロフォード対ピュアなファイター ポーター

同い年のポーターは、手数の多いインファイター。オーソドックスな構えだが、遠い間合いから右を中心にフルスイングしながら一気に詰めてくる。そしてパワフルな連打を仕掛けてくる戦い方だ。
対するクロフォードは、サウスポーながら右でも左でも構えを柔軟に変えながら戦うスイッチヒッター。スイッチするというよりも相手によってやりやすい構えに切り替える、ある意味本物の両利きタイプもいえる。

この日のクロフォードは、1ラウンドこそ左腕を前に出したオーソドックススタイルで闘ったものの、2ラウンド以降は徹底してサウスポースタイルでポーターを迎え撃った。

飛び込んでくるポーターに、カウンターを合わせる。それがクロフォードの戦略だが、軽いパンチが当たったくらいではポーターの突進は止まらない。

通常、クロフォードは2-3ラウンドくらいまでに敵ボクサーのクセを掴み、中盤以降はいいように相手をあしらう、非常にクレバーなボクサーだが、今回に関しては、ポーターの動きを掴みきれずにいたようにみえた。

その結果試合後半までクロフォードはたびたびポーターのパンチを受けていたし、ジャッジによってはポイント上一進一退なようにみえていた。

ただ、結果だけをみれば、いつもと同じ終わりが待っていた。
10ラウンドに入って、ポーターの顔面をクロフォードのカウンターが捉え、ポーターがダウン。
立ち上がったポーターは、少し距離をとろうと努力したものの、クロフォードはそれを許さず一気に強打を叩き込み、ポーターから二度目のダウンを奪う。ポーターはリングの床を数度叩きながら悔しがるさまを見せたが、セコンドが試合放棄を申し出て試合終了。
スペンスもサーマンも倒しきれなかったポーターを、クロフォードはTKOで退けてみせた。

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神々の黄昏?

前項のように、勝ったのはクロフォード。

結果だけをみれば、下馬評通りといえるが、それでもポーターは善戦したと思うし、ここ数試合の動きを鑑みるに、クロフォード無双、という無敵ぶりは少し影を潜めてきたように見えた。勝ちは勝ちだし、戦略通りなのだが、途中だけをみると、その戦略のピントを合わせ始めてからカッチリ合うまでに、これまでより時間がかかっているというか、案外苦戦を強いられている時間が長くなっている気がする。

その意味で、天才クロフォードといえども、無敵ぶりを誇れる時間はもうあまり長いことは残されていないのではないか?冒頭で述べたように、1987年生まれのクロフォードは、来年には35歳。天才の瓦解はいきなりくるものだから、晩節を汚さないことを考えるか、一発勝負のスーパーファイトを引き寄せるか、どちらかいずれかの道を取る“人生の戦略”をそろそろたてるべき時期にあるのではないか?と思ったのである。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。