選手層が厚く、世界のボクシングシーンで最大の注目を浴びるクラスの一つ、ミドル級。
世界においては文字通りの中量級のミドル級(Max.160ポンド≒72.96キロ)は、日本にとっては重量級。そのミドル級で最強の呼び声高いトリプルG(GGG)ことゲンナジー・ゴロフキンと、五輪金メダリストでもある日本の村田諒太が激突した。
ゴロフキンはIBFのベルトを保有。一方の村田はWBAスーパー王者。つまり、IBFとWBAの統一マッチということだが、日本(場所はさいたまアリーナ)にゴロフキンほどのスーパースターを招聘できた、ということの方がよほど事件だろう。

村田がプレッシャーをかけて攻勢に出る展開

いまのミドル級レンジ(スーパーミドルを含む)では、カネロ・アルバレスとゴロフキンが頭ひとつ飛び抜けていて、とてもじゃないが村田は敵うまい、と思っていたが、結果的には9回TKO負けとなり、事前の予想通りになったわけだが、それでも実は村田はかなり頑張った。

僕はゴロフキンに対抗するには、自分から強くプレッシャーをかけて、彼を下がらせる他ないと考えていた。ゴロフキンはその持ち前の強打と、恐らくはカラダが柔らかいのだろう、相手のパンチ力を殺せる打たれ強さを活かし、前へ前へと攻勢に出るのが常だ。対戦相手は、ガード越しにでも効くと言われるほどの重く硬いゴロフキンのパンチに恐れをなし、ついつい下がってしまう。下がった状態での反撃はさほど効かないものだし、相打ちになってもゴロフキンにはあまり効果がなく、自分ばかりがダメージを食う。

それがゴロフキンの戦い方なのだが、唯一彼に土をつけたカネロは(第二戦において)ゴロフキンの圧力に負けず、むしろゴロフキンを下がらせた。村田諒太はゴロフキンより数センチ背が高く、体格的にも優っているうえ、一撃必倒と評される右ストレートは重く威力がある。

無敵を誇ったゴロフキンも試合前日(2022年4月8日)には40歳。とうに体力のピークは過ぎている。プレッシャーをかけ返してゴロフキンを下がらせることに成功すれば、勝機はあるし、体力を奪って後半勝負や判定狙いをすることも考えられると思っていたのである(まあ、村田も36歳になるのだが)。

そして、村田諒太はその通りの戦い方を愚直に行った。両腕を高く上げてガードを固め、思い切り接近しては左右からボディを攻めたり、得意の右ストレートを放ってゴロフキンを苦しめる。
ゴロフキンはプロ生活において、これまでKO負けはおろかダウンさえしたことがないタフなボクサーだが、繰り返すが今年40歳。ボディ打ちによってスタミナを奪うのは良い作戦と思えた。

ゴロフキンを追いつめた村田諒太だったが

当て感に優れたゴロフキンは、ジャブを起点にした細かいコンビネーションをしばしば放ち、村田の顔を軽いが執拗に叩く。
村田は鼻血を出し、両目の上から顔を腫らすが、とにかく手を出しゴロフキンを下がらせる。
村田のタフさは、なんとしても倒れてなるか、という彼の気合に支られているのか、ゴロフキンを怯えさせていたと思う。もう少し、丁寧にゴロフキンにダメージを与えることができたなら、村田に勝ち目はあったはずだが、村田は最後までゴロフキンの当て感に匹敵することができず、せっかくゴロフキンを追いつめながらも、彼に重くパワフルな一撃をまともに当てることができなかった。

もし村田諒太が30歳ならば、ピークが過ぎたゴロフキンの攻勢を凌ぎ、少なくとも判定勝負に持ち込めたことだろうが、彼の肉体にゴロフキンのパンチは拭い難いダメージを与えていた。前半には大番狂わせもあるかも?と思わせるくらいにゴロフキンに疲労と焦りを味合わせたように思えたが、中盤以降 徐々に手数が少なくなり、ついには勝負どころを見極めたゴロフキンの猛攻にあい、リングに倒れ込んでしまう。それと同時にセコンドからタオルが投げ込まれ、9ラウンドにしてTKO負けということになった。

大金を稼いだし

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前述のように、ゴロフキンによって3敗目を喫し、無冠となった村田諒太だが、今回の試合で稼いだファイトマネーは5億円(ゴロフキンは15億円?とのこと)という。
マネージメントに半分もってかれるが、それでも2億以上のキャッシュが手元に残る。この先再びミドル級タイトルを狙うには、ゴロフキンと再戦するか(まず無理だろうが)、WBOまたはWBCのベルトを狙う他ないが、これらのマッチメイクはなかなかに大変だろう。

とすると、村田は引退を選ぶかもしれないが、ミドル級という世界中のボクシングファンの注目を集めやすい階級で 活躍できるボクサーがいなくなるということは、あまりにも残念なことである。ゴロフキンより先に表舞台から去るのは避けてもらいたいところだが。

また、村田に勝ったゴロフキンだが、自身の衰えを明確に悟ったということはないだろうか。
次戦はカネロとの第3戦、という声も聞くが、今回の出来では、とてもカネロには勝てないんじゃないか?と思わせるのだが。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。