現役チャンピオンでただ1人、全勝全KOのパーフェクトレコードを持つWBC IBF世界ライト・ヘビー級チャンピオンのアルツール・ベテルビエフ(ロシア)。大番狂せを狙う、WBO同級世界王者ジョー・スミス(米国)との三団体王座統一マッチを行うも、数回のダウンを奪ったうえ2ラウンドTKO勝ちを収めた(in NY)。

ライト・ヘビー級の3団体(WBC WBO IBF)の統一戦

試合前のオッズでは圧倒的有利のベテルビエフ。17戦17勝17KO無敗の完璧な戦績を誇る強打者だ。ロシア生まれながら、カナダを主戦場としている。
ベテルビエフにはWBOの王座を射止めた苦労人の スミスも到底勝ち目がないという下馬評だったが、1985年生まれのベテルビエフは既に37歳。試合当日32歳のスミスも決して若いとは言えないものの、年齢差はスミスにとっては数少ない優位点ではあった。
それに、ベテルビエフのKO率(100%!)にはもちろん及ばないまでも、スミスも31戦28勝して22KOを上げている強打者だ。見た目の(濃い髭や胸毛などが醸し出すロシアンマッチョ風の)ワイルドさとは比例しない、地味で正攻法なボクサーであるベテルビエフは、それほど打たれ強くもなく、ダウン経験もあるから、もしかして?という番狂せをスミスが起こさないとも限らないのだった。

もちろん世間的には、ベテルビエフがその完璧な記録を伸ばすかどうかが話題を集めたわけだが、スミスからすればベテルビエフを破れば逆に一気にスターダムにのしあがれる。少なくとも時の人にはなれるのだし、負けても判定勝負に持ち込めるだけでも大成果なのだから、気合が入らないわけがない。

さらに、この一戦に勝てば、WBOのベルトの防衛だけでなく、WBCとIBFのベルトが手に入るのだ。

18勝18KO無敗となったベテルビエフ

しかし、残念ながら、結果として、スミスはベデルビエフのパーフェクトレコードを更新するだけの、完全な引き立て役にすぎなかった。これまでにKO負けもダウン経験もないというタフなスミスを、ベテルビエフは1ラウンドから翻弄し、わずか数分で仕留めてみせた(2ラウンドTKO)

ベテルビエフは戦績を完璧なまま18勝18KOに伸ばし、WBCと IBFのベルトに加え WBOの王座をも手に入れてしまったわけだ。

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狙うはカネロを破ったビボル戦か?

WBOの前王者となったスミスだが、実は先日カネロを下して話題になったドミトリー・ビボルに判定負けしている。

カネロが勝っていればカネロ対ベテルビエフというスーパーファイトの可能性もあったかもだが(実力に勝るかもしれない人気を誇るカネロは、その強さ以上の金銭的価値があるが、ベテルビエフは見事すぎる戦績がなければ、あまり評価されない地味なボクサーで、実力に見合う金儲けをするには、良い相手を選ぶ→選ばれる? ほかないのだが)、ビボルが勝ってしまったために、カネロ戦はやや遠のいてしまった、少なくともライト・ヘビーという階級では。

前述のように無敵のベテルビエフももう37歳。年齢的な衰えはまだ見えていないかもだが、彼とて人間だ、いつかは引退しなくてはならないし、体力のピークもある。

まだ31歳のカネロからすれば、ベデルビエフの完全戦績が途切れないことと、彼のピークアウトの訪れの、ちょうど良いタイミングを図っているのかもだが、対戦するとすればどちらにしてもそれほど先のことではないと思われる。

ベテルビエフとしては、消えたカネロ戦の可能性を嘆いたり、再チャンスをただ待つより、少しでも金になる戦いを考えねばならない。もちろん無難に試合をこなして、パーフェクトレコードのまま引退してレジェンドになるという道もあるだろうが、現状でみる限り、ベテルビエフとしてはビボルを相手にするのが1番話題を呼ぶだろうと思われる。

対カネロの呼び水になるかもしれないし(あまり圧倒的に勝ってしまうと相手を怯えさせてしまって逆効果になってしまうかもしれないが?)、少なくとも4団体統一という人参がぶら下がっている。
ビボルは強打者ではなく(ワンツーを中心とした、非常にオーソドックスな選手に見える)、ベテルビエフとしてはそれほどやりにくい相手ではない気がする。

少なくとも完璧な試合を続ける王者からすれば、大金を稼げる(良いファイトマネーが約束される)、人気と実力を兼ね備えたボクサーとの闘いが望まれているのは間違いないのだ。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。