インターネットの普及に伴い、雑誌のWebメディア化が一般化しつつある。しかし、限られた時間と人員で紙とWebの業務を両立することは難しく、運営コストも気になるという意見も多くあるだろう。リボルバーが開発・提供するパブリッシングプラットフォーム「dino」なら、スピーディかつリーズナブルなWebメディア運営が可能だ。ここでは、『webオートバイ』にてdinoを採用している株式会社モーターマガジン社に、これまでの苦労や努力、dinoの魅力について話を聞いた。

周りからの応援と協力があってのWeb展開だった

モーターマガジン社が発刊する、バイクの専門誌「月刊 オートバイ」。今年で創刊97周年という、日本で最も歴史のある二輪総合誌だ。新型車両のニュースや、バイク用品、レース情報など二輪ライフに欠かせない情報を発信している。ちなみに、二輪車を意味する“オートバイ”という言葉は、まさしくこの月刊誌から広まったものだ。

そんな「オートバイ」が運営する『webオートバイ』は、最新のバイク情報やコラム、ツーリング企画などバイク好きから多く支持を集めている人気メディアだ。老舗出版社であるモーターマガジン社がWebへ展開を広げていった理由とは何か。同社のwebオートバイ編集部に所属する福田さん、西野さんにその経緯を伺った。

──『webオートバイ』を立ち上げるまでの経緯をお聞かせください。

福田さん
Webメディアを立ち上げたきっかけは、自社からの発案ではなく雑誌「オートバイ」の記事には価値があるということを、周りの媒体さんから多く声をかけていただいたことでした。雑誌のみに留まらず、Webでも展開して広げていこうという流れでスタートし、立ち上げたのは今から約10年前、2010年のこと。当時は、個人向けブログサービスにて記事を配信していました。PVへの意識や広告収益などの発想はなく、Webでのビジネス展開というよりは自分たちのペースで運営をしていました。

二輪誌業界自体がWebへの展開例があまりなく、どこかのサイトをお手本にするというよりは自分たちで模索しながらといった感じで。サイトの運営はもちろん、SNSの発信なんかも正直未知数。その時は本誌の業務と並行しながらも、毎日コツコツ記事を配信し続けていました。

その結果、次第にファンが集まってきて、「Webでの次なる発展を目指してみては?」という声が挙がり、新たなシステムを検討することになりました。そこでリボルバーが開発・提供するクラウドCMS「dino」に出会い、2016年3月にリニューアルオープンしました。

福田 稔
1975年東京都生まれ。1999年にモーターマガジン社に入社。月刊オートバイの編集者としてキャリアを積みながら、2010年のwebオートバイ立ち上げに参加。現在は編集長を務めながら、YouTubeの公式チャンネルや、「オートバイ女子部」の企画立案、制作に携わる。公式のSNSを通じた情報発信も担当。

システムの引越しって、大変でしょう? 実は僕、ちょっと億劫だなぁと思っていたんですよ(笑)。けど、引継ぎの際に以前利用していたブログサービスの担当者とリボルバーの方が双方に連携してくださり、アカウントの引継ぎなどを含めスムーズに行ってくれました。自分たちだけじゃ絶対できないことだったので、当時は本当に助かりました。

──メディアを立ち上げてよかったことや苦労した点を教えてください。

福田さん
良かったことは、どこよりも先にメディアを立ち上げたという点は非常に大きいかな、と思っています。苦労した点は、ライターの確保。サイトが大きくなるにつれて、「記事を書きたい!」という声をもらう反面、果たして継続的に記事を書けるか…?ということが今も変わらずに課題として挙げられます。

現在では40〜50人ほど登録ライターがいますが、立ち上げ当時を振り返ると、本当に少ない人数で運営していたので大変でした。本誌の編集が忙しい中、Webの記事に時間を充てられる人員もなかなか限られていて……。なので、立ち上げ当時から継続的に執筆してくれているライターさんはとても大事にしています!

西野さん
僕が2018年12月に入社して、最近ではwebオートバイ編集部と雑誌編集部が分かれていますが、当時のことを考えるとものすごく大変だったと思います。当時の福田さん、コツコツ配信して、PV見て、記事書いての繰り返しをほとんど一人で…ちょっと寂しかったかもしれませんね(笑)。

西野 鉄兵
1986年神奈川県生まれ。2018年にモーターマガジン社に入社。2019年からwebオートバイ編集部でデスクを務める。以前の職場では、ツーリングマガジン『アウトライダー』で長年デスクを務めていた。現在はwebオートバイでツーリング、キャンプ、アウトドア関連の記事やビギナーライダー向けの企画を主に担当している。

福田さん
大変だったけど、毎日必ず1本は記事を配信できるように頑張っていたよ。出版社の中では、紙とWebを切り分けて事業をスタートするところが多いかもしれないけど、僕はどっちも兼任していたからWebでやりたいことを比較的スムーズに動けたことは良かったかな。

他社がやらない、斬新なアイデアで勝負!

──現在はどのようなコンテンツを配信しているのでしょうか?

試乗レポートはもちろん、ツーリング企画など独自の目線でコンテンツを展開している

www.autoby.jp

福田さん
本誌からの情報もありますが、現在はWebオリジナルコンテンツに注力しています。初めの頃は、速報性のあるニュースやレース記事などをメインに更新していましたが、サイトが大きくなるにつれて方向性が変わってきました。

独立したメディアを確立させるためには、本誌からの情報だけでなく、webオートバイにしかないない記事を増やすことが重要となってきます。社内からはもちろん、周囲からもこのような声が次第に多く集まるようになってきました。

西野さん
そうですね。一番転機となったのが “オートバイ女子部” の誕生だと思います。オートバイ女子部は2017年から活動を続けていて、女子ライダーたちがバイクに乗って、語って、あらゆることにチャレンジしてもらう企画です。

福田さんのすごいところは1〜2人ではなく一気に5人もの女の子を呼んできちゃうところ! こういったスタイルって、今までになかったと思います。僕が入社した2018年頃、バイク雑誌の廃刊が相次いだ中、新しいスタイルで突き進んでいく『webオートバイ』の存在は、数あるメディアの中でも特に際立っていたと思います。

福田さん
そうだね。ここ何年かはバイクのWebメディアが増えてきていて、試乗会などの雰囲気も変わってきているかなとも感じます。

──コンテンツや企画作りで意識していることはどんなことですか?

福田さん
記事更新の回転数をあげていくと、リリースの横流しに偏ってしまいがち。早さを競うような更新スタイルが競合間で増えてきた中、「ひとりではやりきれないし、面白さがない」と感じていました。Webで生き残るには、何か武器が必要だと考えていた頃、ご縁があって元SKEの梅本まどかさんに協力してもらうことになりました。

彼女はとても熱心にチャレンジしてくれています。ツーリングに行こう、レースに出てみよう、仲間を集めよう、と進んでいくうちにオートバイ女子部の規模が段々と大きくなってきました。その結果、webオートバイでしかないオリジナルコンテンツへと成長していったと思います。

記事の執筆だけでなく、今ではイベントでの物販や出演の依頼なども声をかけてもらっていて、webオートバイには欠かせない存在となっています!

当時の苦労や思い出を振り返りながら、福田さんは「周囲からの応援や協力があったから」と笑顔で語る。雑誌編集と並行しながら、毎日コツコツと記事を配信し、他にはない独自性を貫いていった結果、『webオートバイ』は月間約1000万PV(2020年5月)を誇るメディアへと成長した。