スーパースター、カネロが2階級重いクラスのライト・ヘビー級チャンピオン、セルゲイ・コバレフを攻略し、11回KO勝ちを収めた。
競り勝ったのでもなく、捌ききったのでもなく、真っ向勝負でねじ伏せたのだ。

Saul Alvarez on Instagram: “It's time for a fight! No matter the challenge time is always on my side. #RogerDubuis”

www.instagram.com

パウンド・フォー・パウンド ランキング常連のカネロ・アルバレスが偉業達成

ミドル級で無敗の王者ゴロフキンを下し、スーパー・ミドル級王座の獲得にも成功したメキシコのスーパースター、サウル・アルバレス(カネロというニックネームの方が著名である)が、WBO ライト・ヘビー級王者のセルゲイ・コバレフを下し、4階級制覇を達成した。

5-6センチの身長差を活かせないコバレフ、パワーとスピードを存分に発揮するカネロ

序盤はジャブを多用するコバレフが攻勢を見せ、カネロはガードを高く堅く構えながら時折強打で反撃する展開だったが、やがてカネロは、コバレフの圧力が自分の体力・体格で耐え得るレベルであると判断したのだろう、ガードは高めにしつつも徐々に手数を増やしていく。

時として相打ちとなっても、カネロはコバレフのパンチを平然と耐える。逆にコバレフは戦前の予想したよりもカネロのパンチに威力があると感じたのだろう、少しずつ後退しながらアウトボックスしようとする。

基本通りにジャブからのストレート、つまりワンツーを中心に手を出すコバレフに対してカネロはフック系のパンチで応戦。徐々にコバレフの方がダメージを負い始めているかのように見える。

驚くべきはカネロの体力だ。173センチほど(公称175とも言われるがそんなに高くないように見える)の身長ながら、ゴツくしっかりした体幹を誇り、ナチュラルボーンで70キロ後半から80数キロの身体を持つコバレフをパワーで押し返せるのは本当に凄い。さらに、L・ヘビー級に合わせたパワーアップをしていながら、スピードを保っているのだ。

真っ向勝負でコバレフを打ちのめしたカネロには称賛の言葉しかない

2階級もクラスが上の王者の真ん前に立ち、あくまで真っ向勝負を挑むカネロは、決して相手の正面に立たずに変幻自在なポジショニングを見せるロマチェンコや、相手のパンチが届がない場所に常に身を置く安全運転なメイウェザーとは違い、実に外連味がないファイトスタイル。人気が出て当たり前な気がする。

しかも、短期間に重い階級に挑戦しながら、モアパワーの実現と軽い階級からのスピードを保ったまま体格を仕上げてくるのは、立派としかいいようがない。

実際、試合では全く危なげがなかった。戦略的にうまく戦ったというのではなく、完全に力勝負を挑み、コバレフをねじ伏せたのだ。

11ラウンド、フィニッシュは突然きた。それまで蓄積されたダメージに耐え、手数を減らすことのなかったコバレフだったが、カネロが放った左フックをまともに受けてよろめいたところを、カネロの右ストレートを顎に受け、たまらず崩れ落ちた。

レフェリーはカウントをすることもなく即座に止めたが、賢明な判断だったと言えるだろう。

今回の試合で、カネロは自身の実力を再度実証し、スーパースターとしての矜持を世界に見せつけたと言える。今回の劇的な勝利で、もはやゴロフキンとの3戦目を行う必要はないことを、すべてのボクシングファンに宣言したといっていい。(金になるならまたやってもいい、とはカネロは言うけれど、実際にはもう必要ない、24ラウンドも戦ったのだから、と言うのが本音だし、真実だろう)

次戦の相手をどう決めるのかわからないが、クロフォードでもチャーロでも誰でもいい、とカネロは悠然と構えながら待つ権利を手に入れたのだ。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。