衝撃的だった世界3大陸同時ワールドプレミアから約1カ月、やっとポルシェ初のピュアEVのハンドルを欧州で握ることができた。2日間にわたり試乗した「タイカン」には、まさしくポルシェのDNAが感じられたスポーツカーであった。(写真:ポルシェジャパン)

ポルシェ初の電気自動車(BEV)であるタイカンの国際試乗会へ

試乗できたのはタイカンターボとターボSの2モデルである。

ポルシェ初の電気自動車(BEV)であるタイカンの国際試乗会に参加した。また筆者はその前に、ワールドプレミアイベントとワークショップも取材している。こうした機会を重ね、タイカンの知識が積み重なるにつれ、このポルシェ初のピュアEVへの興味が日増しに強くなっていたのだ。そしてやっと叶った試乗は、最近の国際試乗会では異例の2日間となったが、タイカンに接する時間が多くなればなるほど、それまで持っていた不安が少しずつ払拭されていったのである。

試乗したのは、タイカンターボとターボS。前者は最高出力460kW(625ps)、最大トルク850Nm、後者は最高出力こそ同スペックだが最大トルクが1050Nmまで高められ、オーバーブースト時はそれぞれ500kW(680ps)、560kW(761ps)になる。スペックだけみても実に驚異的。ポルシェのBEVは、エコなだけではなく自らのブランドが持つ“スポーツカーのDNA”をしっかりと備えていた。

911よりも低い重心高がポルシェらしい走りを味わわせる。ゼロエミッションカーなので当然、エキゾーストパイプは存在しない。しかし違和感は感じなかった。

加速力は想像を超える凄さ身のこなしもボディの重さを感じない

通常、国際試乗会では、ふたり1組になりルートの途中でドライバー交代をしながら1台を試乗する。運転席に座っているときはドライバーの視点で、助手席や後席に座るときは乗員の視点でチェックするのだ。今回も同様だが、いつもと違うのはアクセルペダルを踏み込むときに「踏みます」と隣にひと声かけなければいけないことだ。そうしないと助手席に座っている人が加速Gで首を痛めてしまうかもしれないからだ。それほど加速力が凄いのである。

圧巻の加速性能を持つタイカンはブレーキも強化されターボSはPCCB、ターボはPSCBを装着。

ポルシェのBEVなのだからある程度は予想していたが、タイカンのそれはターボでもターボSでも想像を超えていた。それは助手席にひと声かけ、右足に力を入れると瞬時に身体がシートに押しつけられる加速力を体験させてくれるのである。0→100km/h加速2.8秒(ターボS)は、異次元の世界だ。さらに0→200km/hは9.8秒(ターボS)でポルシェのエンジニアによると、これを20回以上繰り返してもタイムは変わらないという。こんなBEVあるだろうか。これがポルシェの実力でありDNA、そしてBEVへの回答なのである。

メーターは16.8インチ、中央と助手席に10.9インチタッチ式、エアコンなどの設定は8.4インチのタッチ式と、4つのディスプレイを用意。中央にギアセレクターはない。

圧倒的なのは加速力だけではない。ワインディングロードでの身のこなしは、まるで身体とクルマが一体になったような感覚になる。その軽快なフットワークはとても車両重量が約2400kgあるようには思えない。これには、リアアクティブステアリングやアダプティブサスペンション、ロール制御システムなどを統合制御するポルシェ4Dシャシコントロールの恩恵もあるようだ。ちなみにタイカンは2基の電気モーターによる4WDシステムを採用している。

BEV は高速道路を走るのが苦手だがタイカンにそれはあてはまらなかった

今回の試乗は、オーストリア インスブルックからドイツ ミュンヘンまで2日間にわたり約650kmほどの距離を走った。指定されていたルートには充電スポットやアウトバーンがあり、そこでは200km/hを超える超高速域でも走ったが、まったく不安を覚えなかった。安定感は抜群だ。

メーターパネルは4つの表示モードから選択できる。写真はクラシックモードだ。

ところでタイカンには、リアアクスルに2速トランスミッションが搭載される。ゼロ発進から最大加速を得られるのが速で、2速はより効率が高く、高速走行時は、ほとんどこの2速が使われる。 

航続距離は、ターボSが412km、ターボが450km(ともにWLTP準拠)で、アクセルペダルを離すと積極的にコースティングに入り、ブレーキペダルを踏めば減速エネルギーは回生される。回生システムは、最大265kWでブレーキ操作の90%は油圧式ブレーキではなく、電気モーターによって行われるという。

ちなみにBEVは、一般道なら減速時のエネルギーを積極的にバッテリーに回収できるが、高速道路は減速エネルギーを回生しにくいので、当然、電気を消費するばかりで、充電残量は一般道を走った場合より減りが早くなる。そこで高速道路を走ると航続距離がどんどん減っていくので長距離移動への不安が大きくなるのだ。しかしそうしたエネルギーマネージメントもタイカンの面白さであると今回は感じることができた。

電気モーターの音をスポーツサウンドに増幅

タイカンのドライビングモードは「レンジ」、「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」に加え、「インディビジュアル」も用意されるが、どのモードで走っても乗り心地に嫌なゴツゴツ感を伝えてこない。まるでパナメーラに乗っているようにとても快適なのだ。これは重量物であるバッテリーを低い位置に搭載した効果もあるのだろう。それにより低重心となりフラットで快適な乗り心地を実現しているのである。

ところでタイカンの重心高は、911より低いというが、こうしたBEVのメリットはさまざまな場面で感じられるだろう。試乗中の充電は、アウトバーンのパーキングエリアにあるIONITY(イオニティ)の充電設備を使った。

ランチの間、ほんの20分程度で20%ぐらいまで減っていたバッテリー残量を80%ぐらいまで回復させることができたのである。ちなみにこの間の充電器の表示は、ほぼ120kWあたりを示していた。このように自分で充電を体験することで、航続距離や充電に対する不安は薄れるのである。

さらに興味深いのは、ポルシェは、モバイルチャージャーも用意するということだ。これは重量約3kgと持ち運びが可能で、外出先でも充電できるというものだ。日本では、急速充電CHAdeMoに対応する。現状50kWだが、今後、150kWまで出力が増えれば、欧州圏と同じように充電時間を短縮できるだろう。

国際試乗会はノルウェーからシュトゥットガルトまでの約6400kmをリレー形式で行われ、日本チームはオーストリア インスブルックからドイツ ミュンヘンまでの約650kmのハンドルを2日間にわたり任された。写真はそのゴールとなったミュンヘン空港の広場である。

最後にサウンドにも触れておきたい。ポルシェは、タイカンにBEV専用のエレクトリックスポーツサウンド与えている。これはタイカンの電気モーター音をもとに増幅させたものだ。それをスピーカーから出しているのである。当然、911のようなフラット6サウンドではないが、これもポルシェらしい音だと試乗中は終始感じられた。

タイカンは先日、4Sも発表され着実にライナップを増やしている。全モデルとも日本仕様の価格は未定だが、導入へのカウントダウンはすでに始まっている。その日が楽しみでならない。

タイカン ターボSに試乗した2日間ともアウトバーンにあるIONITYの充電施設を使いランチ時間を使って充電を行った。

IONITYの高出力充電ステーションは、欧州の充電規格CCSを採用し、充電ポイントあたり350kWの充電容量を実現する。IONITYの高出力充電ステーションは、欧州の充電規格CCSを採用し、充電ポイントあたり350kWの充電容量を実現する。ダイムラー、BMW、フォードと共同で立ち上げたは欧州で20年末までに400カ所の高出力充電ステーションを設置する。

ポルシェ タイカン ターボS主要諸元
モーター最高出力:460kW(625ps)、モーター最大トルク:1050Nm、バッテリー:93.45kWh、EV走行距離:388-412km、WLTP電費:25.7-24.5kWh/100km、全長×全幅×全高:4963mm×1966mm×1378mm、ホイールベース:2900mm、車両重量:2295kg、駆動方式:4WD、最奥速度:260km/h、0→100km/h加速:2.8秒

千葉知充|Tomomitsu Chiba

創刊1955年の日本で一番歴史のある自動車専門誌「Motor Magazine(モーターマガジン)」の編集長。いままで乗り継いできたクルマは国産、輸入車、中古車、新車を含め20台以上。趣味は日本中の競馬場、世界中のカジノ巡り。

併せて読みたい記事はこちら