『ドリーム』などの名作を手掛けた名匠セオドア・メルフィー監督による、iPhone 11 Proで撮影されたショートムービー『女児(Chinese New Year - Daugter)が泣ける。

Shot on iPhone 11 Pro — Chinese New Year — Daughter

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静かに淡々とした表現で心震わせる感動のショートムービー

主人公は中国人のシングルマザーと幼い娘。
口うるさい?母親に反発して家を飛び出た彼女は、タクシードライバーをしながら娘を育てている。
幼子を家に残しておくわけにもいかず、彼女はタクシーの後部座席に娘を座らせながら仕事をする。事情を察してくれる優しい乗客ばかりでもなく、怪訝な表情を浮かべたり不快な態度をとる者も当然いるが、それでも彼女にはほかの手立てはない。幸運にもそんな境遇でも小さな娘は明るく育ち、ラップか何かの紙の芯を万華鏡や望遠鏡のように使い、外を眺めることを楽しむ天真爛漫さを見せてくれるので、彼女も疲れや先行きの不安に押し潰されることなく強くあれるのだった。

ある雨の夜、彼女はいつものように仕事をこなし、帰路を急いでいたが、幼い娘が路肩でタクシーを探している人影を見つけたことで、やむなくその客を乗せるために車を停める。乗り込んできた初老の女性、それはなんと喧嘩別れをして家を飛び出て以来一度も会っていなかった彼女の母親だった。

老いた母親は、毎年正月(中国の旧正月=Chinese New Year)には、出ていった娘が運転するタクシーを探して街を彷徨っていた。幼子を抱えて家を出ていって戻らない娘を探して、娘が好きな餃子を入れた蒸籠を抱えて、街中を歩き回っていたのだった。

正月はいつも家族を探していたよ、毎年正月には餃子を作っていたよ、と老母は呟く。
全てを察した彼女は無言のまま運転席を降りて、後部座席へと移動する。何が起きているのか分からずに不審な表情で自分を見つめる幼い娘を挟み、蒸籠を抱えた老母に向けて、彼女は一言、「お母さん、お腹空いた」と言う。

その一言で長年の行き違いの全ては氷解し、老母はそそくさと蒸籠を開けて中の餃子を差し出すのである。
老いた乗客が、自分の母親の母親であると知って驚きを隠せない幼い娘に、老母は「おばあちゃんだよ」と声を震わせるのであった。

全編iPhone 11 Proで撮影

撮影したのは、『ジョーカー』の撮影監督ローレンス・シャー。ドローンやジンバルなどの器具は使っているものの、全ての映像はiPhone 11 Proを使い、高感度・高機能な専用カメラなどは使っていないという。

メイキング動画はこちらから。名匠の創意工夫をお楽しみあれ。

Shot on iPhone 11 Pro — Chinese New Year — Making of ‘Daughter’ with Director Theodore Melfi

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Appleは、たびたびこのiPhoneで撮影された短編映画を公開する。中国を舞台に、旧正月のシーズンに合わせた作品が多いのは、米国での中国人クリエイターが多い影響なのか、巨大な市場としての中国への配慮なのかはわからないが、故郷への郷愁や、いくつになっても自分を心配してくれる母親からの愛情の深さに気づかされるきっかけを描く作品ばかりで、わずか数分の映像ながら、強く心を揺さぶられてしまうのである。

iPhoneのカメラ性能を実証するための、商業的な試みのもとに作られる作品≒広告であることは間違い無いのだが、やはり良い作り手による作品には、それだけの完成度と切れがあって、それらは確かに芸術と呼んで差し支えない出来なのだ。

それはまさしく、弘法筆を選ばず、と思わざるを得ない素晴らしさ、なのである。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。