2011年公開(日本公開は2012年)の、スティーブン・ソダーバーグ監督作品。中国から発生したと思われる新型ウィルスが旅行者を介して世界各国に伝染していく。現在のCOVID-19パニックを彷彿させる、いまだから観る意味がある一本。
監督も一流なら、キャストもマット・デイモン、マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウなど一線級のスターを集結している。

無知は一番恐ろしい。本作を観て、前線で必死に闘う医療関係者たちへの感謝と応援の気分を持とう

本作を観ると、大発生したウイルスへの警戒心が高まるのはいうまでもないが、それよりも、実際に起こり得るフェイクニュースなどによるパニックへの備えや、最前線でウイルスと戦う医療従事者・専門機関などの苦労またはその実態を知ることができるという、基本的な知識の獲得が可能であるという点が、何年も前に公開された“古い作品である"本作を今観ておくポイントだろう。

感染症を引き起こす原因となる細菌とウイルスの違いや、初動で注意すべき点(例えば、当該ウイルスがどのくらいの感染力を持つかを示す指標としての基本再生産数(R−0)など)を理解できるのも良い。無知であることは、知り得た情報の真偽がわからず、いたずらにパニックを起こしやすくする。本作を見れば、新型ウイルスがどのように発生するのか(かつ、その発生を完全に止めることはできない、という事実)を知り、その感染の仕組みや、少しでもダメージを下げるための考え方などを知ることは、常に起こりうる災厄への備えになる。リスクは、予め算定して対策を講じていれば過度に恐れることはないのである。

本作と同じように、ウイルス感染による恐怖(≒バイオハザード)を描く作品は数多くあれど、本作はその対策の実態(必要なプロセスや、注意点など)を丹念に描いている点で、恐怖を煽ることに主軸を置きがちな通常のパニック映画の作りとは異なっている。その意味で少々地味であるのだが、今我々が置かれている状況を考えれば、その地味さが真のリアルさにつながって、色々と思い起こされることは多いだろう。

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。