Netflix でシーズン1を観了。主人公 竈門炭治郎(かまど たんじろう)が家族を鬼の大ボス 鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)に惨殺され、鬼の殲滅を目指す非公認組織 鬼殺隊の隊士となるところから始まる。無惨によって鬼に変えられてしまった妹 禰豆子(ねずこ)を人間に戻すことをモチベーションとする炭治郎の奮闘ぶりが描かれる大人気コミックのアニメ化作品だ。

本作は10代〜20代にかけて大ブレイクしている。そのゴシックホラー的要素が大受けしているうえ、鬼でありながら兄とともに人間の庇護者となる禰豆子の妹キャラは、COVID-19の影響が続かなければ2020年のハロウィンコスプレシーンの人気独占は間違いないと思われる。

鬼滅の刃の世界観とは

本作の舞台は大正時代(これも新しいといえるポイントだろう)。
日の光を苦手とするため夜しか活動できないものの、不老不死の肉体を持ち人肉を主食とする怪物である鬼は、始祖である鬼舞辻無惨によって 少しずつ数を増やして、人間を襲っては喰い殺していた。
そんな鬼たちを密かに退治し、鬼舞辻無惨を倒すことを使命とする秘密組織が鬼殺隊だ。

帯刀は許されない時代だが、鬼は太陽光を浴びるか、日の光を湛えた特殊な鉄で作られた刀で断首されない限り滅することがないため、隊士たちは日本刀を携帯する。

鬼は人智を超えた体力と妖術を持つので、隊士たちはそれに対抗するための技術として、全身呼吸と呼ばれる特殊な呼吸法を学び、剣術との組み合わせで鬼を倒す、という設定だ。

隊士たちは干支に因んだ序列があるが、それらを超えた横綱的存在は柱と呼ばれている。

主人公の竈門炭治郎は、幾多ある中で1つ、水の呼吸を身につけ、その呼吸法によって成立する剣の型を使いこなすが、鬼舞辻無惨の側近=十二鬼月(一種の使徒のような存在)に打ち勝つにはまだ未熟である。
十二鬼月は上弦と下弦の6人ずつに分けられており、過去100年もの間、上弦の鬼に勝てた人間はいない。

炭治郎は上弦の鬼たちを撃ち破り、鬼舞辻無惨を倒すために柱の域を目指すが、その過程の中で亡き父から教わった別の呼吸法“ヒノカミ神楽”(またの名を日の呼吸)にこそ、無敵の鬼たちに対抗する術があるのでは?と考え始める。

『鬼滅の刃』は少年ジャンプ発の作品だが、同じジャンプ出身で、しかも太陽を忌み嫌う怪物に生身の人間が戦いを挑むという設定では、今なお大人気のコミック ジョジョシリーズ(ジョジョの奇妙な冒険)を思い出す。
ジョジョでは、鬼ではなく吸血鬼という設定だが、無惨に相当するような首魁としてはディオ・ブランドーがいたし、太陽光で倒せるという設定から、ジョジョでは波紋と言って 太陽の光の“波”を体内に再現するために特殊な呼吸法を使い、その状態で打撃を加えることで陽光を浴びたと同じ効果を敵に与えて倒すことになっていた。
(ジョジョが人気を勝ち得たのは、この波紋シリーズではなく、そのあとの可視化された超能力=スタンド を中心とし始めてかららしいから、若年層では波紋を知らない人も多いだろう)

ただし、日光に弱いという弱点は同じながら、鬼滅の刃では 呼吸法はあくまで隊士に通常の人間を超える体技を与えるための、一種の気功のようなものであって、鬼退治に直接結びつくものではない。
筋が通っていないことが嫌いな僕としては、“太陽光をたっぷり湛えた特殊な鉄を鍛えて作るという)鬼滅専用の日本刀”で首を斬る、という殺し方と、特殊な呼吸法や剣の型、という隊士たちの武技に論理破綻があるのが気になるが、世間的にそんなことを気にしている人はいないようだ。
結果として、昨今大人気となっている『ワンピース』や『キングダム』『進撃の巨人』などを抑えて、2019-2020年のNo. 1コミック作品としての地位を確実にしているのが本作なのである。

原作の連載は既に完結していることに好感

僕が観了しているNetflixのシーズン1では、柱の登場と、上弦の鬼たちと鬼殺隊の激突の予告で終わっているが、原作の連載は既に終わっており、単行本においても最終巻の発売が近いとのことだ。
人気が出ると、辻褄が合わなかろうが連載を伸ばして長寿化しようとするのが世の常なところを、きりのいいところで(人気絶頂のところで)スパッと終わらせるあたり、僕は好意的に見ているが、その終わり方を確認したわけではないので、ストーリー全体への評価を下す資格はまだない。

ただ、さすがと思えるのは、そのキャラ作りで、駆け出しの正義の味方が、そのポテンシャルの高さと努力で、自分より上位の敵を倒していく、そしてその過程で自分を遥かに超える存在の先輩戦士(本作で言えば 柱)の共感と協力も勝ち得ていくという、少年ジャンプではお得意のパターンでありながら、そのやり方が実に洗練されているという点だ。

妹想いの兄であり、誰に対しても(自分たちを殺そうとしていた鬼相手でさえも)憐憫の気持ちを捨てられない心優しい少年を主人公とし、それぞれに欠点をもちながらも 克服していく仲間たちなど、観る者が感情移入がしやすいキャラを数多く揃えている。
人気が出るのも当然なのだろうと思わせる、正しい作り(そして正しい終わり方)をもって成立している作品だと思う。

呼吸法取得のためにマスクをしている(嘘)

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。