こんにちは、恐竜おねえさんこと生田晴香です。ティラノサウルスってかっこいいですよね。欲しくなりませんか?ぬいぐるみなどのグッズではなく、本物のティラノサウルス全身骨格の化石を。「なかなか買えるものではないでしょ!?」と突っ込みが来そうですが、実は今年その化石を買えるチャンスがあったんです。

連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部

ティラノサウルス・レックスがオークションに登場

恐竜の中でも代表的かつ人気No. 1を誇る超肉食恐竜ティラノサウルス・レックス。在庫番号「BHI 3033」で知られる愛称“スタン”の全身骨格実物標本が、2020年10月ブラックヒルズ地質学研究所からオークションハウス『クリスティーズ(ニューヨーク)』にてオークションにかけられました。

クリスティーズでの紹介ページ↓

ティラノサウルス自体は、約50体と他の恐竜に比べて化石がたくさん見つかっています。中でもこのスタンは地層でつぶされた際のゆがみが少なく、約6割以上も化石が見つかっているティラノサウルスとして認知されています。

「パーフェクト・スタン」で有名ですね!知らない方はこの機会に覚えておきましょう。

日本では、国立科学博物館や北九州市立いのちのたび博物館で展示されていたり、夏休み中などに開催される恐竜展でもよく見かけるので、レプリカ全身骨格を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。

全長約12メートルとかなり大きく、すごい迫力があります。とにかく素晴らしく美しく、かっこいいの頂点です。誰にも文句は言わせません!

…おっと、先ほどからスタンスタン言ってますが、なぜ“スタン”と呼ばれているのかというと、発見者であるアマチュア古生物研究者のスタン・サクリソン(Stan Sacrison)さんに由来しているそうです。1987年、アメリカ合衆国の中西部にあるサウスダコタ州にて発掘されました。(ティラノサウルスの発見自体は1902年になります)

そんなスタンが、冗談ではなく本当にオークションに出されていたんです!!

何億円?何十億円!? 一体いくらになったと思いますか?

クリスティーズの予想では8億はするのではないかと予想されていましたが、はたしておいくらになったのでしょう…!?

ちなみに、以前ティラノサウルスの“スー”もオークションに出されたことがありましたが、博物館がマクドナルドとディズニーと協力して落とし、総額約10億円という結果でした。

皆さんも欲しいですか?欲しいですよね。。わかります…お金があれば…。こういうときになんで自分は買えそうもない人間なんだろうと悲しくなります。

オークション結果は…!?

値段は上がる上がる…!!

お金があれば欲しいですもんね、わかります。

最終的にはロンドンからの2名(代理人)による競争だったそうで、

な、ななななんと…29億円にもなりました!!

手数料入れたら約33億6千万円になります。

恐ろしい金額に跳ね上がりましたね。自分の貯金額では到底オークションに入り込めません。手数料でさえ億〜ですからね…震えます。

どんな人が落としたのでしょう。

実は謎に包まれています。どこかの博物館ではなく個人での購入だったそうですが、買った本人が公表してないのです。現段階で公表しないのか、これからも公表する予定はないのか、自分の家でいつでも鑑賞できるようにコレクションで買ったのか、不明です。

もし自分が買ったらたくさん自慢してしまいそうですが、気になりますね…。もしかして、2度とスタンを見ることができなくなってしまうのか!? 一体どうなるのでしょうか。

もし購入された方が独り占めしたいとかなら困ったものですが、博物館に貸し出しをして研究者がいつでも研究できる状態であればありがたいですね。

レプリカの製造権は、ブラックヒルズ地質学研究所が引き続き保持しているそうなのでこれからもレプリカは作れますが、研究となるとやはり実物を見たいところです。

ティラノサウルスが好きで買ったならティラノサウルスのためになるようにしてくれればいいのですが、買った本人の自由ですからなんとも言えません。

あれ、なんだか暗い話に…

値段を聞いただけでも興奮しますよね。ここまで値段上がるとは、さすがティラノサウルス!その一方で行方はいかに?問題も勃発です。

そもそもなぜ競売に?

スタンはブラックヒルズ研究所の系列であるヒルシティ博物館に長年展示されていたのですが、なぜオークションに出されることになったのでしょうか。

どうやら兄弟間でのトラブルがあったようです。

ブラックヒルズ研究所は家族経営で、兄弟を中心にやってきていたのですが、ブラックヒルズ研究所の株35%を所有する弟ニール・ラーソンさんが研究所を訴えたことから事件始まりました。

ラーソンさんは事件の3年前には取締役を解任されていたのですが、それに対して研究所の財産を売却して自分の持ち株分を支払うよう命じたのです。

「スタンを売りニールさんに和解金を支払うこと」を裁判所は命令し(個人的にその裁判官にすごく話が聞きたい)、今回のオークションが行われたそうです。

スタンを手放すことになってしまうほどの兄弟喧嘩…ニールさんは何をしでかしていたのかなど、それぞれの話が気になりますね。

ブラックヒルズ研究所の公式表明↓

ニールさんの兄ピーター・ラーソンさんとロバート・ファーラーさんはブラックヒルズ研究所を継続していくそうです。

実物スタンが見れる日がやってきますように…

ではまた次回お会いしましょう〜!

生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。

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