本作では、古くさい“保守的”政治家が、持ち前の調整力と交渉力を駆使して、突然理想主義のリベラルな政治家から託された遺志の実現に尽力していく姿を描いている。
たまたま理想家の側にいた人物を再評価しようと言われても困る、というのが本作への感想なのだが・・・
実際には、黒人公民権法の成立に成功したジョンソンは1964年の大統領選挙には圧勝するものの、すぐに支持率を下げてしまい、1968年には出馬さえしない。(1968年の予備選で活躍したのはジョンソンと不仲であったロバート・ケネディだが、志半ばで彼もまた暗殺の憂き目に遭う)
親ケネディ派を公言している僕にとっては、リンドン・ジョンソン大統領を評価しようという感覚さえ起きないので、本作の意義や意図にまったく共感できないのだが、理想だけでは物事は前に進まない、清濁併せ持つ実務家の助けが必要だ、という話であれば、まあ確かにそうだと頷かざるをえないかもしれない。
実際、理想家は実務家をバカにし、実務家は理想家を夢想家と非難するという図式が一般的だから、両極端の考えを持つ者同士のコラボを待ち望む声が、本作の企画を通したのだと思ったりもする。理想主義者の熱い想いに共感して手を貸す実務家がいれば、確かに話は早そうだからだ。
しかしながら、やはり僕の考えでは、いわゆる実務家の数は多く、(スタイルだけではなく、その実現に命をかけてくれる)理想主義者は数少ない。偽物が多いので本物を見抜くのはかなり難しいし(単なる 危ない原理主義者である可能性も高いし)、理想家はものすごく脇が甘そうだけど(だからケネディ兄弟も、坂本龍馬も 織田信長?もシーザーも暗殺されていると言えるか?)、それでも信念に殉じようとする真の理想家こそを待ち望み、評価したい。
たまたま現れた“運の良い”実務家にスポットライトを当てるのもいいが、それに感動している余裕がない、というのが本音なのである。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。