日本酒界の権威と称されている杜氏 農口尚彦氏。日本酒好きならば、一度はその名を耳にしたことがあるだろう。美酒の宝庫と称される加賀の國 石川県にて、なぜ農口氏は杜氏になったのか。杜氏になるまでの苦難から、日本酒造りに対する想い・今後目指していきたい目標について話を聞いた。

石川県 農口尚彦研究所とは?

──農口尚彦研究所は、どのような酒蔵なのでしょうか。

「2017年11月に開業した新しい酒蔵です。研究所という名前は、後継者育成も念頭においたネーミングです。オーナーからは自分の技術を次世代に繋いで欲しいと言われています。孫ほど年の離れた蔵人たちと一緒に酒造りを行っています。

また、世界中から来た来訪者をおもてなしするためのテイスティングルームも併設しています。私は下戸でお酒が飲めません。今までお客様の意見を聞きながら酒造りを行って来ました。蔵の外で行われるイベントに参加しても、全員にお酌して感想を聞きます。そんな杜氏は他にいないと思いますよ。」

──加賀の國 石川県での日本酒造りについて、お聞かせください。

「私は、27歳で杜氏になってからずっとこの石川県で酒造りを行なっています。昔から寒造りといって、日本酒は寒い冬に造ります。今は冷蔵設備が整っていますが、雑菌の少ない環境で酒造りを行うため、寒い環境が必要でした。全国的にも石川県が寒い地域ですから、必然的に日本酒造りにも適している言えます。またお水も霊峰白山からの伏流水を使ってお酒を造っていますから、私にとって良い条件なのかもしれません。」