「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」とは?
1993年にアメリカで発売された世界初のトレーディングカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング(以下、マジック)」。30代後半から40代前半の方にとっては馴染みのあるゲームではないだろうか。マジックをきっかけに日本でもトレーディングカードゲームブームに火がつき、「ポケモンカードゲーム」や「遊戯王OCG」「デュエル・マスターズ」など人気作が誕生した。
マジックは強大なクリーチャーを召喚したり、強力な呪文を唱えながら、対戦相手のライフを0点にするなどの勝利条件を満たすことを目指すものだが、今回デジタル版として登場した「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ(以下、MTG アリーナ)」は、直感的な操作や迫力あふれる演出、世界中のプレイヤーと即座に繋がれるマッチングシステムなどを採用することで、紙のマジックとは一味違うプレイ体験を実現している。
すでに世界中の数々のeスポーツ競技イベントに採用されているMTGアリーナは、現在、基本プレイ無料のWindows PC用が展開されており、2019年冬には将来的なEpic Gamesストアでの配信、ならびにMac OS版のリリースを予定している。
いまや収益額 約1200億円、観客者数はのべ3億8000万人規模までに拡大しているeスポーツ市場(※)において、トレーディングカードゲームは「コレクタブルカードゲーム(CCG)」としてその成長の一端を担っている。
※調査会社NewZoo調べ
2020-21年シーズンは総額1,000万ドルを超える賞金とプレイヤーサポートを提供するというMTGアリーナが、今後さらにeスポーツ市場・CCG領域で存在感を強めていくことは間違いないだろう。
ロジカルな思考、冷静な判断、折れない心。マジックに必要なスキルはビジネスパーソンにも通ずるものがある
MTGアリーナのローンチにあわせ、世界中から集められたトッププレイヤー32名からなる「マジック・プロリーグ(以下MPL)」に所属する八十岡選手に話を聞くことができた。
マジックとの出会いは中学生のころだったという八十岡選手。「その頃はカードショップなど遊べる場所が増え始めている時期で、ショップへ行けば仲間と会える環境にありました」と当時を振り返る八十岡選手は、純粋に遊びとして楽しみながらスキルを磨いた末、競技マジックに進出。2006年には年間最優秀選手「プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」および「Magic Online プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」の称号を得た。2019年7月時点での獲得賞金は420,265ドル=約5,000万円にものぼるという。
「もちろんゲーム自体も楽しいですが、“出会い”にも大きな魅力があると感じています。日常生活ではなかなか親しくなれる機会がない人でも、マジックという共通言語のおかげで自然と仲間になることができます。意外と偉い人だった、なんてこともあれば、世代の異なる人たちと交流することも。また、生活環境の変化でゲームから遠ざかってしまう人も、ふいに戻ってきてくれたりします」
思いがけない人間関係を構築し得るというマジックだが、八十岡選手いわく、マジックが上手い人と仕事ができる人には共通点があるという。
「まず、マジックは戦術をロジカルに考え、組み立てる必要があります。局面での臨機応変な対応を求められるため、自分の状況を素早く把握し、冷静に判断する力も求められます」
マジックはカードの相性など実力だけでは埋められない、いわば運も大きな鍵を握っているという。「どんなに強いプレイヤーでも、勝率は60-70%程度なんです。自分がどんなに完璧にやっても勝てない試合もあります。それが受け入れられるかというのはとても重要です。理不尽だと嘆いたり、敗北を引きずって立ち直れずにマジックから遠ざかるか、残りの20-30%を引いても割り切って先に進めるか。強くなるには精神面も求められます」
また、輝かしい成功を勝ち取っているように見えるビジネスパーソンも、その背景にはさまざまな挫折や学びを経ているはず、とマジックとの共通点を分析する八十岡選手。さらに、マジックの試合では10時間にも及ぶ長期戦となるケースもあるため、体力と集中力も欠かせない。
今回の「MTG アリーナ」の正式ローンチで、気軽にマジックの世界を体験できるようになった。ビジネスで鍛え上げた頭脳と精神力をお持ちの方は、ぜひその能力をマジック界で披露していただきたい。