ブランドホイールのなかでも高級品で知られるBBSジャパンは、詐欺グループにとって格好の標的であり、同社は長年偽造品対策に取り組んできた。
今回お話を伺ったのは、偽造品問題の最前線で指揮をとる田中康博さん。
これまでどんな偽造品があり、どのような対策を講じてきたのか。実例を元に紹介いただいた。
経営戦略本部 本部長の田中康博さん
BBSジャパンにて長年偽造品の撲滅に取り組んできた田中さん。これまで流通の監視、違法業者の摘発など、さまざまな対策を講じてきた方で、偽造品問題の実態をもっともよく知る人物である。
BBSを悩ませた「885」ブランド
「日本での流通こそほとんどないですが、1990年代に世界で出回りはじめた“885”が、BBSブランドにとって偽造品問題のはじまりかもしれません」
“885”は、フィンランドのVannetukku社が立ち上げたブランドで、BBSホイールの海賊版を制作している。
数字の「885」は書き方によっては「BBS」と酷似しており、赤いエンブレムと相まって消費者の見間違えを誘発。
ホイールデザインはもちろん、商品名などもBBSブランドの製品を彷彿とさせるようなもので、長年消費者を混乱させてきた。
2017年1月27日、フィンランドで行われたVannetukku社との法廷闘争にドイツBBSは勝利し、裁判所はVannetukku社に、885の商標使用禁止と賠償金を命じたが……。
「あくまでもそれは氷山の一角に過ぎません。885のロゴをつけたホイールは現在も出回っています」
885問題の根幹は「BBS」を謳っているわけでなく、あくまでも「885」という別ブランドというところにある。裁判によっては、読み方がまったく違う(ビービーエスとエイトエイトファイブ)ため問題はない……なんて判決が出たことも。
日本での流通はほとんどない……とのことだが、なんと最近日本でVannetukku社が「885」の商標を登録しようとしたとか。885問題の解決はまだまだ先になりそうだ。
ネット社会になって広まる被害
BBSジャパンの製品はすべて鍛造ホイールだが、やはり偽造品も鍛造製法で作られているのだろうか。
「日本で出回っている偽造品は、鍛造に見せかけた鋳造品が多いですね。なかには鍛造で作られたものもありますが、今のところ一部のサイトでしか見たことはないです。とはいえ、鋳造品でも一見しただけでは見分けがつかないと思います。鋳造による実際の偽物がこちらです」
田中さんが見せてくれたのはBBSジャパンの人気ホイール『LM』の偽造品。本物はアルミ鍛造の2ピースだが、こちらは鋳造で作られた1ピースホイールとなっている。
実際に現物を目の前にすると別物であることは明白だ。まずはロゴのチープさ。下写真を見てもらえば一目瞭然だろう。
他にも、製品自体の色ムラ、鍛造ではありえない重さ、謎の傾斜……裏面を見れば2ピースでないこともすぐに分かる。
さらに極めつけは、ご丁寧に「MADE IN CHINA」の刻印も。
とはいえ、偽造品を販売しているサイトでは細部の写真はなく、表面写真だけの場合がほとんど。消費者としては偽造品か否かを判断することは困難だろう。
「偽造品問題は、2000年頃にインターネットが普及してから拡大しました。欲しい製品が世界中から探せて、ワンクリックで購入できる。便利な世の中だからこその弊害ですね」
偽造品の大半は中国産で、中国のECサイト「タオバオ」や「アリババ」、「JDモール」ではかなりの数が出回っているという。
BBSジャパンではさまざまなサイトの巡回を行っており、偽造品を見つけ次第削除を行っているが、やはり時間が経つとまたアップされる……というのが現状だ。