人生の目標は、ゴールとは何か?その問いに明快な回答を持つ者は少ないのではないか?
本作のヒロイン、モリー・ブルーム(ジェシカ・チャスティン)は映画の冒頭で、実にわかりやすい答えを口にする。人生の目標は勝つこと。誰に勝つか、何で勝つかは関係ない、とにかく勝つことだと。
五輪代表を目指すスキープレーヤーからポーカー賭博の胴元となった実在の女性の数奇な人生を描いた本作だが、悪徳にまみれた野心家の挑戦と挫折、ではなく、男性優位な社会に真っ向勝負を仕掛けた女性が、いかに偏見や差別に耐えて闘ったかという軌跡に強く共感できる作品だ。

モーグル競技のアスリートが踏み込んだ新たな世界とは

主人公のモリーは、子供達に文武両道を強いる厳格な父親のもとで、五輪出場を目指すモーグルスキーのプレイヤーとして育てられるが、不慮の事故によって引退を余儀なくされる。
ロースクールに進んで法律家を目指す道もあったが、彼女は父親への反発からLAでの一人暮らしを選び、偶然の出会いからアンダーグランドでのポーカー運営に関わるようになる。

映画スターなどのセレブが集い、一夜で大金が動くさまをつぶさに目撃した彼女は、独学でポーカーや、一流の金持ちが集まるその空間の管理者としてふさわしい知性や振る舞いを身に着けるが、それはやがて彼女のやり手ぶりに対する男たちの嫉妬を生むことになる。
嫌気がさしたモリーは、独り立ちし、華やかな女性スタッフで固めたポーカークラブの経営者として生きていく道を選ぶのである。

米国の司法では、賭博ポーカー自体は合法の範囲であるが、その運営で手数料をとるととたんに違法となる。設立当初はポーカーに興じる参加者たちから得るチップ(それでも一晩で数千ドルにはなる)だけを収入源としていたものの、負けが込んで借金を重ねるプレイヤーが多くなると、ポーカークラブの運営者としてその返済を肩代わりしなければならないリスクを背負うため、モリーは徐々に強いプレッシャーにさいなまれるようになる。結局、彼女はドラッグでストレスを解消しながらも、ゲームからの手数料をとりはじめ、そのためにFBIに逮捕され、全財産を没収される憂き目に遭うのである。

数年間の努力によって勝ち得た資産を奪われるだけでなく、禁固刑を課せられるかもしれない中で、最悪の事態を免れるためにモリーは優秀な弁護士を雇おうとするが、世間にはびこる「悪女」「ポーカークイーン」といった汚名を着せられた彼女を弁護しようとする弁護士はなかなか現れなかった。
果たして彼女は、その身に降りかかる火の粉を払うことができるのか。

セレブ専門の秘密ポーカークラブ運営という、ややグレーな夜の世界で生きることを選んだ女性アスリートが、その優秀さや美しさゆえに男たちから受ける悪意や、無邪気なまでの世間からのバッシングに、健気に立ち向かう様を描く、意欲作。
ヒロインを演じるのは名女優ジェシカ・チャスティン。監督・脚本は『ソーシャル・ネットワーク』でその名を轟かせたアーロン・ソーキンだ。

画像: 『モリーズ・ゲーム』 TVスポット youtu.be

『モリーズ・ゲーム』 TVスポット

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画像: 『モリーズ・ゲーム』 ジェシカのセクシードレス七変化 youtu.be

『モリーズ・ゲーム』 ジェシカのセクシードレス七変化

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汚水の中で清浄を保つ難しさ

本作は、違法ではないものの非常にグレーゾーンにあるといえる、超富裕層向け秘密ポーカークラブの運営者となった1人の女性の半生を描いている。
それだけを見ると、正直 身分不相応な野心を抱いた人間が短期間で絶頂と没落を味わう様を描くステレオタイプ的な作品と思いがちだが、本作はそれとは大きく違っている。
そもそもヒロインのモリーはまともすぎるほどまともな人間で、世間や周囲が抱く悪女的イメージとは程遠い。カジノの運営者で相当なやり手、しかも美女と聞けば、金の亡者だったり私利私欲の塊であったり、成功のためなら色仕掛けも辞さないという印象を受けがちかもしれないが、彼女は刺激的なファッションやスタッフを全員美女で固めるなど、女性としての武器の威力は理解しているものの、あくまで運営スタッフと客という関係を崩すことはなかったし、色恋沙汰も徹底的に避けた。反社会組織からの干渉も断固として拒否したことはもちろん、客の個人情報をお金に変えるようなことも一切しなかった。
逮捕される原因となったゲームからの手数料摂取やドラッグの使用の事実はあったものの、基本的にはグレーな世界にあってもクリーンな生き方、いうなればアスリートのようにルールやマナーを守って成功を目指したのである。

逆に、彼女を悪女と誹り、陥れようとしたのは彼女の初期の支援者であったり、客であったり、ショバ代を要求しようとする反社会的組織の男たちだった。また、彼女が持っているであろう多くのセレブたちの個人情報に興味を持ち、彼女に司法取引をもちかける検察側であった。

本作は、その舞台こそ非合法な匂いを放つグレーな世界であったものの、その中で正々堂々勝利を得ようとした女性の挑戦を描いた作品である。

彼女がポーカーゲームの世界に入るきっかけやその経緯はもちろん作中で描かれるが、基本的には逮捕されてから、彼女がいわれない悪評に耐えながらも、自らが決めた(客やスタッフの立場を守ろうという)一線を必死に守ろうとする強い姿勢を我々は見守ることになる。

ちなみに、映画の冒頭で、20代前半で実社会に踏み込んだばかりのモリーの一人がたりとして前述のような「人生のゴールは勝つこと」という人生観が示され、ポーカーゲームの世界に積極的に入っていく彼女の生き方のベースとなるが、最終的に世間からの評判や司法との対決の中でそれがどのように変化していくのか、もしくは変化はしないのかはわからない。それは本作を実際に鑑賞した人が各々考えることだろうと思う。

蛇足になるが、モリーを育て、彼女の人生に大きな影響を与えることになる厳格な父親役をケヴィン・コスナーが演じているのも本作の大きな見所の一つである。

画像: 【ゴールは勝つこと?】『モリーズ・ゲーム』で描かれる、男性社会に真っ向勝負をかけた女の生き方とは

小川 浩| Hiro Ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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