28勝26KOのデービス(28歳 米国)と23勝19KOのガルシア(24歳 米国)の無敗同士の対決
米国ラスベガスで実現した夢の一戦。
破壊力抜群のパワーパンチと高いテクニックを誇る2人の次世代スタージャーボンテイ・デービスとライアン・ガルシアが実現を危ぶむ声を圧してついに激突した。
ジャーボンテイ・デービスは 1994年11月7日生まれの28歳。ライアン・ガルシアは1998年8月8日生まれの24歳。30代が君臨する現代のボクシングシーンでは若手と言える存在の2人だが、知名度人気ともにすでに絶頂と言える。
デービスは三階級を制覇し、ガルシアはSNSでは世界的な人気を誇るうえに、暫定とはいえWBC世界ライト級の王座を獲得したこともある実力者だ。
ただ、正直なところ、本当にこの2人の試合が実現するかどうか かなり心配だった。いつのまにか真の激戦区になりスーパースターないしその候補たちがひしめくライト級において、無敵を誇る2人の試合がそんなに簡単に実現するのか?という思いはもちろんあったし、それ以上にリンク外でのヤンチャな私生活で有名なデービスが試合前に何かやらかす可能性はあったし、メンタルの問題を抱えていると言われるガルシアのほうにも、急なキャンセルをしかねるだけの憂いは打ち消せなかったからだ。(まして試合前の下馬評ではデービス有利が囁かれていた)
しかし、2人は試合前の激しい口撃の交換を経て、無事対戦の実現に漕ぎ着けたのだ。
この試合の注目度の高さは、リングサイドを眺めてみればすぐわかる。2万を超える観客の熱気はすごいが、その中に世界ミドル級チャンプとスーパーウェルター級のチャンプのチャーロ兄弟(双子)や、元ヘビー級王者のマイク・タイソン、無敗のまま引退したメイウェザーらの姿をすぐ発見できるし、ゲストとしては90年代の中量級黄金期を支えた名ボクサー シュガー・レイ・レナードも元気な様子を見せている。
プレッシャーをかけ続けるガルシア、カウンターを狙うデービス
デービスは、容姿やソーシャル周りでの人気では デービスを上回る ライアン・ガルシアだが、ライト級、いやボクシング界 屈指のスーパーテクニシャンと言われるバジル・ロマチェンコが倒しきれなかったロンドンオリンピックのバンタム級金メダリスト ルーク・キャンベル(英国)を7ラウンドTKOで下すなど、その実力は折り紙つき。特に左フックのキレと威力には定評があり、その呼び水を作る左の高速ジャブも正確性と威力を兼ね備えているという評判だ。
ガルシアはそのジャブを中心に、スロースターターのデービスに強いプレッシャーをかける。
試合開始早々から鋭いジャブから繰り出すワンツーや(まっすぐ繰り出す右ストレートに、時折強い打ちおろしのような強打を混ぜ)、破壊力抜群の左ロングフックでデービスを攻め立てる。
アップライト気味に構えながらも前に出るガルシアの鋭い攻撃を、ブロックしながら後退するデービスだが、巧みなフットワークやクリンチで、コーナーに追い込まれることは避けた。
2ラウンドにダウンを奪ったデービスが、7ラウンドにKO勝ち
デービスはそのヤンチャぶりとは似つかわしがらぬ試合巧者だ。試合前半は相手をよく観察し、その力量を計る。
デービスと言えば、そのアグレッシブさとパンチの強さばかりが取り沙汰されるが、彼は非常なテクニシャンでもある。ハンドスピードは類を見ない速さだし、一気に間合いを詰めるフットワークの良さはパッキャオ並みだ。(そのパッキャオが、試合前のデービスを見舞っていた)防御は、常にガードを高く上げ堅く守っているうえ、巧みなスリッピングアウェイもみせる。攻撃面では今さらいうまでもないが、非常にパワフルなうえ、上下の打ち分けやコンビネーションも巧みで速い。
慎重な戦いぶりを見せるデービスだが、ひとたび相手が組み易しと見極めるやいなや、その強烈なパンチを振い始める。
逆に言えば、前述の通り、敵の生きたデータを分析し終わるまでは、相手の出方をみる消極的な戦い方をする、スロースターターぶりを見せるのである。
そんな様子見を続けるデービスが、あまり手を出してこないことをチャンスと見たのか、業を煮やしたのか、ガルシアは2ラウンドに入ると攻勢を強め、強打を振い始めた。
上背のある(174cm。対するデービスは166cm)ガルシアは振り下ろすように強打をデービスに叩きつけるが、デービスはクリンチやブロックを巧みに使い、直撃を許さない。逆に、焦ったガルシアが繰り出した得意の左フックを避けたと同時に、繰り出されたデービスの左ショートパンチがガルシアの顔面を捉え、ガルシアが勢いよく尻もちをついた!
ライアン・ガルシアからすると、キャンベルに奪われた以来二度目のダウンだったが、幸いあまりダメージはなさげで、すぐに立ち上がった。
ただ、不用意なパンチへのカウンターに懲りたのだろう、このダウンの後はプレッシャーはかけ続けるものの、手数は減り、カウンターへの警戒心を露わにする。
一撃で相手を倒せるパンチを持つ強打者同士の闘いは,スリリングではあるも、前に出るガルシアに対して様子を見ながらカウンターを狙い続けるデービスの図式を変えないまま、ラウンドを重ねた。
動きがあったのは第7ラウンドである。
頭部の刈り取りを狙ったガルシアの強打に対して、右ボディを狙ったデービスのカウンターが強かにヒットする。
精神力の弱さ?を見せたガルシア、の敗北
レバーに強打を喰らったガルシアは、ヒットの直後は少し耐えたものの、デービスの連打を恐れたのかリングフロアに膝をついた(ダウンになる)。レフェリーがカウントを取る間、ガルシアは耐力の回復を待つが、戦意を失い、そのままカウントアウトされた。ライアン・ガルシアとしては、初黒星がKO負けとなったわけだが、見ているだけの身としては、ここは踏ん張って立ち上がって欲しかった。
賢いガルシアからすれば、デービスにはパンチ力・テクニック・肉体の頑健さ全てにおいて勝ち目がないと感じたのかもしれないが、ここは死ぬ気で立ち上がり、壮絶な敗戦を繰り広げてもらいたかった。
この試合で彼は、ファイトマネーとペイパービュー配分とで少なくとも20億円近いギャラを得るのだから,それに見合う根性を見せてもらいたかったのである。
諦めが早すぎんじゃねえの、おまえ?と文句を言いたくなったのは僕だけではあるまい‥‥。
スーパースターへのドアを開いたのはデービス
いずれにせよ、勝ったデービスには、私生活でのトラブルによって阻害されない限り、次戦は 5月に行われるであろう ヘイニーVSロマチェンコ の勝者とのスーパーファイトになると思われる。
そして、これにも勝てばデービスは正真正銘ライト級におけるスーパースターとして、カネロを超える栄誉を与えられることだろう。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。