自動車専門誌Motor Magazineスタッフが、2000万円越えスーパーカー取材で感じたあれこれを独自目線でご紹介。今回は、メルセデス・ベンツが誇るスポーティラグジュアリーライン「メルセデスAMG」が初めて独自開発した、4ドアサルーンに遭遇した。これがまた凄いんです。(写真:小平 寛)
※本連載はMotor Magazine誌の取材余話です。

はじめに。スターウォーズ×アディダスコラボがカッコ良すぎて。

「スター・ウォーズ」のシリーズ最終話と言われるエピソード9「スカイウォーカーの夜明け」が公開中だ。
そのタイミングに合わせるように、アディダスが「スター・ウォーズ」コレクションを矢継ぎ早にリリースしている。

2019年10月末からの第一弾シリーズ名は、「ライトセーバーパック」。NBAヒューストンロケッツ所属のスター選手ジェームズ・ハーデンとのコラボシューズに独特の輝きをまとったパープルカラーのモデルなど、数点を発売した。

そのパープルは、エピソード1から3まで、サミュエル・L・ジャクソンが演じたジェダイの長「メイス・ウィンドゥ」のライトセーバーカラーをモチーフにしている。

以来、第二弾「スペースバトルパック」、第三弾「キャラクターズパック」とラインナップは増えている。中には明らかにお子様向けデザインもあるけれど、基本的にどれもクールでカッコいい。しかもそうとう目立つ。

そんなコラボイメージが脳裏に焼き付いていたせいかもしれない。メルセデスAMG GT 4ドアクーペの広報車を初めて目にした瞬間、率直に思ったのだ。

これ、スター・ウォーズ・コラボじゃね?

はるか宇宙の彼方から、「インペリアル・マーチ」が聞こえてくるような気さえした。正式には「The Imperial March (Darth Vader's Theme)」という。フォースのダークサイドに魅入られたダース・ベイダーのテーマ。

オタキング岡田斗司夫が勝手に作詞した日本語版?はSFヲタなら知らない者はたぶんいない。
「てーいこくは〜とーても〜つーよい〜」
普通の人は、おそらく知らない。

4ドアなのにクーペのシルエット。真横から見ると、その流麗さが際立つ。

要はそんなドマイナーな名曲をついつい思い出してしまうほどに、目の前の4ドアサルーンの佇まいにはインパクトがあった。

他を圧倒しひれ伏せさせるかのような、強烈なフォースをまとっていたのだ。それもダークサイドの……。

これ、まんまダース・ベイダーじゃね?

流麗なクーペデザインを、AMGのゲノムが知的にかつ猛々しく書き換える。

フロントエプロン下、人間で言うところのアゴの部分には、走行状態に合わせて開閉するルーバーが設定される。

無理くりだが、話を車に戻そう。

昨今のメルセデス・ベンツ・デザインは、「Sensual Purity」という哲学が貫かれている。日本語に訳せば「官能的な純粋さ」。
チーフデザイナー、ゴードン・ワグナーの提唱するその意味は深すぎて、一言で説明するのはとっても難しい。とはいえ、つまりはそこにメルセデス・ベンツというブランドが想い描き探し求める、美しい未来像の理想が定義されているのだと思う。

もちろんAMGの系列も、そのフィロソフィーをデザイン展開の基盤としている。その上で付け加えているのが、「AMGらしさ」というスパイスだ。
これがなかなか味わい深い。美食のアイコンのひとつ「旨辛」さながらに、病みつきになる。

AMG GT 63 S 4MATIC+は、基本的には「クーペ」らしい流麗なシルエットの持ち主だ。同じ4ドアでも、一般的な「セダン」に比べてもより伸びやかで豊かな量感を表現している。そこに「シャークノーズ」とか「ジェットウイング」といったAMG独自のデザインゲノムが加わると、一気にメタモルフォーゼを遂げることになる。

何しろそのゲノム、自己主張がとっても激しい。

ともすれば「官能的な純粋さ」がひっくり返ってしまったかのように、「とことん純粋な官能性」に向けて細胞分裂を促進していく。完成形は、ご覧の通り、だ。

ちなみに4ドアクーペ系のほかのラインナップには、「Aウイング」というデザイン言語が用いられているという。変なところでまたもや、スター・ウォーズと縁があった。