自動車専門誌Motor Magazineスタッフが、2000万円越えスーパーカー取材で感じたあれこれを独自目線でご紹介。今回は、メルセデス・ベンツが誇るスポーティラグジュアリーライン「メルセデスAMG」が初めて独自開発した、4ドアサルーンに遭遇した。これがまた凄いんです。(写真:小平 寛)
※本連載はMotor Magazine誌の取材余話です。

本当の「未知との遭遇」は、そのダイナミックパフォーマンスにあった

画像: 本当の「未知との遭遇」は、そのダイナミックパフォーマンスにあった

ルックスに「スター・ウォーズ」のインパクトを感じた後でいざ走り出してみれば、AMG GT 63Sのパフォーマンスはまさしく「未知との遭遇」だった。ルーカスとくれば、やはりスピルバーグだろう。

なにしろパワートレーンのスペックからして、多くのドライバーにとって未体験ゾーンであることは間違いない。

「M117」と、これまたどこかの星雲のような宇宙に縁がありそうな呼称がつけられた4L V8DOHCツインターボからして、未知のテクノロジーが満載だ。

「鍛造アルミニウム製ピストン」はかろうじて引っかかるけれど、「NANOSLIDE摩擦低減加工」「ホットインサイドVレイアウト」などは、わかるように解説すればそれなりに文章量が長くなる。

画像: Comfortモードで走行中に作動する気筒休止機能を装備。環境性能にも配慮している。

Comfortモードで走行中に作動する気筒休止機能を装備。環境性能にも配慮している。

最高出力639psという数値はもちろん刺激的だが、900Nmの最大トルクはもっと興味深い。ぶっといトルクが絞り出され続ける2500〜4500rpmは、普段の街乗りでも普通に使う回転域だ。つまり普通にアクセルペダルを踏んでいれば、常に力強い加速を堪能することができるわけだ。

この「普通に」が、今回のテストドライブでもっとも印象的な、AMG GTの走りの魅力だった。

毎日サーキットを走ることは、おそらくないだろう。けれどAMG GTなら、毎日走っている道でも心踊る走りを堪能することができる。圧倒的なトルクはFRでは手に余りそうだが、先進の4WDシステムによって見事に御されている。シフトダウン時に自動的にブリッピングしてくれる機能など、9速ATの変速ぶりもスポーティな気分を盛り上げてくれる。

かつてのAMGモデル、とくにビッグパワーを本領とするモデルの中には、それに対応するためにボディを固めまくり、足回りのセッティングも恐ろしくスパルタンな仕様が少なからずあった。けれど、そんなイメージももはや過去のものだ。

テクノロジーとして語るなら「AMG RIDE CONTROL+ エアサスペンション」が、おそらく「とびきりいい仕事」をしている。

コーナリング時だけでなく加速、減速時にも四輪のダンピングを瞬時に最適化してくれるこのシステムのおかげか、体感される乗り味はフラットだ。しかもカドが少ない。

画像: ラゲッジフロア部にCFRPを使用して軽量化。ボディ補強も徹底している。

ラゲッジフロア部にCFRPを使用して軽量化。ボディ補強も徹底している。

もうひとつ、「普通の」走りを支えてくれるテクノロジーとしてスポットを当てておきたいのは、「AMGリア・アクスルステアリング」だ。

電動アクチュエーターによって、後輪のタイヤを正位相、逆位相にわずかに切るこのシステムは、高速走行時には安定性を増し、街中では回転半径を小さくしてくれる。
「取り回しがいい」ことの安心感は、全長5mを超える大柄なサルーンにとって、重要なセールスポイントとなるだろう。

なにしろ2000万円を楽に超える高級車なのだ。それにふさわしい洗練された乗り味は不可欠。4枚あるドアをしっかり使いこなし、パッセンジャー孝行することができるのは嬉しい限りだ。

AMG GTの場合、テストドライブを通して遭遇した「未知」はけっして呆れるほどの速さだけにあるのではない。

普段の「道」での乗り心地や使い勝手にも、しっかり配慮されていることに驚かされた。

これなら、ラグジュアリーサルーンとして選んだとしても、後悔することはおそらくない。

まとめ。なんだ、やっぱり……。

画像: インテリアの艶っぽさもまた、AMG車の魅力だ。

インテリアの艶っぽさもまた、AMG車の魅力だ。

そのルックスからてっきり、ダークサイドバリバリのイカツさだけが「魅力」なのか、と思ってしまったのだけれど、メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+は、実は「いい人」だった。
強烈なトルク=フォースの力を振るって他を圧倒するだけの存在かと思ったら、実は深い優しさをその走りに秘めていた。

たとえるなら、それは「父性」。

なんだ、やっぱりダース・ベイダーじゃね?

メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+
主要諸元●全長×全幅×全高=5050×1955×1445mm/ホイールベース.=2950mm/車両重量=2130kg/乗車定員=5名●エンジン=V型8気筒DOHCツインターボ/総排気量=3982cc/ボア×ストローク=83.0×92.0mm/圧縮比=8.6/最高出力= 470kW(639ps)/5500〜6500rpm/最大トルク=900Nm/2500〜4500rpm/燃料・タンク容量=プレミアム・80L/WLTCモード燃費=7.7km/L/トランスミッション=9速AT/サスペンション形式=前4リンク・後マルチリンク/タイヤサイズ=前265/40R20・後295/35R20/ブレーキ=4輪Vディスク/ボディカラー=グラファイトグレーマグノ●最高速度=325km/h以上/0→100km/h加速=2.9秒/車両価格=23,970,000円

試乗車装着オプション【オプション価格... ... 3,537,000円】..........フルレザー仕様(AMGパフォーマンスパッケージ<AMGパフォーマンスシート、マットブラックペイント21インチAMGクロススポークアルミホイール>を含む)469,000円、Burmesterハイエンド3Dオーディオパッケージ601,000円、AMGカーボンパッケージ1,243,000円、AMGカーボンセラミックブレーキ1,019,000円、マットペイント205,000円

画像2: AMGが誘う、4ドアサルーンのめくるめくダークサイド

神原 久|Hisashi Kambara
Motor Magazine誌など自動車雑誌の編集者としてはや30年が経過。「寄り道」と「回り道」が好きで、自動車以外にも五輪写真集や美人アスリート本、外国人ジャーナリストの文化論的単行本など、さまざまなジャンルの媒体編集を担当。特技はバレエ。趣味はゴスペルとバドミントン、配信動画鑑賞。

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