豊富な知識と経験を持ったプロショップをご紹介する本連載。今回は、速さを求める人たちがこぞって集うチューニングショップ・MCRに直撃インタビュー。ドライバーでありチューナーでもある小林真一さんが思うBBSホイールの魅力とは?

チューニングショップ・MCRの軌跡

ストリートからサーキットまで、走りに魅了された者たちが“最速”を求めて訪れる場所。それが千葉県柏市にあるチューニングショップ「MCR」だ。

画像: 常磐自動車道・柏ICよりクルマで4分とアクセス至便な場所にあるMCR

常磐自動車道・柏ICよりクルマで4分とアクセス至便な場所にあるMCR

代表を務めるのは、ドライバーとして数々の伝説を残し、チューナーとして多くのユーザーから信頼を得ている小林 真一(こばやし・しんいち)さん。

乗り手として磨かれた感性をチューナーの有する知性で形にする──どちらかに特化しがちな世界で、“どちらも妥協しない”という道を進んできたスペシャリストである。

画像: MCRの代表でありドライバー兼チューナーの小林 真一さん

MCRの代表でありドライバー兼チューナーの小林 真一さん

MCRと聞くと、やはり思い浮かぶのは“GT-R”ではないだろうか? 日産車に関して一家言ある同店は、GT-RやZのデモカーを製作しており、これまで数々のメディアに取り上げられ、その美しさと速さは多くのユーザーを魅了してきた。

そんなデモカーにはBBSホイールが履かれている。聞けば、これまで数多くの製品に触れてきた小林さんが最後に行きついたホイールがBBSなのだとか。

画像: こちらはGT-R[R35]。手がけたデモカーはどれも「究極」の2文字が似合うものばかり

こちらはGT-R[R35]。手がけたデモカーはどれも「究極」の2文字が似合うものばかり

今回は、MCRの軌跡と、ドライバーとチューナーという2つの目線から見たBBSホイールについて話を聞いた。

やるからにはプロに。妥協を知らない男・小林真一

まずはMCRを立ち上げた経緯について少し掘り下げていきたい。

小林さんがクルマに興味を持ったのは意外にも遅く24歳のとき。きっかけは、当時精力的に行なっていた波乗りで海に向かう道中、とんでもなく速いクルマに出会ったこと。

「根拠はないんだけど、当時からなぜか運転には自信があったのよ。俺は速いんだって。それが峠で覆っちゃってね。世の中にはあんなに速いヤツがいるんだって……」

何事も突き詰めるタイプの小林さんは、波乗りでプロを目指していた。しかし、毎日海に通える地元のプレイヤーと比べると練習量の差は明白。どうしたものかと悩んでいるときに遭遇した“速いヤツ”。そのときの衝撃は、小林さんの心を動かした。

画像: やるからには本気。やるからには勝つ!そうして何事も突き進んできた

やるからには本気。やるからには勝つ!そうして何事も突き進んできた

「さっそく韋駄天ターボ(スターレット EP71)を買って、走り屋の集まりに参加したのさ。そしたら結構いいところまでいけちゃうわけ。それで『なんだ、オレいけんじゃん!』って錯覚しちゃったんだな(笑)」

猪突猛進、ドライバーとしてメキメキと力をつけていった小林さん。クルマもAE92のスーパーチャージャーに変わり、さまざまなレースを経験していく。そのうち愛車のパワー不足に直面。自分でターボをつけることに。これがチューナーとしての始まりだった。

「他の奴らはお店に出すんだけど俺はお金がなくてね。だから自分でやるしかなかった。でもただ付けるだけじゃ勝てないから、試行錯誤しながらも本気でちゃんとやるわけだよ。そのうちコンピューター制御なんかもはじまって、それも自分でやりはじめた。で、何回もエンジンを壊した。でもそうやって続けていくと、何がどこに影響してくるのかってのがだんだんと分かってくる」

当時の仕事は自身で立ち上げた空調屋。自社倉庫でクルマいじりを続けながら毎晩走りに行く。そんな折、仲間内で小林さんの仕上げたクルマの評判が広まり、いつしかチューニング依頼を受けることに。

「なんやかんや片手間じゃ捌けないような量の依頼がきちゃってね。個人だとパーツを仕入れるのも大変だったから空調屋自体は社員にゆずって、チューナーを本業にしたんだ」

そうして生まれたのが、チューニングショップ「MCR(Matchless Crowd Racing)」だ。ネーミングの意味は“レースで負けない群集”。小林さんがクルマに興味を持ってからショップの開業まで、わずか4年足らずであった。

苦しいながらも得たことが今につながっている

チューニングショップとして店を構えるほどだからクルマいじりが大好き……と思いきや、小林さんは「全然好きじゃないしまったく楽しくない!」とキッパリ。さらに「もうすべてが苦しい」と笑いながら語る。その心は?

「何事も楽しいのは最初の3ヶ月だけ。やりはじめると全部本気になっちゃうから、そこから先はもう地獄だね。勝つためにどうすればいいのか、どうやったら速くなるのか、そればっかり考えて“楽しい”なんて気持ちはわいてこないんだよね」

画像: 「もうこれは俺の性格だからどうしようもない」と笑う小林さん

「もうこれは俺の性格だからどうしようもない」と笑う小林さん

しかし、この小林さん自身が苦しいと感じながらも長年実践してきたことこそ、他の誰もが真似できない部分だろう。何をどうしたらクルマの挙動が変わるのか? 自分でステアリングを握り、すべて自分で確かめてきたからこそパーツひとつひとつがもたらす影響が分かる。

最近では、各パーツメーカーから「うちのドライバーにクルマの考え方を教えてほしい」なんて依頼も増えてきているとか。

「レーシングドライバーってクルマのポテンシャルを引き出す能力はあるんだけど、どうすればいいクルマになるか?っていうメカニカルの部分が分からない。パーツテストや開発時に感覚で『ダメです』って言われたってどうしようもないからね。何がどう作用していくのかっていうのをイチから教えないといけない。自分で走って自分でいじっちゃう方がほんとは楽なんだけどなぁ」

そうぼやきつつ笑う小林さん。今後も多くのメーカーやユーザーが、小林さんの知見を求めてMCRを訪れることだろう。

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