日本のカルト的SFコミック『銃夢』を原作に、ロバート・ロドリゲス監督で実写化。
アクションも派手だし、原作へのリスペクトも感じる、なかなかの力作。

300年前に失われた高度な技術で造られたサイボーグ少女「アリータ」

地球と火星連邦共和国(URM)の没落戦争(ザ・フォール)から300年後。世界は空中都市"ザレム"と、雑多な民族や機械化されたボディを持つサイボーグたちがともに暮らす地上の荒廃した都市“アイアンシティ"に分断されていた。

そんなアイアンシティでサイボーグたちのパーツ修理を生業にするサイバー医師イドは、ザレムから廃棄される屑鉄の中から、破壊された一体のサイボーグ少女の上半身を発見する。持ち帰って修理して再生に成功したイドは、彼女をアリータと名付けて自分の家に置くが、実はこのアリータこそは、300年前の没落戦争で活躍した最強の人型兵器なのだった。

画像: 『アリータ:バトル・エンジェル』7.31先行デジタル配信/9.11ブルーレイ&DVDリリース youtu.be

『アリータ:バトル・エンジェル』7.31先行デジタル配信/9.11ブルーレイ&DVDリリース

youtu.be

文明再興中のディストピアに暮らす人間たち

本作の大筋、イドの手によって復活を遂げるものの記憶を失っている少女型のサイボーグ兵士が、徐々に記憶と自らのアイデンティティをとりもどしていく、というものだ。そして、ザレムに住む謎の敵が、彼女の身体に隠された高度な技術を狙って彼女を襲撃し、戦ううちに記憶をとりもどしていく。

そもそも住民のうちのかなりの割合でサイボーグが存在するアイアンシティにあって、アリータがサイボーグであっても誰も驚かないし気にもしない。
ブレードランナーなどで描かれるのと同じ、混沌の中で不思議なバランスで危うくも安定しているように見える秩序が存在する。政府のような存在があるのかはわからないが、警察に近い組織はある。管理社会ではなく、危険と貧困に囲まれながらもある程度の自由はある、人々が耐え切れないほどではないディストピアなのである。

反面、地上で暮らす人々には、その暮らしぶりは謎ながら、まだ見ぬ天国を見上げるように憧れるのが、没落戦争後も唯一生き残った空中都市ザレム。生きてはいけるものの、生活が好転していく見込みや希望を持てるわけでもないアイアンシティに閉塞感を覚える者は、実際に見上げれば目に入るザレムにいつか移り住むという夢を胸に抱き続けるのだ。

日本のコミック原作映画としては及第点以上の出来

本作は20年以上に刊行された日本の漫画を原作として製作された。
テーマとしては、圧倒的な貧富の差と、文字通り天地の差がある、ザレムとアイアンシティの激しい格差の間で苦しむ人々が、生きる意味を求めて戦う姿を描いており、本作もそのテーマを明確に踏襲している。

日本のコミックを実写化した映画は幾多もあるが、国内で制作されたもののほとんどは原作の出来をスポイルしかねない、拙作が多いというのが世間の評判であるように思うが、本作は(原作そのものが古くて知らない人もおおい、ということは割り引いたとしても)ストーリーもCGも十二分に予算と時間をかけて作られており、上出来な作品に仕上がっていると思う。
日本でこのくらいの作品を作れるようになってほしいと思うと同時に、近い将来においても ハリウッドのクリエイターたちが日本の漫画へのリスペクトを失わないでいてほしいと強く願っている。

画像: 『アリータ:バトル・エンジェル』で知るハリウッドからのジャパニーズコミック愛

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

This article is a sponsored article by
''.