トム・ハーディ主演のクライムサスペンス。
控えめで穏やかな雰囲気の中に、ただならぬ気配を忍ばせるバーテンダーを好演。

原題は『THE DROP』

舞台はニューヨーク・ブルックリンの小さなバー。オーナーはチェチェンマフィアであり、麻薬取引などで得た現金を一時的にプールするために使われている。(この行為は"Drop"と呼ばれる。そのため、それを行うためのバーをドロップ・バーと呼ぶ)

主人公のボブは、バーを任されている従兄弟のマーブとともに このバーで働くバーテンダーだ。(マーブはもともとこのバーのオーナーであったが、チェチェンマフィアの圧力に屈して、このバーを明け渡した過去を持つ)
10年前に失踪した友人を偲んで集まる客たちに酒を奢ったり、ゴミ箱に捨てられていた犬を見捨てられずに持ち帰って飼うなど、その行動は穏やかで心優しい。

しかし、ある時バーの売上を狙った押し込み強盗に襲われても落ち着きを失わず、強盗が身につけていた腕時計が故障していることを記憶する冷静さを持っている。さらにその腕時計ごと切り取られた強盗の腕が、バーのゴミ捨て場でみつかっても豚足でも扱っているかのような自然さでそれを処理する彼の行動は、普段の大人しく物静かな言動を、かえって薄気味悪いものにみせてしまうものだ。

物語は、このバーにプールされるマフィアの金を狙った強奪計画の進行と、ボブの静かな日常を脅かす出来事のクロスオーバーの中で、ボブの心に潜む闇の衝動がどう発現するかを描く形になっている。

設定はまるで違うが、現在公開中の『ジョーカー』に似て、一見普通に見える人が案外暗い素顔を隠していることの恐ろしさを描いている点、共通していると思う。

トム・ハーディが闇を抱えながら日常生活を淡々と送る男を好演

本作は、計画的に犯罪に手を染める男たちと、真っ当な暮らしをしながらも暴力的衝動を潜ませる男をの双方が描かれており、全体としては非常に淡々としたモードで進む。

舞台はバーの中か、犬を連れてボブが訪れる公園や、犬を見つけた時に知り合った女性(ノウミ・ラパス)の家の付近で、あくまで普通の日常生活を感じさせる空間だけだ。
そしてその中で働き、犬の散歩をさせるボブの姿も、静かに生きる市井の男の姿そのものだ。

トム・ハーディ(注)は身長175cmで、ガタイはいいがさほど大きな人ではない。本作の役どころも、なんの変哲もない、洒落た感じもないアウター(ジャンパーとしか言いようがない)を着込む、およそ平凡な姿だ。
強盗、マフィア、麻薬取引の熱い金など、暴力の香りが渦巻く中にあって、静けさを保ち続ける男を、実に巧みに演じている。

(注)実は僕の今のイチオシスターは、トム・ハーディなのだ。

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画像: 『クライム・ヒート』が描く、大人しそうな奴が1番怖いという1つの真実

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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