任務とはいえ、家族や友人達にも素顔を隠して日常生活を送る男の激しいストレスを表現した、スリリングでハードボイルドで小気味いい作品だ。
潜入捜査官の憂鬱な闘いを描いた佳作
舞台はラスベガス。ジェイミー演じるヴィンセントは汚職警官のレッテルを貼られながらも職務に忠実な潜入捜査官。
偶然25キロものコカインを入手してしまったばかりに、息子を人質に取られてしまう。
コカインをマフィアに返せば息子は助かるが、彼を疑う公安の刑事(ミシェル・モナハン)が介入することで事態はややこしいことに。
タイムリミットは24時間。負傷しながらも必死で息子を取り戻そうとするヴィンセントは孤軍奮闘するが・・・。
誘拐された子供を取り戻そうとする父親を描いている点ではリーアム・ニーソンの『96時間』に似たプロットだが、ヴィンセントがそれほど強くはないことで、よりリアル感が増している。また、息子を取り戻そうと奮闘する現場はカジノ客であふれるラスベガスのホテルの中だけで、それは『ダイ・ハード』の第一作を思い起こさせる設定でもある。
原題は『SLEEPLESS(スリープレス)』。
ジェイミー・フォックスのナチュラルな演技が冴える一級アクション
ジェイミー・フォックスは『ジャンゴ』『ベイビー・ドライバー』など、それなりにヒットした作品への出演が途切れない、いい俳優なのだが、日本国内での人気はかつてのそれと比べるとだいぶ下火になっている気がする。少なくとも知名度は、相当に落ちている。
なぜだろうと思っていろいろ調べてみたが、なにかきっかけがあるわけでもない。最近でこそアナ雪や、アベンジャーズシリーズ、『ジョーカー』などのヒットで洋画人気が復活しているが、ここ数年は邦画ブームでハリウッドへの関心が総じて低かったから、その影響があったのかもしれない。
いずれにしても、アクションも歌唱力も、当然演技力も一級のジェイミーは本物のスターであり、本作は彼の魅力を十分に引き出していると言える。
極秘の潜入捜査ゆえに家庭崩壊を招いた刑事の深い憂鬱と苛立ちを、ジェイミーは実にナチュラルかつリアルに漂わせているし、任務の影響で16歳の息子が誘拐されると、誰にも頼らずに1人孤独な闘いに身を投じる彼のヒリヒリとした緊張感の表現も見事だ。
本作の制作陣は、どうやらシリーズ化を狙っているらしいが(エンディングあたりでその意図がわかるw)、どれだけのヒットになったのかはわからない。ただ、主人公ヴィンセントの不実を疑う女刑事を演じたミシェル・モナハンとの絡みは全般通して 今作では比較的間接的で、次回はもっと密接したバディムービーを作る余白がある。
僕としては、こういうスリリングでシンプルなアクション映画は結構好きで、脚本の鋭さとシンプルさは高評価。できれば続編も観たいものだが、はてさて。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。