2020年1月公開の映画『フォードvsフェラーリ』を先行試写会で堪能してきた。
観終わったら、いや、始まった瞬間から胸のエンジンはレッドゾーンまで回り始めること請け合いの最高のドラマだ。

実話ベースのレース映画の決定版

本作は、1966年のル・マン24時間耐久レースで常勝フェラーリに挑み、見事初優勝を遂げた米国フォードモーターの偉業を題材とした、実話ベースの作品だ。

事前情報では、タイトル通りル・マンを6年連続で制していた、絶対王者フェラーリに戦いを挑む男たちを描いた映画と受け止めていたが(確かにそうなのだが)、実際に鑑賞してみると、純粋にフェラーリ対抗の挑戦というよりは、官僚主義に陥っていた大企業のために働く中小企業(傭兵部隊)の苦悩を描いたような作品だった。大きなプロジェクトで大企業に発注を受けたことのある下請企業で働く人なら、かなり身につまされることだろう。

物語の前半では、販売不振のフォードに足りないのはレースでの勝利と看破する切れ者として、リー・アイアコッカ(のちにフォード社長に登り詰めるが、その後ライバル企業のクライスラー会長に転身)がフォードの重役を目指す野心家の1人として登場し、存在感を放つ。(後半は強い官僚主義の圧力の前に精彩がなくなるが)

当時のフォードの社長は創業者ヘンリー・フォードの孫であり二代目社長だが、時として強いリーダーシップを見せるものの、やはり重役たちの(内向きの)進言を聞くとすぐ日和る。
フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリが経営者というよりも芸術家肌の気難しさと強い信念の人と描かれているのに対し(同じく純粋なレーサー気質のマイルズとの、相互のリスペクトの交換は感動的だ)、フォード2世はやはりおぼっちゃま的な脚色である。

そんなフォードのオーダーを受け、官僚主義に抵抗しつつもビジネスマンとしてクライアントの意向を無視できない難しい立ち回りをするのは、米国人として1959年に初めてル・マンを制した元レーサーであり引退後カーデザイナーとして名声を得ていたキャロル・シェルビー。
シェルビーは、優秀だが気難しいエンジニア兼レーサーのケン・マイルズとともにル・マン制覇のために尽力するが、フォードからの圧力からマイルズを庇うために相当なエネルギーを消費させられる。

このあたりは、一本気で純粋なエンジニアと、合理的・功利的な投資家の間で苦労する起業家の姿を見ているようで、やはり身につまされる笑。

7000回転(RPM)でぶん回せ!

作中、当時のレーシングマシンのエンジンは現代のそれとは違い、7000回転(RPM)からレッドゾーン、つまりそれ以上は回すと危険(エンジンが焼き付いてしまう)とされている。

しかし、シェルビーは7000回転に達すると(レーサーが見ている)景色が一変すると語り、マイルズも勝利のたびに限界までエンジンをぶん回そうとする。マシンを壊すことより、限界に挑戦せずに敗北することを恐れるのだ。

その意味でこの映画の中で、無理、無謀と思われる挑戦に果敢に挑む男たちの熱い魂は、この7000回転というエンジンの回転数を突破することに象徴されているというか、隠喩されていると言えるだろう。

実際、お坊ちゃん的気質で、やや低めの扱いになっているフォード二世にして、エンツォ・フェラーリから(所詮二代目。初代とは違う、と)バカにされたことで発奮し、フェラーリをル・マンでぶちのめせ!と社内にゲキを飛ばすあたりは、なかなかに胸熱なシーンなのだ。その時の彼のハートビートは間違いなく7000回転だったはずだ。

そして、観ている僕たちのハートもまた、同じく7000回転を目指して熱く回り始める。

男なら(失礼、向上心や野心を抱くならもちろん女性でも、子供でも老人でも)この映画を観て、自分の限界を超えて何かに立ち向かう気概を燃やし、胸のエンジンを7000回転まで回そうと思うはずだ。

死人でも墓場から立ち上がるだけのエネルギーを与えてくれる、そんなすごい映画なのだ。

画像: 『フォードvsフェラーリ』を観て、ハートを7000回転(RPM)でぶん回せ!

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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