ポケモンの世界観そのままに
本来は言葉を交わすことができないはずの人間とポケモンだが、主人公のティムはなぜかピカチュウの話す言葉を完全に聞き取ることができる。しかも、ほかの人には可愛い声で「ピカピカ」と鳴いているようにしか聞こえないピカチュウの声は、ティムにとっては中年男性の、老獪で可愛げのない話し方(演じているのは、デッドプールでお馴染みのライアン・レイノルズ)だ。
ここに最後に明かされる謎が隠されているのだが、そもそもポケモンを全く知らない(あえていうと、ポケモンGOで少しかじったくらいの知識しかない)僕にとっては全てが謎w。
本作は、観ている人は全員ポケモンワールドを理解している前提で作られていると言える作品だ。
人間とポケモンが完全に共存している夢の都市ライムシティ以外でも、野生のポケモンが存在し、彼らを捕まえるために使うモンスターボールも登場する。ポケモントレーナーといった多少は聞きかじったことがある用語も出てくる。ポケモンにハマった世代には、すぐに入り込める世界観が用意されていると言えるだろう。
(ゲームではおなじみなのだろう、オリジナルキャラ レッド?として竹内涼真も登場する)
反対に、知らない人にはちょっと唐突にポケモンワールドに連れてこられて戸惑ってしまうのであるが。
なにせポケモン(ポケットモンスター)が一体なんなのかという説明もないし、いつどこでどのような形で人類と遭遇したのか?という説明も一切なし。そんなことは言わなくてもわかってるよね?ということらしい。
とはいえ、ポケモンに詳しくなかったら面白くないか?と言われたらそんなことはない。
さすがに長年続く、日本発、世界に広まったIP(知的財産)だけあって、よくは知らなくても多少は知っているわけで、かじった程度の生半可な知識しか持っていなくてもすぐに作品に入り込めるからだ。
日本発のライツビジネスとしては、成功といえる?
ライムシティーを作り上げた大富豪役には名優ビル・ナイ、失踪したハリーの友人であり街の警護役であるヨシダ警部には渡辺謙が配役されていて、B級扱いではないことがすぐに察せられる。
本当は日本の資本、制作体制でハリウッドの役者を使って配給するべきだと思いはするが、日本の原作、世界観が欧米でも受け入れられているというコンセプト発信はできている、ライツビジネスは成立しているということで、とりあえずは良しとすべきところだろうか。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。