そんなとき、遊びにやってきたヒトシが不審な車を見かけて・・?
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第51話「三つ丘をこえて」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@dino.network編集部
監視者の影を突き止めた松ちゃん
このところ、警察に呼ばれたり弁護士に相談したりと、とにかくヘトヘトだ。
元妻のケイ子が私の名前を使って方々に借金をこしらえているのだ。もちろん私には身に覚えがないし、離婚した女が作った借金を肩代わりするいわれもないのだが、それらが私には関係ないものだと証明しろと言われるとそれはそれで困ってしまう。これは犯罪じゃないのか??
そのうえ、私は最近四六時中見張られているような感覚に襲われていて、とにかく落ち着かない。どちらも元妻の嫌がらせかもしれないが、いずれにしても物理的にも精神的にも私は疲れ果てていた。
そんなとき、譲り与えた私の元愛車(SR)に乗った気楽な大学生、ヒトシがやってくるなりこう言った。
「脇道にさぁ、クルマいたけどこの時期に山菜かねェ?」
それで私はピンときた。そいつだ、と。
ヒトシ!と私は彼に声をかけた。「メットとジャケットかせ!!麦わらかぶって焚火するんだ」
「え?どうした」と訝しげな顔をするヒトシを急かして、私の身代わりを仕立て、私はヒトシのフリをしてSRにまたがった。
監視者を発見する松ちゃん
私はヒトシが停車しているクルマを見たという場所にSRを走らせた。果たしてそこには一台の四駆が停まっていた。息を忍ばせ、足音を立てないようにクルマに近付くと、クルマの影にバカでかい望遠レンズをつけたカメラと小太りの男が陣取っていた。
見張るってなに??なんのために??
わたし、リナ。本人は知らないと思うけど、松ちゃんに恋しちゃったこじらせ女子だけどなんか文句ある?
今日もバイクで松ちゃんの棲家にやってきたら、松ちゃんとヒトシが知らないおじさんを囲んで難しい顔してる。お客さん!?と思ったけど、違ったらしい。
ヒトシが立ち上がってこう言ったのよ。「こいつ、俺たちを見張ってたんだぜ!!」
えーっ
わたしは思わず叫んだ。
「見張るってなに?」
果たしてこの不審者の正体は?雇い主は?目的は??
当の松ちゃんは「不気味な気配の正体がわかっただけでも十分だ」なんて言ってるけど???
楠 雅彦|Masahiko Kusunoki
湖のようにラグジュアリーなライフスタイル、風のように自由なワークスタイルに憧れるフリーランスライター。ここ数年の夢はマチュピチュで暮らすこと。