本作はその流れを組むものであり、日本生まれのスーパースター、ゴジラ(GODZILLA)を中心にモスラ、ラドン、キングギドラ(作中ではギドラと呼ばれる)と言ったお馴染みの大怪獣を、着ぐるみによる特撮ではなく美しくも荘厳なCGによって鮮やかに蘇らせている。
アベンジャーズに続くヒットシリーズになるか、モンスター・バース
複数の異なるキャラクターの映画をクロスオーバーさせ、それら全ての作品を同一の世界観として扱う手法。代表例としてはマーベルとディズニーが大成功させたアベンジャーズシリーズ(マーベル・シネマティック・ユニバース)があるが、ワーナー・ブラザースxレジェンダリー・エンターテインメント(東宝と提携)が取り組んでいるのが、日本の怪獣映画をリバイバルしていく「モンスター・バース」。
本作は大ヒットした前作『GODZILLA ゴジラ』の続編にあたり、さらに『キングコング: 髑髏島の巨神』とクロスオーバーさせて、ゴジラvsキングコングという大花火に着火する話が進んでいるという。
マーベルの大成功を羨む映画配給会社大手たちはこぞってこのクロスオーバー戦略の模倣に動いたが、マーベルに並ぶアメコミの雄DCは『ジャスティス・リーグ』(DCエクステンデッド・ユニバース)の興行的失敗で、ユニバーサル・ピクチャーは『ミイラ再生』『魔人ドラキュラ』『透明人間』『フランケンシュタインの花嫁』『狼男』など古の怪物を用いたシリーズ(ダーク・ユニバース)を手掛けようとしたが敢えなく断念するなど、この戦略で成果を上げるのはなかなかに難しいのだが、このモンスター・バースはいまのところそれなりの実績を上げていると言える。
CGの美しさと迫力に目を見張る
本作は『怪獣大戦争』(1965年公開)をモチーフにしていると言われている。
同作は、宇宙怪獣キング・ギドラと地球オリジンの怪獣であるゴジラやラドンの戦いを描いたものだが、本作でも基本的にその設定は生きている。また、ゴジラと共にギドラに挑む巨大蛾モスラも登場し、妖艶なまでの美しさを画面いっぱいに見せつけてくれる。
日本の怪獣映画といえば、やはり着ぐるみによる特撮を思い浮かべるが、本作はあくまでCGで表現。現代の最先端技術で描かれる怪獣たちは、これまで時として滲み出ていた不自然さや、それによって偶然生まれる滑稽さや愛嬌はなく、ひたすら禍々しく無慈悲だ。
本作におけるゴジラは、異様に首が太く、その分小さく見える頭部に光る両眼もかなり小さい。古代神とも怪獣の王とも描かれるゴジラだが、知性よりは本能で行動していることが、その小さめの眼に人間的な意思が表れることがないことからよくわかるのである。
ちなみに、ゴジラの最大の脅威(ライバル)であり、ゴジラを頂点とする古代地球の覇権を簒奪しようとするキングギドラ(繰り返すが作中では単にギドラと呼ばれる)の造型は、西洋的なドラゴンと東洋的な龍の特徴を兼ね備えていて、大変美しく実に悪魔的。
日本製の キングギドラは時として不格好(胴部が太すぎる、など)になるきらいがあったが、本作の"彼"はスタイリッシュそのもの。
マッチョになり剛のイメージに振り切ったゴジラに対して、ウネウネと動く3本の長い首は、徹底して柔のイメージ。圧倒的存在感を備えたゴジラに対して、勝るとも劣らない迫力があり、逢魔の時にいると思わざるを得ない。
彼らの激突が、愛に満ちた慈愛の神と悪意と邪気を湛えた悪魔との戦いではなく、善悪関係ない、存在自体が凶々しい超古代神たちの闘いであることがよくわかるクリエイティブに、脱帽せざるを得ないのである。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。