長年勤めてきたテレビ局を辞め、自由な生活を求めてほぼ廃墟化したカフェを借りて住み着いた松ちゃん。猪をはねて竹藪に突っ込んだ女ライダーを助けたら、それがなんと行きつけのカフェ炉煎のマスターの孫だったのだが・・・
Mr.Bike BGで大好評連載中の東本昌平先生作『雨はこれから』第52話「傘売りおじさん」より
©東本昌平先生・モーターマガジン社 / デジタル編集 by 楠雅彦@dino.network編集部

苛立つ思いを振り切るように高速道路を飛ばすソノミが目を留めたのは・・・

私、ソノミ。覚えてないかもしれないけど、炉煎のマスターは私の実のおじいちゃん。
松ちゃんには炉煎でも会ったけど、その前には竹藪に絡んで身動きできなくなってたところを救ってもらった借りがあるわ。

その夜、私はアテもなくバイクを走らせていたの。まあ、いつもなんだかイライラしてて、やるせない気持ちを抱えているんだけど、その日もただバイクを走らせることで紛らわせていたわ。

画像1: 苛立つ思いを振り切るように高速道路を飛ばすソノミが目を留めたのは・・・

高速を走る速そうなクルマやバイクを見つけては、バトルを仕掛けるんだけど、大抵はほとんど勝負にならない。私がぶち抜いたら、ついて来ようともしない。気持ちはおさまらず、目的地もないままに、私は高速をただ走った。スロットルを緩めることなく。

画像2: 苛立つ思いを振り切るように高速道路を飛ばすソノミが目を留めたのは・・・

深夜の高速道路は、もう春の匂いがしていた。
だけど私には風情を楽しむ余裕はなく、ただただやるせない気持ちを後ろにおいていくためにスピードに頼っていたのだ。

そんな私は走行車線を(わたしからすれば)トロトロと、100キロ前後で流している一台のSRを追い越しながら、その背中になぜかふと引き付けられた。
何かが違う、少なくとも私とはちがう、と思った。発動機や駆動音、排気音、それに風切り音とそのすごい音と圧力の中にいるのに、そのバイクからはなにか不思議な感覚が醸し出されていたのだ。
ライダーも背中になんでもないデイパックを背負って、オシャレでもない、気負いもない、普段着以外のなにものでもない格好をしていて、特に目を引くものはないはずだった。

画像3: 苛立つ思いを振り切るように高速道路を飛ばすソノミが目を留めたのは・・・

それはあのおじさんだった・・・

ふう、と私はため息をついた。
サービスエリア(SA) に着くたびにわたしは30分以上は動けずに座っていた。疲れているわけではない、ただ気持ちの整理がつかなくて、座り込んでいたのだった。

そのとき、乾いた排気音が聞こえてきたので、顔を上げてそっちに目をやると、さっきのSRがSAに入ってくるのが見えた。トロトロ走っていたくせに、もうわたしに追いついてきてる。私はちょっとムカついて、抜かれてなるかとヘルメットをかぶると愛車にまたがった。

画像1: それはあのおじさんだった・・・
画像2: それはあのおじさんだった・・・
画像3: それはあのおじさんだった・・・

その後も、なん度も抜いては置き去りにしたはずなのに、SAに入るたびに、あのSRが目に入る。私はとうとうガマンできなくなって、ガスをいれて走り出そうとしたSRの横に乗り付けたのだった。

「ねェどこまで行く気なの!?」
私は苛立ちのまま、SRの男に声をかけた。

画像4: それはあのおじさんだった・・・
画像5: それはあのおじさんだった・・・

読者は当然先刻ご承知でしょうが、このSRのライダーは、そう、松ちゃんなのでした。

根拠のない不安と苛立ちに悩む2人の間に、果たして新しい関係は生まれるでしょうか??

乞う、ご期待!

画像: やるせないから飛ばすのさ。バイク依存症のあのコが再会したのは、ご存じ松ちゃんだった〜東本昌平先生『雨はこれから』第52話『傘売りおじさん』より

楠 雅彦|Masahiko Kusunoki
湖のようにラグジュアリーなライフスタイル、風のように自由なワークスタイルに憧れるフリーランスライター。ここ数年の夢はマチュピチュで暮らすこと。

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