小さな足=スモールフット
イエティ、別名ビッグフット。その巨大な足跡から名付けられた未確認生物(UMA)の代表格だ。雪男という呼び方をすれば日本を始め世界中で目撃談があるUMAだが、特にヒマラヤ山脈に棲むとされるのがイエティだ。ネアンデルタール人の生き残りではないか?との見方もある。
本作では、このイエティが実在し、通常の人間では生息できないほどの高地に村を作って穏やかに暮らしている。我々はイエティを“ビッグフット”と恐れるが、逆に彼らもまた高地を降りてくることが稀なために人間を“スモールフット”というUMAとして恐れている、という設定だ。
誰にでも大切にしていることがある。たとえそれが自分のものとは違っていても。
本作では、功名に逸る落ち目のテレビマンが偶然イエティと遭遇し、はじめはその巨躯と異形の姿に恐怖するものの、イエティたちの穏やかな性格や 知的生命体としての文明を育んでいることを知り、彼らの存在を実証することで再び世間の注目を集める千載一遇のチャンスを得たと喜ぶところから始まる。
しかし、その自分の功名心がイエティたちの平和な暮らしを損なってしまうことを知り、自らの行いを省みる。同時にイエティたちも、スモールフットと呼んで恐れていた謎の生物=人間が実在することを知って無邪気に喜んでいたが、異なる2つの生命体の接触がもたらす衝撃が 予想外に大きく深刻な問題を孕むことを悟り、猛烈な不安に駆られていく。
白人警官の過度な拘束行為によって黒人男性が死亡した事を端に発した人種問題を彷彿させるが、異なる価値観、容姿、文化の衝突の回避の難しさと、それらの相違を超えて融合していける可能性を示唆する作品だ。
本作では、イエティと人間は互いに独自の言語を持つが、意思疎通は容易ではない。わからないということが恐怖と誤解を生み、相互に憎悪し合うことになってしまう様子が描かれるが、同時に互いに相手が持つ長所を理解し、互いの相違点の存在を理解したうえで その違いを乗り越えていく勇気と優しさの重要性を訴えている。
自分とは違う、だから嫌う、ではなく、相手にも大切なものがあることを理解し、尊重し合うことが大事なのだと教えてくれる、心優しい作品だ。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。