弁護士としての正義と信念に殉じてきた弁護士ローマンが味わう苦渋とは。
デンゼル・ワシントンの超絶演技が、主人公ローマンの悲哀に凄まじいばかりのリアリティを与える。

妥協知らないと生きづらい

人権を守るという信念を貫いて生きてきた弁護士ローマンは、信念に忠実なばかりに融通が効かない。だから、実際の裁判での弁論陳述はパートナーに任せて、自らは裏方に徹してきた。ところがそのパートナーが急な病に斃れたことで、経営能力もなく現実と妥協する術も知らないローマンは、失職の危機に陥る。

法と正義を守る頑なな靭さと、過去の判例や法律を余さず記憶する卓抜した能力を持ちながら、時代に合わせて融通を効かせる柔軟さに欠けるローマンは、周囲の有志の人々に強い感銘を与えながらも、弁護士として生きていくうえで欠かせない重要な資質が自分に備わっていないことを痛切に自覚せざるを得ない。
そんな“挫折感”に、ローマンは自分の生き方を変えるか、信念に殉じて苦渋を味わい続けるかを迫られていく。

本作は、およそ社会性に欠ける1人の朴念仁(死語だとは思うが、こういう表現がぴったりのキャラクターなのだ)を主人公にした、ヒューマンドラマであり、いわゆる法廷物とは全く異なる作品だ。

日本では劇場公開されなかった作品

デンゼル・ワシントンは本作の演技で第90回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされたらしいが、本作自体は日本国内での劇場公開は見送られた。それだけ地味な作品なのだが、出来は良い。
劇場で鑑賞するには盛り上がりに欠ける作品かもしれないが、自宅でDVDなり配信なりでゆっくり観るにはとても良い作品だ。

デンゼル演じるローマンは、あまりに堅物、言葉を選ばず言えば変人なので、なかなか自己投影することはできないかもしれないが、己れの信条に忠実に生きる、不器用な人々に もっと愛を注ぐべきかも?という気にはさせてくれるだろうと思う。

長年裏方に徹してきた働き場所を失った彼を拾い上げる人気法律事務所の経営者役にコリン・ファレルがあてがわれているが、彼がローマンの愚直なまでの信念に影響を受けていくさまは、なかなかに心洗われる。

画像: 『ローマンという名の男』人権擁護に命を賭けてきた弁護士を襲う悲劇

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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