緊急通報指令室で電話を受ける1人の警官アスガーはある日、一本の通報を受ける。それは今まさに誘拐されているという女性自身からの電話だった・・・。
アスガーと通報者の会話だけで緊迫したストーリーを紡いでいく、デンマーク発の究極のワンシチュエーションムービー*。

* ひとつの状況(ワンシチュエーション)で物語が展開していく作品。
舞台劇に多く使われる手法であり、複数のロケが必要ないので低予算化が可能だが、巧みな演出と脚本の出来不出来が必要となることは言うまでもない。

画像: 2/22(金) 公開 『THE GUILTY/ギルティ』予告編 youtu.be

2/22(金) 公開 『THE GUILTY/ギルティ』予告編

youtu.be

ワンシチュエーションを徹底的に突き詰めた佳作

一つの設定、環境に固定したなかで物語を進めるワンシチュエーションストーリー。
例えばキアヌ・リーブスxサンドラ・ブロックの「スピード」ならばハイジャックされたバスの車内に限定されたアクションムービー(ある程度の速度を下回ると爆発するゆえに、走り続けなければならないという設定=シチュエーション)だし、ダニー・ボイル監督xジェームズ・フランコ主演の「127時間」はキャニオニングの最中に岩に足を挟まれて動けなくなる男の脱出劇だった。

シチュエーションを固定して、物語を進行させる手法は、コメディ作品に多く(日本では三谷幸喜作品が有名)、シットコム(シチュエーションコメディの略)と呼ばれることもあるが、本作はあくまでシリアスな展開で押し通し、さらにシチュエーションだけでなく撮影場所も一箇所に固定した、徹底したワンシチュエーションぶりが見所になっている。

主人公のアスガーは、女性の誘拐と思われる事件を追うことになるが、カメラの視点がその現場を映すことはなく、アスガー同様 緊急通報司令室の中で、頭の中で浮かび上がる絵面を想像しながら、彼と通話者の会話を聴き続けるしかない。
逆にいえば、本作は観客を目ではなく耳で事件の緊迫性をスリリングに伝え続けなくてはならず、難易度の高い演出と演技が必要になる。

とはいえ、冒頭にも書いたように、本作はデンマーク映画であり、会話は当然すべてデンマーク語でなされている。
ということは(我々日本人を含め)ほとんどの外国人観客は字幕を頼りに=結局は視覚でもって 彼らの会話を追わなければならず、全体としてはアスガーを演じる役者(ヤコブ・セダーグレン)の“ほぼ”一人芝居を食い入るようにみるほかない、という、ちょっと倒錯した展開に身を置かなければならないということになる、かなり不思議な体験を強いてくる映画なのである。

ストーリー

何かやらかしたおかげで諮問委員会の調査対象になった刑事のアスガーは、審議中 緊急通報司令室の電話オペレーターとして勤務している。オペレーターの仕事は、市民からの通報を受けては関係部署にパスを送るというもの。つまり事件との接点ではあるものの、捜査そのものに関わることはなく、事件の顛末については“人任せ”となるこの仕事に、アスガーのストレスは溜まる一方。早く現場に戻りたい、刑事の仕事に返り咲きたい。そんな苛立ちに苛まれながら、酔っ払いや無自覚な市民の能天気な通報の相手をしているアスガーだったが、あるとき 心拍数を一気に上げる深刻な電話を受けることになる。

それは、元夫に拉致されているらしき女性イーベンからの、救いを求める必死な通報だった。マニュアル通りに関係部署に状況を伝えるアスガーだったが、彼らの対応がビジネスライクに思われて、自分の力でなんとかしたいと考えはじめるのだった。

リメイク希望者へのライツビジネスが有望?

2021年あたまには、音声SNS Clubhouse が話題を集めたが(人気急上昇したものの、すぐに飽きられた?)、本作はまるでラジオドラマのように耳で楽しむコンテンツだ(とは言っても、前述したようにほとんどの観客はデンマーク語は解せず母国語での字幕頼りになってしまうだろうが)。

その意味で、本作は(低予算でやむなくワンシチュエーションになったのかもしれないにせよ)視覚中心の現代コンテンツ基準に対するアンチテーゼ的、画期的な作品になったと言えるだろう。

基本的に会話劇であるから、アスガー(に相当する主人公)にはかなり芸達者で長時間見続けても飽きの来ない名優の配役が必要になるだろうし、巧みな演出が重要になるだろうが、それぞれの市場に合わせた母国語でのリメイク版を作る、いや、作らせるのが制作サイドの真のビジネスチャンスになる気がする。(繰り返すが、せっかく耳で楽しむコンテンツでありながら、現状のオリジナル映画では結局字幕を追わざるを得ないからだ)

主人公を女性にしても成り立つと思うし、エンディングを少し変えてもいい気もする。
漫才コンビのミルクボーイのおかんネタではないが、それほど苦労せずに応用が効き、基本は同じだが多少の違いをエッセンスとして加えれば複数のバージョンを容易に作れる、ある意味鉄板ネタとして再利用できるだろう(面白くするには巧みな演出と演技が必要だし、すぐ飽きられてしまうかもだが)。「カメラを止めるな」に通じる、プロットの勝利を狙える作品だと思う。

画像: 『THE GUILTY ギルティ』デンマーク発のワンシチュエーションムービーで耳を澄ませ

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.