かつて全世界で社会現象を起こした傑作ミステリー小説「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ第4作目の「インフェルノ」の出版にまつわるエピソードをヒントに製作された、新時代のミステリー映画。
多くの謎を孕む、複雑なストーリー
誰も素顔を知らないベストセラー作家オスカル・ブラック。彼の大ヒットシリーズ『DEDALUS』(英語ではDaedalus、ギリシア神話に登場する名工にしてイカロスの父親 ダイダロスのことと思われる)の最新作にして完結作『死にたくなかった男』の世界同時出版の準備のため、世界中から9人の翻訳家が集められる。
オスカル・ブラックの代理人として出版を手がける出版社の社長 アングストローム(ランベール・ウィルソン)は、新作の秘密を保持するため、インターネットの接続を含めるあらゆる外界との接触を禁じ、完全隔離された地下室に彼らを閉じ込めたうえで作業を行わせようとした。
しかし、そんな作業中になぜか未発表の新作の原稿の一部がネットに流出し、アングストロームには流出を止めたければ大金を支払えという脅迫メールが届く。
そんなことができるのは、翻訳家たちしかいないと確信したアングストロームは、狂気じみた執拗さで犯人探しを始めるが、原稿の流出は止まらず、彼はついに脅迫に屈して金の支払いに応じようとするが・・・。
犯人は一体誰か? 翻訳家たちの中に犯人がいるとして、どうやって原稿の中身を知り、厳重なセキュリティを突破してその流出を行なったのか?そしてその真の目的は?
また、謎の作家オスカル・ブラックの正体は?複雑に錯綜するさまざまな謎を孕む、上質なミステリー映画だ。
ちなみに、基本全編フランス語で展開する作品のため(各国から集められた翻訳家たちがいるから、多少は英語を始め、さまざまな言語が飛び交うが)、オングストローム役のウィルソンに見覚えがあるもののなかなかすぐには思い出せなかったのだが、彼は大ヒットSF映画「マトリックス」シリーズの第二部〜三部で、マトリックス最古のプログラムの一つ“メロビンジアン”を演じていた役者だった。
因果律の重要性を説く彼の口吻があまりに見事で印象深かったのだが、本作においても、優れたビジネスマンであるが、自らのアイデアに固執する偏執的な性格の持ち主を存在感たっぷりに演じており、彼の演技力に注目しながら観るのも、本作の楽しみの一つだと思う。
(「マトリックス」第四弾=最新作の制作の話があるらしいが、メロビンジアンの再登場はあるのだろうか??)
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。