文:金子浩久/写真:田丸瑞穂(道中ショット)、永元秀和(藤原氏と同氏のオフィスショット)
※本連載は2003〜2004年までMotor Magazine誌に掲載された連載の再録です。当時の雰囲気をお楽しみください。
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ユーラシア大陸自動車横断紀行 Vol.22 〜ユーロトンネルを抜けた先〜
ユーラシア大陸横断から18カ月
いまだイギリスの地にあるカルディナ
南フランスでレクサスGS430を試乗した帰りに、ロンドンに寄った。18カ月前に東京からロカ岬まで走ったカルディナの様子を見に行くのだ。カルディナはロカ岬からパリ経由でロンドン入りしたことは前号に記した。
そもそも、なぜ、僕はカルディナというクルマを選んでロンドンに向かったのか?
これには少し説明が要るだろう。
まず、旅の準備段階で「乗って行ったクルマをどうするか」ということは、最後まで答えが見付からない大きな問題だった。
船で日本に送り返すのか。
それとも、ヨーロッパで売るなり譲るなりするのか。送り返す場合の費用の目安はイギリスの友人に問い合わせて、すぐに判明した。
ヨーロッパからの通関手数料、船賃、日本の港での通関料、およびそれらの代行手数料などが掛かる。直行便かどうか、専用船かどうかによっても値段は違ってくる。約1カ月後に横浜で受け取ると仮定すると、安くはなかった。450米ドル+税金50ポンド+ロンドンと横浜でのそれぞれの通関手数料金。10万円以内では収まらない。
でも、受け取って、どうするんだ。東京で乗るのか。
田丸さんは、仕事にも家族サービスにも活躍しているレガシィ・ツーリングワゴンを買い替えたばかりだ。僕は、TVRグリフィス500を手放したばかりだから、ちょうどいいかもしれない。
でも、どんな路面状況かわからないロシアの道を3人分の荷物を満載して走ったクルマだし、これから探さなければならない中古のカルディナがどんなコンディションにあるかもわからない。
だいいち、独身の自分の暮らしには、カルディナじゃなくたって、ステーションワゴンは不要だ。
そう思うとゲンキンなもので、カルディナを船に載せて日本に送るプランは急速に萎んでくる。カルディナには可哀想だけど、ヨーロッパに置いてこよう。予算の節約にもなる。田丸さんと相談して、そう決めた。
そのことも、イギリスの友人に国際電話で相談した。
「カネコさんさぁ、いったい、何を企んでいるんですか? ちゃんと、全部話して下さいよ」