『21ブリッジ』で観られるチャドウィック・ポーズマンの最後の勇姿

シンプルでスピーディーなストーリー

主人公のアンドレはニューヨーク市警の刑事。容疑者を簡単に射殺しすぎるという理由で内務監査を受けるのだが、優秀だが生真面目すぎる勤務態度も相まって、署内では若干浮き気味の存在になっていた。

そんなアンドレだったが、ある晩突如発生した麻薬強奪事件で、強奪犯との銃撃戦で射殺された8名の警官の所属する、85分暑のマッケナ署長（J・K・シモンズ）から直々に犯人確保の依頼を受ける。部下を殺され激昂するマッケナ署長は、アンドレに麻薬取締班の腕利き捜査官であるバーンズ刑事（シエナ・ミラー）をパートナーに据えると、犯人への速やかな復讐を2人に託した。

強奪犯の身元を割り出し、彼らをNYから出さないようにマンハッタン島を封鎖したアンドレたちは、封鎖解除時間までに犯人を捕まえるために動き出す。
（ちなみにタイトルである21ブリッジ=21 Bridgesは、マンハッタン島にかかる21の橋梁の意味らしい）

闘病生活の合間に撮影したとは思えない、チャドウィック・ボーズマンの躍動感と野生味溢れるポリスアクションストーリーは、速くて小刻みな展開が続く、非常にスピーディーな作品になっている。

早逝した役者へのレクイエム的な作品

僕はこのチャドウィック・ボーズマンという役者が好きで、割と彼の出演作は観ている。

アベンジャーズシリーズやブラックパンサーはもちろんだが、実在の野球選手やソウルシンガーを演じた『42 〜世界を変えた男〜』
『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』などでの好演で、彼の確かな演技力と端正な顔立ちに好感を持っていたのだ。

また、洗練された所作を容易に行えるしなやかな肢体や、わずかにしゃがれたハスキーヴォイスなど、スターとして目立てる良い特徴を備えた俳優だと思っていた。
（ちなみに僕のイチオシは前にも書いたようにトム・ハーディだ。トムはヴェノム、チャドウィックはブラックパンサーで、マーベルのダークヒーローを演じる共通点もあったりして、僕としては今後をとても楽しみにしていたのに）

音楽アーティストと違い、なかなか死後新たな遺作が発見されることはないだけに、本作はボーズマンの踊るようなカラダの動きを楽しめる最後の作品になってしまうのだろう。

極めて惜しいが、その思いを抱きながら本作を見ると、「ブラックレイン」における松田優作にも通じる役者や映画への怨念にも近い執着を感じて、襟を正したくなるのである。

小川 浩　｜　hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える！Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』（オガワカズヒロ共著）など20冊を超える著書あり。