年間100本以上の映画を鑑賞する筆者が独自視点で今からでも・今だからこそ観るべき または観なくてもいい?映画作品を紹介。
19世紀末に起きた、新しい文明のインフラとなる“電気”の担い手争い“電流戦争(War of Currents)”(直流=DCを支持したエジソン陣営VS交流=ACを支持したウェスティングハウス陣営との利権争い)は、交流陣営が勝利した。その勝利の立役者であり、交流電流の配電システムを考案した天才科学者ニコラ・テスラの半生を描いた作品。

電球を造ったエジソン、配電技術を造ったテスラ

天才科学者にして敏腕ビジネスマンのトーマス・エジソン。一時は彼の会社に勤めていたこともあるオーストリア(現在のクロアチア)移民の天才科学者ニコラ・テスラ。
2人は、新世紀のエネルギーインフラである電気を全米の都市に送り届けるための配電方式を巡って対立し、決別する。
エジソンは直流方式、テスラは交流方式。結局はウェスティングハウスと組んだテスラに軍配が上がるのだが、負けたはずのエジソンはその卓抜した政治力とビジネスパーソンとしての能力を活かして、高い知名度と資産を得るが、技術者としてピュアすぎたテスラはエジソンのようにうまく立ち回ることができず、没落し寂しく貧しい晩年を送る。そして21世紀にあって、テスラの名前は電動自動車会社ブランドとして残るが、その功績を知る者はほとんどおらず、マッドサイエンシストもしくは幾分オカルトめいた変人として扱われる始末だ。

本作はそんなテスラの半生を描いているが、この映画を観てテスラが変人ではなかった、というふうに認識を新たにすることはない気がする。イーサン・ホーク演じるニコラ・テスラは、描かれ方としては単に自分の天分と技術を信じるがあまり、他のことにあまり気が回らない不器用な男なのだが、見ようによってはやはりかなり変な人だ。

つまりこの映画は、テスラという人物の復権を目指したものというよりも、同名のEVメーカーの人気にあやかって、そのブランドの由来となった人物の映画化を行ったもの、という気がする。

ただ、いずれにしても、日本人にさえも絶大な知名度を誇るトーマス・エジソンをへこませた天才科学者がいた、という事実を知るチャンスには違いないし、電気というエネルギーに対する新たな興味を我々に与えてくれる機会にはなると思う。

電気を身近にしてくれた最大の恩人ニコラ・テスラ

前述のように、テスラを演じているのはイーサン・ホーク。生まじめで偏屈な人を演じさせたら右に出る者がいない?俳優さんだが、本作においても、電気に取り憑かれた孤独な天才科学者を淡々と演じている。

テスラという名前は、稀代の起業家イーロン・マスク創業の電動自動車(EV)メーカーの社名として、今では誰もが知るようになったが、その名が ひとりの科学者の名前からつけられていると知っている者は少なかろうと思う。

我々の夜を明るくしてくれたのは、電球を発明し電気を光に変える術を見出した技術者エジソンその人ではあるが、街という街に、その電気を届ける技術を考案し、開発したのは他ならぬニコラ・テスラなのだ。

本作は、先述の通り、文明開拓における恩人というより、功績はあるがすごく変な人、という印象を与えるものだ。しかし、それでも
いまの我々の夜が明るいのは、このニコラ・テスラという人がいたからであり、彼の人となりを知ることより先に、我々の文明の礎を作り上げた人として、その名前を記憶すべきではないか、と思う。そう考えれば、本作は広く多くの人に観てもらいたい作品であると考えるのだ。

画像: 『テスラ』商売っ気なさすぎた天才技術者の悲劇

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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