マイティ・ソーの弟にして北欧神話の悪戯と悪ふざけの権化の名を冠するヴィラン ロキ。サノスとの戦いで命を落とすことになる彼が彷徨い込んだタイムポケットの中で、獅子奮迅の働きを見せる、MCUの流れを汲む配信ドラマシリーズ『ロキ』。
変幻自在の魔法を使う悪戯の神ロキを主人公に据えた新シリーズ
指パッチンで全宇宙の生命の半分を消滅させようと企むスーパーヴィラン サノス。彼がもたらした破滅と再生がもたらす、“指パッチン”後の世界。
そもそもこのサノスの企みに対抗すべく結成されたスーパーヒーローチーム アベンジャーズの活躍を描く中で、その構成員たるヒーローたち個々の活躍を描いた、MCU系列の映画やドラマは数多く生まれているが、本作『ロキ』は、若干他のシリーズとは趣が異なる。
なぜならば、主人公となるアスガルドの悪神ロキはサノスとの闘いの最中で命を落としてしまうし、そもそも彼はヒーローではなく、どちらかと言うとヴィラン側に属するからだ。
サノスにまんまと指パッチンされてしまった(地球の人口も半分にされた)アベンジャーズは5年後、同じタイムラインで行き来する方法を見出し、サノスより先に(指パッチンに魔力を持たせる神秘の石である)インフィニティストーンをゲットしてしまおうと試みる。
そこでたまたま元々の時間軸=タイムラインでの行動と違う行為をした(過去の)ロキは、新たなタイムラインを作り出してしまうのだが、そんな異なるタイムラインの発生を阻止する謎の組織TVAによって拉致される。
TVAが管理する世界に連れてこられたロキは、強大な力を持つTVAの支配を拒み、抵抗を開始する、というのが、この『ロキ』というドラマシリーズのあらすじだ。
悪役によるヒーローストーリーの良さ?
本作におけるロキは、強大な力を持つTVAによって多少去勢されてはいるものの、軽口と嘘で相手を煙に巻く裏切り王子の本領を存分に発揮している。
四角四面の真面目ヒーロー達の深刻なドラマ展開もいいが、不真面目で適当なことばかりしゃべくりまくるヴィランをヒーローに据えることで、“正々堂々”の勝ち方を求められる息苦しさを超え、どんな手を使ってでも勝ちにいくハードボイルド的な腹黒さと勝負強さを表現できるわけだ。
最近は、ハーレイ・クイン、デッドプール、ヴェノムなど、ヴィランを主役に据えたアクションエンターテインメントが多く公開されているが、閉塞感漂う昨今の世相を反映した流行なのだろうか。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。