金髪と美貌の女性起業家エリザベス・ホームズが立ち上げた医療ベンチャー セラノス。その栄光と没落を描いた、実話ベースの物語。
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The story of Elizabeth Holmes and Theranos.
disneyplus.com若き女性起業家の挑戦と失墜
日本ではあまり知られていないようだが、本作は 指先からの一滴の血液から、あらゆる病の根源を発見できると謳ってユニコーン(評価額が10億ドルを超える、未上場のベンチャー企業のこと。)となった医療サービス開発ベンチャー セラノスが、その技術に全く信憑性がないことを長期間隠蔽し続けたとして、シリコンバレー史上最大の詐欺事件にまで発展した模様を描いた、実話ベースの作品だ。セラノス創業者のエリザベス・ホームズがその美貌と明晰な頭脳、そして何がなんでも成功するという情熱をもって会社を立ち上げ 全米有数の成功者へと上り詰めていく様と、そのあとの急激な転落劇はまさしくハリウッド的であり、とても実際にあったこととは思えないほどスリリングだ。
画期的な技術でユニコーン入りしたセラノスと、創業者兼CEOのエリザベス・ホームズ
セラノスは、スタンフォード大の学生だったエリザベスが在学中に立ち上げたベンチャーであり、エリザベスは業務に集中するため大学を中退している。
彼女は、注射器を使って 血液を採取するのではなく、指先から得たほんの一滴の血液からDNAを解析するというアイデアをもとに多くの資金を集めることに成功する。もともとアップル創業者のスティーブ・ジョブズへの強い憧れを抱いていたエリザベスにとって、起業して大学を中退するということは成功者になる一つの条件だったのかもしれない。
若く美しい女性の起業家が、多くの人命を救うことになるかもしれない技術を生み出すというストーリーは、多くの投資家の心を掴み、セラノスは急成長を成し遂げる。
しかし、その夢のような技術には科学的な裏付けが乏しく、結果としてセラノスは開発半ばにして 成果を得られぬままにサービスの実用化に動いてしまい、多くの被験者に虚偽の医療情報を提供してしまうことで詐欺に問われることとなる。
創業者でありCEOでもあったエリザベスはその責任を問われ、多くの裁判の被告の立場に追いやられてしまう。2022年4月現在、エリザベスは最大20年の禁錮刑に処せられる可能性があるという。
エリザベスの詐欺行為を助長した男の影
セラノスのCOOとして数年間辣腕を振るった、サニー・バルワニはエリザベスの 歳の離れた恋人でありビジネスパートナーだったが、恋愛関係については 取締役会はおろか社内にも緊密な間柄であることは秘密であったという。エリザベスはすべての問題の責任をこのサニーになすりつけ、自身は罪を逃れようとしているらしいが、前述のようにそれはうまくいかないだろうと思われる。
本作では、このサニーがセラノスに関与することによってエリザベスの“なにがなんでも成功したい”という想いが、“どんな手を使ってでも成功する”というように変質し、悪事を悪事でないように思い込んでいくかのような演出をしている。
女が悪いことをする裏には男の影がある、とでも言いたいのだろうか。サニーがCOOとしてセラノスに関与して以来、エリザベスはジョブズさながらに黒のタートルネックを着込むようになり、その言動、仕草までもサニーの演出に従っていく、という感じだ。
(エリザベスは、夏でもこのタートルネックを着るために社内の温度を18度に設定させていたというが本当だろうか?本作中には、エリザベスのジョブズへの憧れは描かれるものの、彼女のファッションスタイルがその影響であるとは語られておらず、あくまでサニーの指示であるとされているだけだ)
サニーは腕のいい投資家であり、エリザベスと出会う以前に巨額の財産を築いていた。その彼が、犯罪行為と知りつつセラノスの虚偽行為を助長していく様子は少し解せないが、はるか年下の恋人をプロデュースすることの快感に酔いしれてしまっていたためなのかもしれない。
エリザベスを演じるのはアマンダ・サイフリッド
ヒロインのエリザベスを演じるのは、その可憐な美貌で人気の高いアマンダ・サイフリッド。
説得力のあるトークとその美しさで相手を魅了してしまったエリザベス・ホームズを再現できていると思うが、喋りながら 落ち着きなくノッディング(小刻みなうなづき)が目立つのはとても気になった。実物のエリザベスをホームズがそういう動きをしているのか確かめてみたが、少なくとも僕が見た動画では多少はそういう癖はあるものの 基本的にはそれほど小刻みに常に動かしているわけではなかったので、ちょっと大袈裟な演技ということになるのかもしれない。
あとは、アマンダが米国人としては小柄すぎて、周りの人たちより頭一つ小さいのが気になった。顔立ちまでは真似る必要はないが、姿・佇まいは似た感じに寄せた方が良かったのではないか、と思うのだが。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。