なぜGoogleやAppleといった大企業のオフィスがあれほど洗練されているのか。それは、人材を活かし、快適に仕事のできる空間を作ること、そして、いろいろな人種や考え方の人がフェイストゥフェイスでコミュニケーションの取れる場所を構築することを考えているからに他ならない。では日本の企業ではどうか? 今回は現代社会でのオフィスのあり方と、いま注目のオフィス家具を紹介する。

良い家具を選ぶということ

世界的企業では当たり前のように行われているコミュニケーションや社員のモチベーションを考えたオフィス作り。これをしている日本企業はまだまだ少ないのが現状だ。そんな状況に30年以上前から取り組んでいるのが、上質な空間・オフィス作りを提唱するインターオフィス。まずは同社の現代表・寺田尚樹氏に、家具選びで重要な点について話を聞いた。

寺田尚樹
株式会社インターオフィスの代表取締役社長 兼 COO。一級建築士であり、2003年にはテラダデザイン一級建築士事務所を設立。建築、インテリア、家具や小物のプロダクトを手がける。武蔵野美術大学の非常勤講師でもあり、人材の育成にも勤めている。グッドデザイン賞審査委員。

「オフィス家具や自宅の家具を選ぶ前に知っていただきたいことに、その家具の歴史や製作の経緯があります。名作家具や名作椅子と呼ばれるものは、ほぼ特定の空間のためにデザインされたものです。例えばホテルのロビーの椅子だったりオーナーの夫人が座るための椅子、ベッドルームの横に本を置くためだけの椅子といったように、そこには必ず意味がある。それがいまプロダクトとなって家具単体として売られているわけです」
ただ、そうした家具にはリプロダクションやジェネリック家具と呼ばれるコピー家具がある。消費者からすれば一見して同じモノであり、その性能に違いはないように見える。では、一体なにが違うのか?

「違うのは素材や製作工程。上質な家具は、使う人のことを考えて素材を選び手間暇かけて作られています。なので自ずと価格も高くなります。たとえば見た目まったく同じレザーの商品があったとして、素材のクオリティや縫製が異なれば、長く使うほどにその差は出てきますよね」
安価なものはそもそも長く使うことができない。たとえ使えても、そこには必ず荒が出てきてしまう。逆に上質な家具は、大事にすれば一生使える。そしてその分味も出てきて愛着も湧く。この「愛着」こそが上質な家具の根幹だと寺田氏は言う。

「例えば100円のものを毎年買い換えて10年使うことと、1000円のものを10年使うのは、同じように見えても決定的に違うことがあります。それが『愛着』です。たとえ同じコストであっても、上質な家具には愛着というバリューが付くんですよ」

画像: インターオフィスのショールームには多彩なブランド家具が並ぶ。見学は要予約(撮影:益永研司)

インターオフィスのショールームには多彩なブランド家具が並ぶ。見学は要予約(撮影:益永研司)

家具による企業への影響

インターオフィスを利用する企業は、大企業からベンチャーまでさまざま。しかし利用する企業の経営者には共通することがある。それは、いい家具により得られる「その先」を意識していること。「空間や家具というのは、洋服の延長みたいなものです。ネクタイを締めれば気持ちも引き締まり、明るい服を着れば明るい気持ちになる。どういう服を着るのかで気分って変わりますよね。それは空間も同じ。会社として心地よい空間であること、社員全体が気持ちよく働けること。それは気持ちだけでなく、生産性や効率、出勤率や離職率などに影響していきます」

一人欠勤すれば労働時間による生産数が変わる。一人辞めれば、新しい人を雇うコスト、その間の効率が低下する。オフィス環境が及ぼす会社への影響はかなり大きい。

また、会社としてのカラーを出していく…という意味でも有効だと寺田さんは言う。
「とくにベンチャー企業などは、自分と同じ感覚や価値観を持っている人を集めて、大きなことを成し遂げようとします。そのため、オーナーは自分の会社のカラーを出し、それに共感した人を集めたい。会社の理念をその家具が持つ歴史に重ねてみたり、今後の事業展開を考えて家具の構成を考えたりと、ビジネスだけでなくオフィス作りまでトータルで意識して会社を創る方が多いです」

大企業は株主や取引先からの目、会社のクオリティや姿勢を示すために家具を選ぶ。もちろんいい人材確保の意味も大きい。その意味では、公共施設もそう。少子化で学生が少ない時代、優秀な学生を集めるために、学校空間のクオリティをあげる。家具を意識することは、ビジネスを成功に導くために必要なことであり、そこで働く人、会社の姿勢すべてに影響することなのだ。

各企業はどんなオフィスを作っているのか?

では実際に、各企業や施設はどういった想いを持って家具を導入しているのか。ここではこれまでインターオフィスが手がけた空間をご紹介。働くのであれば誰もがこんなところで……と思える空間になっているのが見て取れるはず。

安全自動車株式会社 名古屋支店

創立100年を超える自動車整備部品の製造・販売企業。受付カウンターに施された芝生のロゴサインや、車のイラスト(ダッジ:アメリカの自動車ブランド。1983年まで安全自動車が輸入代理店を務めていた)を用いた衝突防止サイン、使い込むにつれ味わいの出る無垢材を用いたフリースペースのテーブルなど、所々に適度な遊び心を取り入れることで、親しみや愛着の持てるデザインを目指している。長い歴史の延長線上にありつつも、ここで働く人や訪れる人たちに、ささやかだけど新しい変化を与えること。それらの集積が企業の未来を形作る、という思いを込めてオフィスを構築している。(撮影:長谷川健太)

梅光学院大学

山口県下関市に位置する大学。大学改革の一環として計画された新校舎は、体験や経験を重視した新しい教育ができる場所としてつくられた。そこには職員と教員が協働して学生を育てるという大学の理念を反映。各教員の個性が表出する仕掛けを家具で実現したり、さまざまな個性を持つ学生たちのために365種類のイスを用意し、毎日違うイスに座って楽しめるという付加価値をつけたり。また、同校が積極的に進める海外留学にもその思いは込められており、自分たちが日本の校舎で日々使っている家具と留学先で出会う……そんなドラマを思い描き、輸入家具を扱うインターオフィスに依頼したという。建築・家具によってもたらされる新しい学習・教育環境は、学生生活をより豊かに楽しくしてくれるはずだ。(撮影:長谷川健太)

大晃機械工業株式会社

大晃機械工業は、流体機器の設計・製作・販売を行う企業。蓄積してきた技術力を各種産業分野へと応用・発展させる各プロジェクトでは、部署間のコミュニケーションが最重要課題。それを実現させるために、ソファ・スタンディング・カフェなど、色々なシーンにコラボレーションエリアを点在させた。これにより、いつでもどこでもミーティングが可能に。また、モノトーンのオフィスに、木製家具とカラーをポイントで配置することで、クールな中にも親しみやすい空間をつくりだし、コミュニケーションツールとして「カウンター兼最低限の収納」を導入。ペーパーレスを推進する中、収納庫の少なさによるストレスも緩和している。(撮影:宮本剛写真事務所)

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