2019年10月に交通事故を起こしたスペンスの復帰戦
現在のウェルター級戦線では、WBO王者のクロフォード、WBAスーパー王者のパッキャオ、そしてIBF・WBC王者のスペンスが三強とされており、1990年3月3日生まれのスペンスが最も若い。知名度ではパッキャオには劣るが既に40歳を超えるパッキャオに比べれば、スペンスの方がボクサーとしての賞味期限は長く、さらにこれまで無敗の戦績(26戦26勝21KO無敗)を支えた天才ぶりの評価も高い。
(ニックネームであるTHE TRUTH=本物 はそのナチュラルな才能への賞賛といえる)
スペンスは2019年10月に飲酒運転による交通事故で重傷を負って以来の復帰戦となるが、同年9月に勝利を収めたタイトルマッチの相手であったショーン・ポーターに敗れてタイトルを失ったのが本日の試合相手であるダニー・ガルシアだ。
左フックに破格の威力を持つダニー・ガルシア
ガルシアは1988年3月20日生まれ。サウスポーのスペンスに対して、右構えのオーソドックス。戦績は38戦36勝21KO2敗。
2敗は、パッキャオに敗れたキース・サーマンとスペンスに敗れたショーン・ポーターであり、ともに判定ながら、前述の“三強”に退けられた選手に負けたということで、ダニー・ガルシアはスペンスに勝てないだろうという見方が強いが、ガルシアのパワフルな左右のフック、特に左フックは一発必倒の威力を持っており、絶対的不利というところまでは差がないと思われる。ニックネームはSWIFT(素早い)だが、スピードよりパワーの選手と言えるだろう。
ただし体格差で言うとスペンスが177/183cm(身長/リーチ)、ガルシアが173/174cm(同)と、スペンス優位。
試合速報
テキサスのAT&Tスタジアムで観客を入れたうえでのPPV試合。
体重差を考慮せず全階級を通しての強さを比較する、いわゆるパウンド フォー パウンド(P4P)の上位の常連であるエロール・スペンスはピンク x ブルーのグローブ。その表情には余裕を感じさせる。
ガルシアはワインレッド x レッドのグローブ。表情にも動きにもやや硬さが見られるか。
試合展開
その2人の様子そのままに、試合開始直後から、スペンスが柔らかくも素早い動きで攻勢を見せ、ガルシアがそれを受けて反応するという展開となる。プレッシャーをかけているのはスペンス、ただガルシアはカウンターパンチャーなので 一方的に攻められているということでもなく、あるいは待ってましたと言いたいほどの展開なのかもしれない。
とはいえ、ポイントをつければ攻勢点を踏まえて序盤はスペンスがとったと言えそうだ。
第4ラウンドに入って、リングを丸く使いはじめたガルシアがやや挽回するが、スペンスの攻勢自体は変わらず止まらない。右ジャブを基点にリズミカルなコンビネーションを放ち続けるスペンスに対して、ガルシアは強打を振るって対抗するが、距離が非常に近いがゆえにそのパワーを生かしきれていないようだ。スペンスもガルシアのパワーに敬意を表してか常にガードを高く保ち、顔面に強打が入らないように気をつけている。そのため互いに強いパンチを当てられずにおり、結果としてスペンスの軽くて速いパンチが目立つ展開になっている。
スペンスの動きが止まればガルシアのパワーがモノを言うが、その機会がなかなかこない、そんな状態が続き、そのまま最終ラウンドのゴングを聞くことになった。
試合結果
こうして2人の激闘は、12ラウンド3-0判定で、エロール・スペンス Jr.の勝利 となった。
ダニー・ガルシアは善戦したものの、今後大きなチャンスを得ることは難しくなったかもしれない。反対に、スペンスは うまくクロフォード戦に漕ぎ着けるための最低ラインはクリアしたといえるだろう。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。