ボクシング中量級の激戦区ライト級(130 - 135ポンド≒ 58.967 - 61.235kg)。スーパー・フェザー、ライト、スーパー・ライト級の三階級を制覇したジャーボンテイ・デービスは、この歴史あるライト級の4団体統一を目指すことにしたようだが、その野望を阻もうと立ち上がった強打のホープ ローランド・ロメロを6ラウンドTKOで退けたこの試合は何度でも観たいスリリングなゲームになった。
(試合開催 米国時間 2022年5月28日)

群雄割拠のライト級戦線の主役は?

ウクライナ紛争勃発後 無類のテクニシャン ロマチェンコが、リングでの闘いではなく戦場での祖国防衛を選んだことによって、群雄割拠のテイを示してきたライト級ボクシング。

いまや、ロマチェンコを破り主要4団体(WBA WBC WBO IBF)統一チャンプとなったロペス、そのロペスからベルトを奪ったオーストラリアのカンボソス、デビン・ヘイニー、ライアン・ガルシアなどの、スーパースター候補達がひしめき合っている。その中でも、そのパワフルなパンチ力と野性味あふれる風貌で人気を博しているのが、ジャーボンテイ・デービス。
ボクシングの歴史にその名を刻んだメイウェザーJr.のイチオシボクサーとしても知られている彼は、ライト級としては小柄(166cm)でありながら凄まじい猛打と意外なほどに高度なディフェンス力によって、ライト級を挟む三階級の王座を獲得した実力者だ。

小柄なデービスはキレのあるフックやアッパーを多用するが、ジャブ起点のワンツーなどの基本的な攻撃もうまい。タイソンばりに一気に間を詰めて攻撃する脚の速さも素晴らしく、タトゥーだらけのワイルドな見た目からは荒っぽさばかりが目立つが、実のところ恐ろしく緻密なテクニシャンでもある。

その彼の王座を狙ったロメロは、デービスより一つ若い強打者。170cmと、デービスよりは背が高く、ライト級としては平均的な体格だ。
ジャブを突きながら右の強打を振るうオーソドックスなスタイルだが、ひとたび当たるや猛烈なパンチ力に任せて暴風のように攻めまくる。デービスに比べるとかなり粗が目立つが、これまでその強打にモノを言わせ、全勝かつ80%を遥かに超えるKO率を誇っている。

試合展開

ともに高いKO率を誇る倒し屋対決、かつデービスもロメロも不良ぽさで名を馳せるだけに、KO決着は必至と思われたこの試合、確かに劇的な結末をもって唐突に終了した。

序盤は、スロースターターのデービスを、ロメロのしつこいジャブが攻め立てる展開で、ロメロがポイント奪取を続けていたが、徐々にペースを上げたデービスの右カウンターがロメロを捉え始める。
これに焦ったのかもしれないが、第6ラウンド、強打の直撃を狙って不用意に突っ込んだロメロの顔面をデービスの左フックがカウンターとなって強かにたたく。そのまま前のめりにロープに倒れ込んだロメロは、ほぼ完全に意識を飛ばされ、かろうじて立ったもののそのままレフェリーストップとなった。

強打、というよりは切れ味豊かなデービスの一撃は、ヒットした後で 倒れ込んでくるロメロの体を鮮やかに交わしながら体勢を入れ替えた動きと相まって、居合斬りのような鋭さを感じさせ、世間をざわつかせた。

「俺は格上」と繰り返していたデービス

試合前の記者会見で、デービスは「ロメロはボクシングを覚えたての初心者みたいなもの。俺とは格が違う」と繰り返していたが、実際 それは正しかったように思う。
ロメロは基本通りのジャブと右ストレートを多用していたが、やはり強打頼みの様子が見てとれたし、反面デービスは多様な動きを見せ早い段階でロメロの未熟さを見切っていた。序盤こそロメロはポイントを稼げていたかもしれないが、そのまま判定にもつれてもデービスが逆転していたであろうし、強いパンチを当てるチャンスは何度でも訪れただろう。試合前までは威勢が良かったロメロも左フックを食らったのちは別人のように静かになってしまったが、ラッキーパンチをもらったというより、強打を浴びるべくして浴びたという自覚があったはずだ。

もちろんロメロも弱くはなかったし、パンチ力は本物と思われるからいずれは何某かのタイトルを得られるだろうが、いまのところデービスの方が数段上であったことは間違いない。

デービスの次の相手は?

この試合の結果、デービスは27戦27勝25KOとなった。
初めて負けたロメロは15戦14勝12KO1敗。

ロマチェンコが引退前に復帰するかどうかはわからないが、戦う相手をそれほど選ばないようにみえるデービスの次の相手が気になるところだ。

画像: WBA世界ライト級タイトルマッチ、ジャーボンテイ・デービスVSローランド・ロメロ。無敗同士の激突はデービスの衝撃的勝利に!

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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