完全決着とはならなかったが、カネロの判定勝ち。
スーパー・ミドル級(168ポンド≒76.2キロ)で行われた因縁の戦い
ミドル級最強の呼び声高い(2022年時点でもう40歳なのだが)ゲンナディー・ゴロフキン。3つの位にシャルがすべて Gであることからトリプル G(GGG)のニックネームを持つ。
かたやサウル・アルバレスは、メキシコ人には珍しい赤毛の髪を持つことからシナモンを意味するカネロと呼ばれる。
2人の闘いは、これが3回目。第1戦は引き分け、第2戦は僅差の判定でカネロの勝ちだが、それを不服とする声もあり、決着をつける意味で今回の第3戦となった。
試合前ではカネロのKO勝ちを予想する声が多かったのだが、それはカネロが直前のライトヘビー級でのビボル戦に敗北したものの、スーパー・ミドル統一を含むここ2、3年での華々しい活躍が評価されてのことだろうし、第1戦こそGGGのパワーに圧倒されたものの、今ではGGGを超える体格の相手との戦いも制して証明された
カネロの体幹の強さが、いまさらゴロフキンに遅れをとるとは思われないのだろう。それに、今回の試合は(冒頭で述べたように)カネロの現在の主戦場であるスーパー・ミドル級で行われる。
普段1階級下のミドル級で戦うゴロフキンにして、(40歳超えるとさらに辛いだろう)減量が少し楽になるかもしれないにしても、未知の階級に簡単にアジャストしてこられるかどうか分からないとも言えた。
好ファイト必至の二大スター
ゴロフキンの強さは、その鋭いジャブにある。彼のパンチは(左右問わず)石のように硬いと言われるが、速く鋭いジャブと、右ストレートを混ぜたワンツーによって相手を(痛がらせて)下がらせ、ロープに詰めたら連打を浴びせる。一発一発が強く硬い上に連打も速く当て感もあるから相手はなすすべなく崩れ落ちる。それがゴロフキンの戦い方だ。
さらにいうと彼は体が柔らかいのか、パンチを喰らってもあまり効いた感じがしないし、その結果すごくタフだ。だから、相手はパンチを当てても倒れない、ゴロフキンからの攻撃にこうすること叶わずに、押し込まれてしまうことになる。万一負けても自身のミドル級タイトルは守れるし、勝てば雪辱を果たせるだけでなく二階級制覇の栄誉に加えて数少ない4団体統一チャンプの1人となれるわけだから、ゴロフキンとしてはいつものスタイルを守りつつ闘うことになるだろう。
かたやカネロもまた、ゴロフキン同様に攻撃的なファイターだ。それに加えて防御は固くボディも筋肉の鎧を纏っている。顔面への強打はスリッピングアウェイで避ける器用さもある。
フットワークはそれほど速くないが、重いパンチを連打するハンドスピードはなかなかのものだ。(だから 彼に土をつけたメイウェザーやビボルのような、速いアウトボクサーは多少苦手かもしれない)
結果として、2人のファイトスタイルはとても噛み合う。誰もが好ファイトを期待するのは、2人がそれぞれの階級を代表するスターであるからだけではない。
4回目の戦いにつながるような?、カネロ・アルバレスの判定勝ち
試合は、期待通りの打撃戦。
互いにほぼハードヒットはないが、なかなかの打ち合いとなった。
勝負は何度も言うように判定。
前半はアルバレス、後半はGGGという展開。
(ゴロフキンはこの階級の方が向いているのじゃなかろうか。村田諒太戦のような疲労感もあまり見えず、実際後半はカネロの方が明らかに疲れていた)
あまり山場はなく試合終了し、最終的にカネロの判定勝ち。4本のベルトを守ったカネロだったが、これだったら第2戦でやめといても同じだった、というのが正直な感想。
第2戦においてゴロフキンの勝ちを主張する→勝ちを盗まれた!と主張する者もいたらしいが、僕はゴロフキンの圧力に屈せずどころか跳ね返したカネロが勝っていたと思っていた(第1戦はカネロはGGGのパワーに対抗できずロープに詰められるシーンが多く、判定ではドローだったものの僕は明らかにGGGの勝ちと思った)。
まあ、ボクシング界を考えたら、カネロは数少ないスーパースターだし、引退間近と思われるが それでもゴロフキンはまだまだスターだ。ここで2人を潰してしまうのは得策ではないから、もう一回やってもいいかもと思わせるくらいの方がいいと言えるのかもしれない。
カネロには、ビボルへのリベンジやベテルビエフとの無敵決戦のようなストーリー性のあるビッグファイトがたくさんあるし、まだまだマッチメイクにかける時間があるのだ(つまりまだ若い→1990年7月18日生まれ)。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。