日本独自に変化したキセル文化
パイプに非常によく似た喫煙具がキセル(煙管)だ。時代劇や歌舞伎などで目にすることも多く、灰皿や火鉢にカンッと灰を捨てる姿(実際にやるとキセルは壊れるので注意!)に憧れた人もいるのではないだろうか。
キセルは決して古の嗜好品ではなく、現代でもしっかりとその文化は残っている。絶対数は少ないもののパイプやシガーと比べてより手軽に喫えること、少量の葉で喫煙可能なことから、意外にも若い人に愛好家が多いとか。
ここからは、日本独自の文化として発展したキセルについて紹介していく。
世界で一番細かいタバコの葉
もともとは大陸から伝来してきたキセル。当時はいまよりもキセル先端の火皿が大きくタバコの葉ももっと大きくざっくりしていたが、日本の裁断技術が優れていたことから、より細かく刻まれ少量で楽しめるようになっていった。
「火皿が大きく葉が細かいと、それだけ燃焼も早くなってしまう。そのため、葉に合わせて火皿もより小さくなっていったわけです。その分喫煙時間はとても短く、4、5服で終わります。パイプやシガーと違い長く楽しむのではなく、手軽にタバコの味を楽しめるのがキセルというわけです」
刻みが細かい分、燃焼温度は高くなるため、パイプのように木だと燃えてしまう。そのためキセルの火皿には金属が使われる。
「キセルはすべて金属の“延煙管(のべぎせる)”、吸い口と火皿部分が金属で、中間に羅宇(らう)と呼ばれる竹を使った羅宇煙管(らうぎせる)の2種類があります。竹が熱や水分を取ってくれるため、はじめての人は羅宇煙管が扱いやすいかもしれません」
キセルの愉しみ方
火皿にタバコを詰めて火をつけて喫う。基本的な流れはパイプと同じ。火皿が小さい分、柔らかく硬くといった詰め方は必要なく、ひとつまみ詰めて火をつければOKだ。
手軽に楽しめるため、道具もとてもシンプル。基本的にはキセル本体とタバコ、マッチやライター、灰皿があればいい。
余談だが、キセル用の刻みタバコ「小粋」に使われる葉は、日本の在来種で、これを使ったタバコは小粋のみ。日本のタバコを愉しみたい方はぜひキセルを試してみてほしい。
こだわりの道具で上質な時間を
パイプやキセルには、シガレットのようにパッケージから出してすぐに喫える手軽さはない。喫うためには工程を踏まないといけないし、長く愉しむためには道具のメンテナンスも必要だ。しかし、そこには手間をかけてでも感じたい至福の瞬間がある。
「パイプを喫い続けていくと、タバコが炭化しカーボンと呼ばれるものがパイプ内に堆積していきます。これは熱や水分を取ってくれるため、カーボンがあるほうが新品時よりもタバコが美味しくなると言われています。このように、お気に入りの1本を育てる愉しみというのもあるんですね。また、パイプ形状によって喫味も変わりますし、タバコの銘柄だけで数十種類と多彩です。愛用の道具でさまざまな“愉しみ方”ができる世界なんですよ」と山川さん。
こだわりの道具たちで作り上げる自分のためだけの特別な時間。それは何物にも代えがたいもの。本記事を読んでパイプ&キセルが気になったら、ぜひ銀座・菊水へ行ってみてほしい。そこには、あなたを夢中にさせる世界が、きっと広がっているだろう。
所在地 | 東京都中央区銀座6-9-6 |
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TEL | 03-3571-0010 |
営業時間 | 10:00〜19:50(日曜・祝日11:00〜19:50) |
定休日 | なし(年末年始のみ休み) |
公式サイト | https://www.ginza-kikusui.com/ |