欲求を満たし、心を刺激し、人生を愉しむために求められる数々の嗜好品。今回ご紹介するのは「パイプ&キセル」。創業から116年に渡り銀座に店を構える喫煙具の名店・銀座菊水の山川岳人氏にパイプとキセルの愉しみ方について話を聞いた。
画像1: 銀座の名店・菊水に聞く 大人の嗜好品「パイプ・キセル」

【案内人】
銀座・菊水の山川岳人氏。今回は奥深いパイプ&キセルの入り口をわかりやすく解説していただいた。「商品でわからないことがあれば気軽に声をかけてくださいね」

パイプはもっとも効率的な喫煙方法

葉の種類、パイプの形状、葉の詰め方、パイプに蓄積したカーボンの厚み、呼吸の強さ……複数の要素が絶妙に絡み合い味が変化するパイプは、シガレット(紙巻タバコ)や、嗜好の世界Vol.1で紹介したシガー(葉巻)とはまったく異なる喫煙具である。

シガレットやシガーの場合、燃焼するほどに火元が自分に近づいてくる。熱い煙は刺激が強いため、短くなるほどに辛味やエグミを感じやすく、最後まで喫わずに捨てることがほとんど。

反面、パイプは火元と吸い口が離れており、煙もその間に冷やされてから口に入ってくるため、味わいやすく、最後まで美味しく吸いきることができる。つまり、もっとも効率的で理にかなった喫煙方法といえるのだ。

画像: 菊水店舗のショーケースにはさまざまな形状のパイプが並ぶ

菊水店舗のショーケースにはさまざまな形状のパイプが並ぶ

灌木の根から削り出して生まれる

パイプと一口にいってもその形はさまざま。ビリアードやアップル、ブルドック、ベント、ダブリン、チェリーウッド……など、10種類以上の形状があり、それによってスタイルも味も大きく変わってくる。価格は1万円から百万円以上するものまで多様。

とはいえこのパイプ、元を辿れば同じ材料からできている。それはブライヤーと呼ばれるツツジ科の灌木の根で、堅い・軽い・火に強い・磨くと光沢が出るという性質を持っているものだ。

なぜ同じ材料から作られているのにこれほど価格に大きな差がでるのか?
「ブライヤーは自然のものですから、削り出したときに穴や傷、色ムラがどうしても出てしまいます。ところが稀に、まったく傷のない木目の美しいものが取れることがある。それが高級パイプになるんです」

安価なパイプは、塗装や加工により傷などを目立たなくしているが(喫味に影響はない)、それらは経年変化するほどに目立ち始める。逆に高級品はもともと傷がないため、長く愛用するほどに美しい経年変化を見せてくれる。また、素材の良さを生かして職人が作り上げる一本は、ただの喫煙具ではなく、工芸品としての価値もあり、それが価格差として現れているわけだ。

画像: 左上がブライヤーの根っこ。これをブロックにして削り出していき1本のパイプが完成する

左上がブライヤーの根っこ。これをブロックにして削り出していき1本のパイプが完成する

パイプの愉しみ方

パイプをくゆらす姿は映画などで見たことはあっても、その喫い方までは知らない人がほとんど。ここでは、その愉しみ方を紹介しよう。

葉を詰める

まずタバコの葉をつまんだら、指先で塊にしてパイプに詰める。これを何度か繰り返すのだが、最初は柔らか目に、次は少し固め、最後は固めをイメージして詰めるといい。詰め終わったら、指の腹で葉を抑えつつ、一度パイプを吸い込み、吸い付き具合を確認する。

このとき吸い付きが軽いようなら、さらに葉を詰める。反対に空気が通らないときは詰め過ぎているため、一度葉を取り出しやり直そう。

画像: 空気の通りを確認すべく、火をつける前に一度スッと吸ってみる

空気の通りを確認すべく、火をつける前に一度スッと吸ってみる

火をつける

葉の硬さ、空気の通りがよければ、いよいよ火をつける。このとき、マッチやオイルライターだと、リンやオイルの匂いが葉に移って雑味になってしまうため、着火はガスライターが基本。とはいえ、シガーに使うような青い炎のジェットライターやターボライターは火力が高過ぎてパイプが燃えてしまうので、パイプ専用品を使うようにしよう。

軽く吸いながら表面全体に火が通るようにつける。2、3服するとタバコが燃えて盛り上がってくるためタンパーと呼ばれる器具で押さえて平らにする。これを1セットとして、3、4回繰り返す。

パイプは意識せずに「くゆらす」

火種が安定したら喫煙開始だが、シガレットやシガーと違い、パイプは「喫う」ことを意識する必要はない。口に咥えっぱなしでゆっくり呼吸してあげるだけでいい。タバコの煙は喉の奥には入ってこず、実際には9割が自然な呼吸で、タバコの煙は自然に入ってくる分だけを愉しむのだ。

画像: スーハーとパイプを咥えながら普段通り呼吸していればよい

スーハーとパイプを咥えながら普段通り呼吸していればよい

このとき、パイプから口を離せば空気の流れがなくなり、1分と経たずに火は消える。喫いたくなったらまた火をつければいい。

「食後にちょっと喫って、作業してからまた喫って……と好きなときに喫えるのがパイプです。実際に喫い始めるまでに手間はかかりますが、その分タバコ本来の味を長く楽しめます」

喫い終わったら、逆さまにすればコロンと火種が落ちる。間違った喫い方をしていると、葉っぱは湿っており、いぶされた水分が溜まってジュースと呼ばれる汁が出てくるという。
「一気に喫ったり、火が強過ぎたりするとそうなります。パイプを愉しむコツは、時間をかけてゆっくり喫うことです」

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