連載コラム「生田晴香、恐竜と生きる」。福井恐竜博物館 公認恐竜博士、古生物学会友の会・恐竜倶楽部メンバーでもある自他共に認める恐竜ラバーのタレント生田晴香が、恐竜の素晴らしさを隅から隅まで語り尽くす。壮大な歴史とドラマ、未解明の不思議が交差する魅惑の恐竜ワールドへ、ようこそ。- dino.network編集部
発見された3体のデイノケイルスから謎を紐解く
![画像: 発見された3体のデイノケイルスから謎を紐解く](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/df70b536d5a6c15f691debaac569eee5487e0f07_xlarge.jpg)
学名、デイノケイルス・ミリフィクス(Deinocheirus mirificus)。生息地、モンゴル。子どもの化石が見つかり、大人の化石も見つかり盗掘された化石も無事に取り戻す事ができ、これまでに計3体のデイノケイルスが発見されたという事になったわけなのですが、これらの化石からデイノケイルスはすごく変わっている恐竜だという事がわかったんです!
まず、2009年に盗掘された状態で発見され無事に取り返す事ができたデイノケイルスは、1965年に発見さたデイノケイルス(その種を命名する基準となるホロタイプ標本)より6パーセント大きい事がわかりました。最初に前あしだけ発見されたデイノケイルスは亜成体だったのです。
胃の内容物と長すぎる前あしの実態とは・・・?
![画像: 胃石](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/863945f3f3f8bc3e528dcf9f1b33f6195fa0f50c_xlarge.jpg)
胃石
どのデイノケイルスにも歯は見つかっていませんが、胃石はなんと1,100個以上も発見されているんです。と言うことは、頭骨の口の辺りを見ればわかるのですが、歯は見つかっていないのではなく元々歯がない恐竜なのです。
ちなみに胃石とは、胃の中に飲み込まれた石のことです。飲み込んだ植物をすりつぶす為に、自ら飲み込むのです。
![画像: 頭骨](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/7c13690bcfe83ce86c3537a7856794e2c861943f_xlarge.jpg)
頭骨
口先はマイアサウラのようなカモノハシ竜みたいにクチバシタイプです。かわいらしいですね。
胃石があるというと植物食恐竜だと思われがちですが、お腹の辺りからは魚の骨も見つかっていて、しかもそれは胃酸による腐食の跡がありました。植物だけではなく魚を食べていたこともわかります。とどのつまり雑食系の恐竜と言うことになりますね。水辺に生息していたのでしょう。
また、1番気になる長い前足は何に使っていたかと言うと、食事をする為に植物などを掻き集めていたのではないかと考えられています。デイノケイルスがいる時代と場所にはアジアのティラノサウルスとも呼ばれる肉食恐竜「タルボサウルス」が生息していたことにより、食事をする為だけでなく外敵から身を守るために前足を使っていたのかもしれません。
実は、デイノケイルスの腹肋骨にはタルボサウルスだと思われる大型肉食恐竜の噛み跡が残されていました。噛み跡が治ってきている痕跡がないことから、デイノケイルスが死んだ後につけられた可能性が高いとみられます。(一応、当たり前なのですが私たち人間と同じく動物なので怪我や病気にもなれば回復もします)
![画像: タルボサウルス](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/a89cb6538e5fa1be4fd563c08ee6aae80f91da2b_xlarge.jpg)
タルボサウルス
2019年夏国立科学博物館で開催されていた「恐竜博2019」では、まるでデイノケイルスの前で待ち伏せしていたかのような伏せタルボサウルスが展示されていました。前あしが大きいので迫力がありますが、タルボサウルスに襲われていたでしょうに、実際に見てみたいものです。
大きいオルニトミモサウルス類
分類は、獣脚類、コエルロサウルス類、オルニトミモサウルス類に属します。オルニトミモサウルス類といえば、ダチョウ恐竜とも呼ばれている「オルニトミムス」など、全長5メートルにも満たず小柄で、足が速い特徴を持つ恐竜がほとんどです。
「ダイナソーDANCE」CD発売中
生田晴香らが作詞をしている恐竜の曲「ダイナソーDANCE」の歌詞でも「オルニトミムス圧倒的速さ」とあるように、オルニトミムスは足が速い恐竜の代表です。
ですが、デイノケイルスはオルニトミムスみたいに中足骨がアークトメタターサル構造※になっていません。足の速さより体を大きくするように進化していったことが考えられます。
※中足骨が両サイドの骨に潰されてないということ
足の末節骨を見てみると平らで先端が丸く、速く走るより安定した歩きをしていたということがわかります。1番大きいデイノケイルス(盗掘されたもの)は、全長11メートル、体重6.4tだと予想されていて大きいです。機敏に動くというよりかはゆったりしていたのではないかと思います。オルニトミモサウルス類なのに珍しいタイプです。
帆のような背ビレ
背骨にも特徴があります。スピノサウルスみたいに、背中の骨が伸びているのです。スピノサウルスの帆は比較的重いのですが、どうやらデイノケイルスは軽かったようです。
脊椎には多数の窪みがあり、首としっぽが長い竜脚類もそうなのですが、含気化、空洞化していて骨がスカスカしてて軽いんですね。
なぜ帆があるのかはもしかしたらオシャレの為かもしれません。オルニトミムスが羽毛恐竜なので、デイノケイルスももしかしたら羽毛があったかもしれませんね。
![画像: 帆のような背ビレ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/a4d27af6bea4cccd99c0e3a47c693f49cc395127_xlarge.jpg)
色はわかっていません。あまり派手な色だとタルボサウルスに狙われやすくなってしまうので、もしかしたら茶色とか地味な色かもしれませんが、NHKの番組で復元されていた時はピンクでした。オシャレ恐竜(推測)なので本当にピンクだった可能性もありますね。
![画像: デイノケイルスとタルボサウルス](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/11/19/1ca4c906d1d657ad8c798e3e295d6e715b38325a_xlarge.jpg)
デイノケイルスとタルボサウルス
そんなわけで、デイノケイルスはこんなにも色々わかってきているんですね。知れば知るほど好きになっちゃいますね!ではまた次回。
![画像3: 謎の恐竜の正体発覚 デイノケイルスは変わった恐竜だった・・・!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783497/rc/2019/12/02/8604e493b0ac20b4f03f30c940a27668ac9625a1.jpeg)
生田晴香 | Haruka Ikuta
恐竜タレント。TV、CMのほかモデルとして活躍中。福井恐竜博物館の公認恐竜博士で恐竜検定所持。恐竜トークショー、クイズ、鳴き声コンテスト審査員。古生物学会友の会&恐竜倶楽部メンバー。恐竜のうた「ダイナソーDANCE」監修。実は元あやまんJAPAN。
YouTubeちゃんねる「恐竜わっしょい!」始めました。